第9話 悪だくみの一端
思い出に浸っている間にどうやらついたらしい。まどかに引っ張られるようにして降りた正弘を先生は呆れたような顔で見た。
「何をそんなに真剣に考えていたんだ?」
「なんでもないです。」
「多分例の件のことだとは思うけど、お前は今を見つめて、前に進めばいいから。お前は今は平野陸じゃなくて坂田正弘なんだから。わかった?」
「はい。」
「わかったんだったらこの合宿を楽しみなさい。さて、じゃあ宿に行くよ。」
宿につくとそこの店主(?)がやってきた。
「今日は俺らの宿にやってきてくれてありがとうございます。ごゆっくりおくつろぎくだせえ。」
なんか、少し敬語がなっていないような気がしたが、触れないでおこう。それと、このおっちゃんなんか馴れ馴れしいな。そのおっちゃんは挨拶をすると、いきなり学年全員に握手をし始めた。何の意味があるんだ?これに。
・・・・ん?なんか既視感がする。気のせいかな。
「それでは説明をさせていただきます。私は当旅館の女将でございます。」
50代ぐらいの女性が出てきた。
「まず、今回の合宿は2泊3日でよろしいでしょうか?」
「はい。合っています。」
「それでは、夕ご飯ですが、これは、6:00〜7:00ということで伺っております。その後、7:00〜9:00までが入浴の時間で就寝時間は10:00となっております。また、朝ごはんは7:00〜で昼ごはんは12:00〜です。ご質問、ご要望などがあればいつでもお申し付けください。布団などはきちんと敷布団の上にカバーを掛けてください。これらは3日めの朝にロビーにあるかごへ入れてください。必要事項はこれぐらいですかね。それでは、よい思い出となりますようお祈りしています。」
「ありがとうございました。さて、それでは皆さん、今日は少し着くのが遅いので、夕ごはんを食べる時間まで自分たちの部屋にいといてください。それと、明日のことについてだが、朝の8:00ぐらいにはロビーで整列しておくこと。もちろん、水着は着て、その上から上着を羽織っておいてください。水着を忘れてしまった人はもしかしたら裸で泳ぐことになるかもしれませんよ?それでは、解散!」
「ねえねえ、茉莉。」
「なあに?紘毅。」
「良いこと考えたぞ。卓真の水着と海里の水着をどこかへ隠しておこうぜ。」
「それ、良いわね。じゃあ、実行するのはお風呂に入っているときね。」
「そうだな。じゃあ、健闘を祈ろう。」
「ねえ、正弘くん、颯太くん、自由時間の間、何をしておく?」
「そうだね。何が良いかな?マサ、君の考えは?」
「トランプはどうだ?」
「まあ、それが妥当だな。幸成も一緒にやろうよ。」
「いいよ。」
俺らの部屋のメンバーのもう一人は川口 幸成といい、前世の俺みたいなやつでまだ全然若いのに、もうライトノベルを数百冊読んでいたり、まあ、有り体に言えば、オタクと呼ばれるものだ。