第5話 いじめの現場
評価、お願いします。
新連載、始めようか迷ってます。当分はこれ一本で行くと思います。
翌日
「ねえ。なんでよりによって天井裏なのよ!」
文句をいうまどかを尻目に正弘は颯太に時間を聞いた。
「8時30分です。」
「そろそろ来るかな。盗聴器をどこに仕掛けた。」
「あの椅子の後ろと机の裏とバットの棚の下と教科書の棚の上です。それと隠しカメラを
部屋の4隅と机の上にあるいらない紙を集めた段ボール箱の隙間に1つ。」
大量の盗聴器やらは新井に借りてきた。
物音がし、見下ろすと海里が一人で入ってきたところだった。どうやら紘毅たちはまだ来ていないようだ。彼女は何をされるのか心配で仕方がないらしい。
「9時です。」
そっと颯太が耳元に囁いた。来ないのか?と思ったその時、いきなり倉庫の棚においてあった石灰の粉が降ってきた。
「おい、カメラは大丈夫か。」
「部屋の南東と北東のカメラは見えません。南西と北西はどうにか見えます。」
「海里ちゃん大丈夫かな。」
「最悪の場合、魔法を使わざるを得ない。昨日じいちゃんに粉塵魔法と闇系統の小さめな攻撃魔法を教わってきた。」
「やるじゃん。」
「来ました!」
見下ろすと服を真っ白にされ、泣きそうな海里の姿があった。
「あっははは。海里ちゃんかわいい!真っ白でお人形さんみたい。」
「確かにーーーー!」
倉庫に嘲笑が響き渡った。真っ白な海里の膝にちいさな黒い染みが1つ、2つと数を増やし始めた。
「あれーー。海里ちゃんもう泣いちゃったの?まだあと3つもあるのに。」
「くそっ。あいつら腹立つ!」
「待て。まだだ。海里ちゃんには苦痛を強いることになるがあとでドーナツでも買ってあげよう。」
「まさくんやさしー!」
「次なんだっけ。」
茉莉の合図でホースが入り、大量の水を吹き出し始めた。
「マイクとカメラは?」
水流で聞こえにくいのをいいことに正弘は聞いた。
「今の水で南東と北東のカメラの石灰が取れました。盗聴器も無事です。さすが防水。」
石灰は取れたものの今度は全身びしょ濡れになってしまった海里はとうとうがまんできなくなり、涙を流し始めてしまった。洋服から水がしたたりはじめたところで放水は止まった。
全身がぬれている海里にとって、いくら夏とは言え、初夏の風は寒かった。それを知っているのかわざと倉庫の扉を全開にした茉莉は試すように海里を笑った。
「まだあとふたつもあるんだよ。こんなところで泣いててどうするの〜?しっかしクラスのみんなもなかなかすごいことを考えつくものだ。」
「もう、やめて・・・。」
泣きながら懇願する海里を無下に引き離した茉莉は汚いものを触ったような顔で追い打ちをかける。
「そんな顔であたしに近づかないでくれる?」
「十分可愛いと思うけどな。茉莉さんのほうがブサイクだよ。」
「ああ、海里って結構可愛いよな。」
ポツリと呟いた颯太に同意するとまどかにつねられた。
「なによ。私が可愛くないっていうの?」
「まどかも十分かわいいよ。いや。十二分か。」
照れさせてあげた後、下のやり取りに集中した。
「さて、こっからはあたしたちが考えた罰だよ。」
「もう、やめて・・。なんでもするから。」
「なんでもって言ったね。」
「なんでもするとは言ってません。」
「どっちだよ!」
「助けて・・・。」
まずい・・。
「じゃああたしの足を舐めな。」
蹴られる!そろそろ出なければ・・・。
颯太と正弘が同時に思った瞬間、海里は蹴飛ばされた。地面に倒れた瞬間を見て紘毅が靴で踏んだ。
「茉莉のお姉ちゃんすげえな。いじめのスペシャリストかよ。」
「昔、学校で番を張っていたんだってさ。」
さすがに正弘も耐えられなくなった。我慢の限界である。
「おい。颯太、カメラと盗聴器止めるなよ。一発殴ってくる。」
「僕も行きます。まどかさん。あとは頼みました。」
「はいはい。頑張ってね。」
「行くぞ!」
「はい」
「いっせー「せーの!」のーで!」
掛け声とともに天井から飛び降りた。掛け声が合わなかったことは気にしない。