最終前話 帰還
エンディングです。
目を開けると、テレビが見えた。視界の端にスピーカーがあり、現代世界らしい電灯が部屋を照らしている。
「まさくん!起きた?」
聞きなれた声がする。
「有沙っ!」
慌てて周りを見渡すと海里、神村のよどんだ顔が見える。
「海里!神村も!」
とりあえず安堵した。帰ってきたという実感が湧く。
「無事に帰ってこれたのか。レイウスさんは無事かな。リクトも・・・。」
「ねえ、いろんなこと聞きたいし話したいけど、とりあえず明日にして家に帰らない?早くお母さんにも会いたいし。」
「そう、だな。」
身支度を整え、カラオケ店から出る。日はまだ燦燦と照っており、街を行き交う人もそれなりにいる。時間は15時を少し過ぎたぐらいだ。
「まぶしい。ああ、よかった。俺は生きてる。」
夕日を見て神村は目を瞬かせ、ずっと張っていた緊張が解けたのと恐怖からの解放でその目から小さなしずくが頬を伝っていた。いつの間にか有沙も海里も涙していた。
「帰って、きたんだね。よかった、まさくんにまた会えて。」
「俺もそう思う。」
頭にカナティアの顔が浮かぶ。あの時幻想に気づかなかったら、俺はここにはいないのだ。
「ありがとう。」
感謝が口をついて出ていた。
「うん?」
「みんな、家に帰ろう。」
久しぶりの家に、大切な人を大切に思い直すために、帰ろう。
空を見れば、白い雲が太陽と並んでいる。
もう黒い雲は見えない。