第58話 終幕の印
再開してからここまで、だいぶ早いスピードできました。これ含め残り3話、走り切りたいと思います!
「はっ!ここは?ん?お前は・・・。」
目を開くと、そこには見慣れているが最近は会っていなかった好々爺の姿があった。
「えっ、俺は死んでしまったのか?」
「いや、死んではいない。ワシがここに引き上げたんじゃ。まずは狂神を倒してくれてありがとう。」
礼なんか珍しい。産神は自慢の、自慢なのか?その髭をしきりに触っている。
「自慢じゃ!う、ごほんっ!狂神はな、元はワシの部下だったんじゃ。じゃが、神としてしてはならないことをして神界から落としたんじゃ。気づけばいつの間にかタグリアで堕神になっておって、もうそのときにはこっちから何もできなくなっていたんじゃ。じゃから礼を言う。」
「いやいいんだ。あそこは俺の大切な場所でもある。それを汚そうとするやつを排除しただけだ。いや、そんなことより、俺をここに呼んだのはそれだけか?なら早く有沙たちと会いたいんだが。」
「おお、そうじゃったそうじゃった。此度の戦いで、おぬし神気を使ったじゃろ?」
(え、何かダメだったのか?でもあのときはああするしか・・・。)
「いや、ダメではないしむしろよかったんじゃ。」
(ん?どういうこと?)
「これで、おぬしは神気を自由に使えるようになった。さて、狂神を倒してくれた報酬じゃが、おぬしを下位神に昇格させることにした。神気を使えるようになったからこそできたことじゃ。」
「は?いや、何勝手に決めてるんだよ。」
「大丈夫じゃ、今までと同じように生活を送ってもよい。」
(あーそうなんだ。じゃあ、いいか。ってかそんなことより有沙たちの方が今は気になる。)
「あいつらは?あいつらは無事か?」
「無事と言えば無事じゃが、のう。」
「なんだ?」
「実は、リッチの攻撃で3人とも致命傷を受けてのう。それはもう死にかけじゃった、というかあれは死んでいたかもしれんな。」
「え・・・・。あ、あの短剣は!」
「そう、その短剣。その短剣がものの見事に効果を発揮して、3人とも今転移前の状況に戻っとるわ。」
(ああ、よかったぁぁぁ。)
「短剣に『空間・異世界転移』を付与するなんて初耳じゃ。堕ちたとはいえ神を2人も倒すだけのことはある。」
「おぬしもこれから元の世界に戻すつもりじゃが、また魔法は使えなくするつもりじゃ。」
(もう、それはいいかな。)
「じゃが、下位神の一柱になったから、神の能力はある程度使えるぞ。例えば、超級転移とかここに来るとか、じゃな。まあ、また聞きたいことがあったらここにくるといい。なんか早く会いたそうじゃし、とっとと送ることにするかね。」
「おお、ありがとな。また、来る。」
「あっさりしとるのう。ちょっとの別れになるのに。じいさん、悲しいぞ。」
「もう、そういうのいいから。早く送ってくれ。」
「はあ、はいはい。おっと、くれぐれも送った後はすぐその部屋内から出るのじゃぞ。さもないと、また冒険が始まってしまうからの。あと、もちろん彼女たちの記憶は残しておいたよ。死ぬ寸前はさすがに消したが。」
「へぇ、気遣いできたんだな。びっくりした。どうしたんだ?」
「どうもしておらんわ!じゃあの英雄。」
手を振る姿が目に焼き付く中、また目の前が真っ白になった。意識が飛ぶ。
今度は心地いい白だった。