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神聖の転生者  作者: 薄明
第4躍 異世界転移
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第55話 英雄リクの本気

場面変わり、正弘VS狂神です。

一方、海里の魔力が尽きかけたころ、正弘は復活、むしろ進化した狂神に、さらに多くの魔法で圧倒していた。


「もう出し惜しみはしない。魔力もまだまだある。」

今まで攻撃系は中級魔法までしか使っていなかった。回復に魔力を費やすためだ。でもまだ、正弘の周りにはブラックボールが浮かんでいる。その出で立ちは悪役より悪役らしい。

辺りにいっそう瘴気が立ち込める。

「俺の魔法で俺の心臓を貫くとは、なかなかやるじゃないか。それでこそ殴りがいがありそうだ。」


そう語りかけてくる彼の姿は先ほどよりも人一倍さらに大きくなった、ヒト型であった。拳も牙も身体に応じて大きくなり、攻撃を受けられない戦いになりそうだった。上半身にまとっていたマントもなくなり、その黒光りする肌が露わになっている。鬼のようなその顔も角も赤黒く染まり、その様はまさに悪魔。


「『無数の棘』」

先ほどとは大きく違うその姿に見入っていたのも束の間、どこからか出現した無数の拳が一目散に正弘のもとへ飛んでいく。さっきまでの一点集中型の棘ではなく、威力が桁違いの拳が。

「うぉっ!わぁっ!」

魔力を練る隙も与えず、避けることしかさせない。さらに狂神は棘を追加する。

先ほどの水攻撃で舞っていた水滴を氷の棘に変形させ、まるで地面から棘が突き出すかのように繰り出す。串刺しにされないように避けなければならない。


体力にも限界がある。

「くぅ!」

避けたはずの棘が少しかすった。足から少量の血が舞う。


(このままじゃ何にもできない。疲れて死んでいくだけだ。せめて攻撃を予知できれば。)

傷を増やしながら、正弘は未来を予知する魔法を使う。地面から透けた棘が出てくるのが見える。


1秒後、右から棘、左から拳。

2秒後、真下から棘、右と左に拳。

3秒後・・・


(さっきよりいくらかマシになった気がする。今のうちに何か魔法を出さないと。)

浮遊しているこの黒い渦は、連続の物理攻撃は吞み込めない。一瞬を処理している間に別の一瞬の攻撃が来るからだ。ないよりはマシだが、さらなる一手が必要だ。


ふと狂神を見ると、高笑いしている。

「ふははははは!おもしろい!無様に傷を作り、無様に俺の拳をよけている。おいおい、さっきまでの勢いはどうしたんだよっ!ははっ!」

癇に障る。狂っている。大きい一撃で反撃だ。


「ぐぁっ!」

突如正弘の手から閃光が飛び散る。と同時にまぶしい光が狂神を貫く。光は音よりも速い。そしてさらに、彼は風魔法の使い手であり暗黒魔法の使い手だ。そのため、暗黒と風の進化属性である雷の両属性を持つこの魔法は威力やスピードが1段階上がるのだ。


「お前何をやった?」

半ば震えるような声で狂神が問いかける。

「答えるわけないだろう。」

狂神の身体の一部から湯気が出ている。立っている地面は閃光の衝撃でへこんでいるように見える。

狂神が唐突に何か叫んだ。その声に呼ばれて、正弘の周りにあった氷の棘が氷球となり狂神のもとへ飛んでいき旋回しだした。


(この魔法は、何だ?ブラックボールのように回っている・・・。)


「『風・風槍』」

予見した拳を避けるようにして作られたその1本の槍は、狂神のもとへ吸いつけられるようにして飛んでいき、狂神の周りを回る氷球になぜか当たり、そのまま正弘の方へ飛んできた。

「あれは、反射か!ちっ!」

慌ててシールドを張る。風槍とぶつかり、どちらも跡形もなく消えていった。


正弘はひとりごちる

「また厄介だな。氷属性で作られたものだから、性能はブラックボールと同じかそれより劣るぐらいか。進化属性なら貫通しそうだ。」


(狂神は満足そうにしている。いや、避け続けている俺を嘲笑っているのか、あるいは避け続け疲れ切っていく俺の嬲り方を妄想し悦に浸っているのか。お前の思い通りにはさせるつもりはない!)


「氷には火を!」

正弘の手から黒い炎が、超高温度の黒い炎が出現し、狂神の方へ勇んでいく。そして、当然のように氷球がそれをかばい、黒炎は氷球に跳ね返らずそれが溶けきるまでまとわりつき燃えていく。


(あの氷球はブラックボールと同じで、使用者自身に向けられた魔法は反射するが氷球自体に向けられた魔法には何の効果も発揮しない!)


「溶けきる前におまえを倒す!」

「戯言を!この程度の魔法で俺の魔法が消えるわけないだろう。」

「ははっ氷球を覆いさえすればこっちのもんさ。」


(懐かしいな。ガルーダに教えてもらった暗黒属性。全部終わったら、あの家にも行きたいな。)

息を整え、巨大なハンマーをイメージする。

(これで・・・)

「何っ!?」

空中に黄金の槌が唐突に現れる。その姿に狂神の驚愕が声に出ていた。その輝きは太陽のようにまぶしく、狂神の大きな身体さえもどこからか出てきた影で包む。それは飛行物体よりも大きく、まるで月が落ちてきたようだった。そして、正弘の思ったタイミングで振り下ろされる。


「『水・ドーぐあっ!」

詠唱は間に合わず、魔法は発動されなかった。狂神は避けることもできず、その衝撃を全てその身に受けた。黄金のハンマーは何物をも圧し、当たったもの全てに攻撃を与える。狂神はうめき声をあげ、周りの地面はその衝撃に耐えきれず地鳴りを起こし裂ける。空気は割れたように振動し、正弘でさえ立っていられなくなる。


「ふぅ。どうだ?」

煙が晴れ、裂けたその割れ目から大きな赤黒い手が姿を見せる。地面を掴み、その手の持ち主がゆっくりと地上に這いあがる。


「はあ、はあ、はあ。今のはなかなか危なかった。俺の2個目の心臓を犠牲にして、ハンマーによってできた裂け目に身を投じたから避けられたものの。おい、お前、名前は何だ?」


「まさ、いや、リクだ。」


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