第29話 ”危神”討伐①
もう老齢の山口多聞はアムールに体力増強魔法をかけてもらっていた。
老齢なんだから”危神”討伐なんかするなよ、とツッコむやつは残念ながら誰もいなかった。
「アムール、あとどのくらい走るのかしら?」
「ざっと3キロといったところでしょうか。」
「まだそんなにあるのなら転移魔法を使えばよかったのに。」
「あいにく周りはたくさんのゴブリンで囲まれていますのですこしでも空気の流れが変わればすぐにその周りを囲みます。その中に降りるのは無茶です。」
「それなら仕方ないわね。」
「カナティア様、準備ができました。この山口多聞、いつでも出撃できます!」
「よし!行くわよ!リク救出隊!出撃!」
威勢のいいカナティアの掛け声とともに彼らは前進した。
そのころリクは大魔帝に尋問されていた。どうやらゴブリンの棲地の地中深くに大魔帝が住んでいるらしい。
「お前がリク・ソヴァールか。」
厳かに聞く大魔帝のぴょこぴょこ動く髭を眺めながら彼は答えた。
「はいそうですそれがどうかしましたかぼくはただげーむせんたーのちかくのいしにつまづいてころんだらあたまをうってここまできただけですべつにわるいことはしていません。」
できるかぎり時間を伸ばそうと彼はわざと緊張しているように答えた。さっき監獄の中にガルーダが現れ、カナティアたちがこちらに向かっていることを知った。おそらくここまで来るだろう。それまでひきずれば勝ちだ。
というか、ガルーダよ。俺を助けてくれよ。監獄まで来てるんだからさあ。
「危神さま、こいつは多分「復活のリク」ではありません。人違いでしょう。」
部下の進言に陸は驚いた。
(復活のリクだって?それが俺の二つ名か?まあ確かにもう30回ぐらい死んでいるがこの世界には死は300年以上生きないと訪れないんじゃあ・・。)