第7話 回想
夏になり、街が半袖になってきた頃、彼らは小学校生活最後の合宿である遠泳合宿に行った。文字通り海を泳ぐ合宿である。泳ぎのレベルごとに班を組まされる。
「なあ。お前ってそんなに泳げたっけ。」
「失礼ね。ちゃんと泳げるわよ!」
結局3人全員同じ班になった。
海里や卓真も同じだった。残念ながら茉莉と紘毅も同じだった。当然のことながら部屋は違う。正弘、颯太、卓真あともう一人が同じ部屋で茉莉、まどか、海里、あともう一人が同室だった。
まどかには新井に借りた小型のイヤホン式電話を渡した。なぜこんなに持っているのかと聞くと昔そういうものを必要とする事件が起こったらしい。
「先生、盗聴器とか発信機とか色々持ってますけどなんでですか?」
「これは・・・。君の父親にも関わることなんだが。」
すると台所で料理をしていた母親の圭織が反応し、タオルで手をふきながらやってきた。
「私も気になるから聞かせて。」
「お母さんも気になりますか。じゃあ話しましょうか。」
「あれは11年前でしたか。」
11年前・・。俺がタグリアに転生したときだ。
「坂田くんと学校の同窓会で会ったんです。中学を卒業して以来でしたからかれこれ20年位会っていませんでした。」
「なあ。新井、気になる人がいるんだが結婚を申し込んでもいいかな。」
「どうした。お前らしくないじゃないか。前は先に行動してからどうかって聞きに来たけどな。」
「むかしの話を掘り返さないでくれ。」
それが圭織さんでした。
「でも彼女、実は一回離婚しているんだ。」
「それがどうしたんだ。」
「弟さんを亡くされたらしく落ち込んでいるんだ。」
まさかな。
「そうか。それは残念だったな。」
「涙ながらに葬式もあげて、焼いたところまではいいんだ。でもいざ骨を拾おうと思ったら骨がないんだ。」
「粉砕骨折じゃなかったのか。」
「いや。頭を石にぶつけたらしい。深夜にゲームセンターに寄ろうとして躓いたっていうのが警察の見解らしい。」
それって・・・・。いや、別人だろう。
「それはかわいそうな亡くし方だ。」
「それで失意の日々を送っていたんだがある日夢の中に産神とか名乗るおじさんが出てきて彼はタグリアで元気に生活していると言ったらしい。」
「タグリアってなんだ?」
「それをそいつに聞こうとしたら消えてしまったらしくてな。」
「そうなのか・・・。」
「それで最近彼女の様子がおかしいんだ。だから変なことしないか見ていたいんだが何かないか。」
「友人に盗聴とかを専門にやっているやつがいる。それも政府おつきだ。そいつに盗聴器とかを借りてこようか。」
「ありがたい。」
新井は謎い。