///4 救助?
年齢指摘があります。
あれはちょうど1年前の秋頃だった。
酒屋も終わり、俺は帰り支度をしてから、店に鍵を締めて帰路に着こうかな、と思ったその時だった。
いきなり、女性の「キャーーー!」という悲鳴が聞こえたのだ。
方角は貧民街あたりだった。俺はどうかしたのかと思って、貧民街の奥の方にある路地裏に入っていくと、そのさらに奥から話し声が聞こえた。
「この数年間、新しいボスによって女をさらうのを禁じられていたが、そのボスもやっとどこかへ行って、俺らは解放されたんだ。」
「そのとおりだ。お前をさらったことで俺はボスが変わってから初めて女を襲えるのさ。さあ、観念しな。」
これはまずいとそう思って、俺は犯行現場に飛び込んだ。
「やめろ、お前ら。この女性を襲うなら、俺が受けて立ってやる。」
「おお、上等だ。」
「やってやろうじゃねぇか。」
「そんな危ないですよ。私なんかのために、怪我でもしたらどうするんですか。」
「そこのお嬢さん、もう二度と私なんかという言葉を使うな。自分を卑下するんじゃない。
さあ、お前ら行くぞ!“ヴァリー”!
これで百人力だ。」
クラインは身体強化魔法を使った瞬間、攻撃力がアップし、優しそうで頼りなさそうに見える青年から筋肉ムチムチでとても強そうな見た目に変わった。
「お、おっさん、めちゃくちゃ強そうじゃないっすか。」
「今なら、このことをお前らの言うボスに報告しないが、どうする俺はリクと念話もできるし、あいつは転移魔法が使えるそうだ。」
「す、」
「す?」
「「す、すいませんでしたー。」」
「もう二度と人を襲うな。」
そう言うと、二人は俺から逃げて行った。
「大丈夫ですか、お嬢さん。」
「ありがとうございます、助けてくださって。実は私、何処かへ就職しようとして辺境から来てるんですが、先程あなたがおっしゃられたように私なんかとずっと思っていました。だから試験に落ちたんですね。腑に落ちました。」
「そうですか。それでもう一度採用試験を受けるんですか」
「いや、もういいんです。ただ、両親には反対して出てきてしまったので少し帰る分には怖いですけど。あ、すいません。こんなことをあなたに言ってしまって。何かお礼できることはありませんでしょうか自分ができることなら何でもやりますんで。」
「それでは、まずその敬語をやめていただけないでしょうか。それと、俺の名はクラインだ。そちらは?」
「分かったわ、敬語はなるべくやめることにする。私の名前はイースルーと言います。」
「じゃあ、俺の店で働かないか?店員は俺一人しかいないし。行く宛がないんだろ?宿も飯も提供するから。まあ、宿は俺の知っている場所がないから、俺の家ってことになるんだが。」
「あ、ありがとう。さっきも助けてくれたのにまた私を助けてくれるなんて。」
「そうと決まれば、俺について来い。案内する。それと、明日は5時起きだから、起きなかったら起こしに行くぞ。あ、あと、俺の勤め先は酒屋だ。そこで店長をやっている。これからよろしく頼む。明日からはさっそく色々教えていくことになるぞ。」
「え、5時起きですか、覚悟しておきます。本当にありがとうござます。感謝してもしきれないくらいです。」
「ほら、敬語に戻ってるぞ。酒場では客でも年上の人でも大体の人は誰でもタメ口だ。おっと、家についたぞ。じゃあ、イースルーの部屋は突き当りから向かって右に行けばある。あと、数分で飯を作るから、分ぐらい経ったら下に降りてこい。」
「わかったわ。ありがとう。」
「入浴は飯を食ってる時に言うから。イースルーはさきでいいよな。」
「うん。」
この話を思い返しているときの年齢が28歳半。