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神聖の転生者  作者: 薄明
第4躍 異世界転移
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第52話 狂神を撃破?

先へ進むに連れて漂う瘴気が濃くなっていっているような気がする。強そうな魔物が集まっているように思えるが、無理に倒さず彼らの攻撃を避けながら正弘は前へ前へ歩を進めていた。


ふと、巨大な魔力を感じた。前を見ると、遠くの方に明らかに他の魔物よりも身長が高い生物がいた。近づくにつれて頭から生やした2本の角がくっきりと見え、他の魔物とは違った空気があった。正弘は、さらに密集する魔物の頭上を超えるように、その巨大な瘴気の中心部へ『空間・転移』をした。


接近するとさらにわかる、肌で感じるビリビリとした威圧感に耐えながら、正弘はアイテムボックスから両手剣を取り出し、そして空中を落下しながらその化け物に向かってその剣を振り下ろした。


攻撃が当たる直前、目の前が真っ白になった。

振り下ろした剣はそのままその化け物の拳と衝突したようで、ガキンと鈍い音が鳴った。と同時に視界は回復し、自分があいも変わらず荒野に立っていることに気付かされる。先程と違うのは、魔物がいなくなっているという点だ。一度目の前が真っ白になったことも合わせて考えると、何らかの魔法、おそらくは空間属性の魔法を使われて、異次元の空間に移動したのだろう。元いた場所とは隔絶した場にいるというわけか。




「お前、強そうな人間だな。」

一言、その声が化け物から発せられた途端に、先程まで目の前にいた彼の姿がかき消えた。突如真横から拳が迫ってくる。俺は特に慌てることもなく持っていた両手剣でそれを迎えうち、また後ろに跳んだ。『不壊』の能力がつけられたこの両手剣はいつまでも使えるが、これといった効果はない。


そして、この一瞬で、念のため『無・二重思考』を唱えておく。物理と魔法で戦う場面が多くなるはずだ。この空間にこの化け物と(何も嬉しくないが)二人きりなので、思いきり能力が使える。そう思って俺は『闇・闇纏』で黒炎をもこの剣に付与した。


俺の動きを余裕そうに見ている化け物の目の前に『無・縮地』で急に現れて、強化した両手剣を振り下ろす。ちょうど武道部で練習していたように。

またも化け物は拳でそれを受け止める。だが少し前とは異なり、剣から黒炎が飛び出し化け物の身体に巻き付いていく。剣と拳がぶつかったことで生まれる衝撃波に二人とも難なく耐え、一撃また一撃とハイレベルな応酬を繰り広げている。


ふと、『闇・闇纏』の効果が切れた。黒炎が剣の周りからかき消えていき、衝撃に負けて手から剣が吹き飛ばされる。迫りくる化け物の拳に慌てて身体強化した腕でガードし、剣の吹っ飛ばされた方向に跳ぶ。腕に鈍い痛みが走る。どうやら両腕とも骨折しているようだ。身体強化をしていなかったら、と思うと震えが止まらない。

慌てて体勢を立て直し『神聖・結界』を張って、続けざまに『神聖・ハイルクンスクート』を自分にかける。化け物の拳を二度結界が守り、三度目の衝撃に耐えきれず壊れた。


「お前が、狂神か。」

体勢を立て直した俺は仁王立ちしている2m弱の悪魔に声をかけた。

「人間どもにはそう呼ばれているようだ。そっちこそお前が勇者か。俺の拳と何度も渡り合うなんて、並の人間じゃねぇな。」

その化け物は笑うと牙が見え、黒くて濃密な瘴気を体にまとっていた。体形は人間に近く、ただ体表は黒く不気味である。

「せいぜい楽しませてほしいものだな。」

彼はそう言いながら『水・水槍』を通常の2倍の大きさで雨のように降らせてくる。地面に落ち、地面がえぐれる様子が見える。


俺は会話中に魔力を練り準備していた『暗黒・ブラックボール』を自分の周りに浮遊させ、俺に向かって飛んでくる鋭い槍を次々と吸収する。ブラックボールに吸収された魔法は自分の周辺にランダムに出現するが、今回はなぜか狂神とのフィールド上には出てこなかった。


(魔法が魔力に自動変換されている...。時空が違うからか?これならこの魔力を使えるかも...!)

そう気づいた俺はそれを他の魔法に使うべく、頭を働かせる。


飛んでくる水槍をかわし吸収させながら、同時に向かってくる彼の拳を両手剣で受け止め流していく。そうなるとやはりどんどん後ろに押されていくため、俺は一度横に大きく避けることにした。彼の拳はまたしても俺がさっきまでいた地面をえぐる。

体勢を立て直すため、狂神の魔力を吸い取って『風・風槍』を繰り出していく。それらはやむことのない『水・水槍』に当たってはじけ飛ぶ。




攻撃の合間を縫って出し続けていた『風・風槍』がじわじわと体力を削っていたのだろう、狂神の放つ魔法は少しずつ強さが衰え、俺の魔法が当たる回数も増えてきた。

そこからは物理の応酬だった。種族魔法である『無数の棘』と拳が目にもとまらぬ速さで繰り出される。俺は棘をかわしながら、拳を剣で流し迎え撃つ。

「ちっ、ちょこまかとっ!」

終わりの見えない応酬に終止符を打とうとしたのは狂神であった。拳を繰り出しながら、『水・高圧水射』の準備をしているのが目に見える。まともに食らったら上半身が消滅するだろう。準備をしながらも水槍はやんでいない。


(俺は自分の魔力を練って、高圧水射が俺に触れるその瞬間に何らかの方法で自分の身体を守り抜かなければならない。反射的に魔法を出すことはできるが、相手の魔法が発せられて俺にたどり着くその一瞬で、反撃が間に合うとも言えない。となると、やはりこの方法しか・・・。)

一瞬向かってくる拳と魔法が止み、前に打っていた『風・風槍』が彼の屈強な身体に当たって霧散した。と同時に高圧水射が彼の手から放たれる。


(今だ!)

俺は『空間・遷延』で自分の周りの時間の流れを遅くし、向かってきた高圧水射が俺の身体に触れるまでの一瞬の時間を延ばした。それと同時に、自分に『神聖・反転結界』を張った。時間の流れをコントロールする魔法は数秒しか持たないため、すぐに元に戻る。彼の手から水が出ているのが見えた途端、それが彼の腹を貫いた。彼の攻撃が見事に反転したようだ。


「ぐぉぉぉぉぉぉっ」

彼の苦しむ声が響き渡った。それとともに、彼の身体の中心から赤い光があふれだし、何かがはじけた。それと同時に、赤い何かが彼の身体に点々と刻まれた。

彼は途端に地に膝をつく。まるで死の間際になってしまったぐらいの大ダメージを受けたように。


「我の心を貫くとは・・・。ここからは本気を出そうじゃないか。」

だがまだ戦闘は続く。第1の心臓を貫いたと言うべきか。そして、本気を出すの言葉通り、彼は姿かたちをまるっきり変え、地に強烈な一撃を放った。煙と衝撃波が地を走る。


予想だにしない暴力に俺は対処しきれず、為されるがままに吹っ飛び身体を地面に打ち付けた。ゴンッという大きな音が鳴る。


(いって・・・。)

折れた骨を魔法で治癒しながら前を見るも、視界は砂煙に隠れ、不気味な影だけがぼんやりと動いていた。


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