第28話 記憶回復?
「仕方ない。メモリーリメイン。」
宮廷最高魔術師の魔力は全員の海馬を刺激し、消された記憶を再び構築した。
「あ!え、誰がいない?」
「誰だろう?」
「誰でしょうか?」
そのとき、宮廷最高魔術師は思った。
なぜだ?”メモリーメイン”で思い出したはずだろう?なぜ、いまだに忘れている!?
そして一つの可能性を見出した。
『これは影が薄かったのが問題だったのでは?』という仮説だった。
彼はその仮説を即座に否定した。
『いや、でも、それならおかしい。彼がリーダーになってもすぐに誰がリーダーなのだろう?とかなるじゃないか?そういうことならリーダーになんかなっていないはずだ。』
彼は考えた。時間が経っっていくのを感じながら、考え続けた。
すでに3日がたち、一つの結論を導き出した。
『これは後程考えよう』と。
彼が結論を出そうとして考え始めた頃、カナティアたちは誰かを助けなければならないということを悟っていた。
黒平原を進んでいるうちに、彼女たちは思い出した。
リクの存在を忘れていたことを。
「そういえばそうでした。この山口多聞、一生の不覚です。」
「急ぎましょう、カナティア様。おそらく彼はゴブリンがダメージを受けた場合に連れ去る生贄が集められている監獄にいるはずです。」
「わかったわ。行くわよ!」
「はい!」
駆け出していく3人の勇敢な冒険者の背の後ろで宮廷最高魔術師は考え続けていた。頭を働かせていた。
途中、隣に人?の気配がした。無視しながら考えていると声をかけられた。
「おい、カエシリウス。」
その声も無視すると、もう一度来た。
さすがに二回も無視したのにそこから何回も声をかけられ続けたら面倒なので適当に答えると、返事が返ってきた。会話が始まってしまうらしい。一時中断しよう。
「すぐに考え始めるところは変わっていないようだな、カエシリウス。もと魔王のエースであった頃の頭も変わらんようだし。」
二言目で、考えていたカエシリウスがようやく顔を上げた。
「だまれ。ガルーダ。インドネシア生まれのお前にローマ生まれの私を褒める権利はないはずだぞ。」
「あいにくとお前のほうが今は格下なんじゃないかね。まあ確かにあの頃のローマはすごかった。我々にとっても住みやすかったしな。」
「アレクサンドロス大王様が亡くなるまではな。」
「ああ。その後を継いだあいつは終わっていた。ブルートゥスだったか。あいつはわれわれ魔王のことなぞこれっぽちも考えなかった。」
「だからこそいまのタグリアがあり、魔界があるんだろう。」
「アプロディーテー様のおかげだな。」
「クレイオー様に告白したのは誰だったか?」
「昔のことを掘り返すな。お前だって相当なことしてるだろうが。」
「まあいいじゃないか。それより奴らの無事を祈ろうぜ。」
「そうだな。」
旧友である魔王ははだだっ広い黒平原を駆け抜ける一組のパーティーの安全を、元魔王で現宮廷最高魔術師は中断していた思考を再開し、二人の間から会話が消え去った。
途中にローマとかインドネシアとか出てきましたが、地球とは全然関係はありません。
名前がところどころ地球に存在した歴史上の人物と名前がかぶっていましたが、地球とは全然関係はありません。