第50話 俺に任せて先へ行け
投稿しようと思っていたら日跨いじゃいました。昨日の分です。
神村はどうやらトロールとの戦闘で何かつかめたみたいだった。
部隊は今少し休憩を取ってから前へ進みだしている。少しの休憩で海里も有沙も魔力が少しは回復したようだが、戦闘が始まってから結構魔力を使っただろう。これから遭遇するより強い敵に勝つためにも、魔力を二人に譲渡したい。海里には有沙が何かしらの治癒をしているときにかけられるが、有沙には人から治癒されることがないため、俺はタイミングを模索しながら走っていた。
ちょっとしてから、俺の【探知】に強い魔力が引っかかる。とうとう四天王級が現れたようだ。俺も1度は体験しているとはいえ、余裕で勝てるものでもないだろう。いざとなれば、暗黒魔法を使わなければならないかもしれない。
『みんな、嫌な予感がする。ここらへんで一度疲労を回復しておこう。アリサは他の勇者と自分に疲労回復魔法をかけておいてくれ。』
レイウスもまた何かを感じ取っていたようだ。『風・風運』に乗せた言葉が耳のそばで響いた。
「わかりました。海里、まさくん、神村くん、そして私にも。『治癒・Fリカバリー』」
有沙が疲労回復魔法を俺たちにかけてくれた。今がちょうどいいタイミングだろう。俺は心の中で『神聖・魔力回復』を唱え、海里にかけた。そして、疲労回復魔法をかけ終わった有沙にも魔力回復魔法をかけた。
「有沙、何か一緒に魔力も回復したかも。ありがとう!」
「俺からも、ありがとうな。」
「いやいや、全然いいよ。なんか私も魔力、回復した気がするし。みんなで頑張ろう。」
「ああ。頑張って、それで、無事に地球に戻ろう。」
『よし、準備はいいな。先に言っておく。おそらく次の敵は幹部級の魔物だろう。遭遇したら勇者は俺たちを置いて先へ進んでくれ。頼んだぞ。』
驚きはしたものの、声は出さずただただうなずいた。決戦のときが限りなく近づいているのだと改めて感じさせられる。周りにいた3人もその言葉にうなずき、決意を固めていた。
その直後、前方から声が響いてきた。
「お前らかぁ?トロールを倒したのは!」
ローブに包まれている者がいた。少し甲高い声が響いた。
『勇者よ。君たちに一時的に隠身の魔法をかける。そのまま足を止めず先へ進んでくれ。』
「『闇・ダークコート』」
誰かがぼそっとつぶやいた。俺たちを見えなくさせたのだろう。俺が他の人に闇属性の魔法をかけられるのは初めてだ、なんていうことを頭の片隅で思いながら、
(必ずまた生きて会いましょう、みなさん!)
と心の中でつぶやいていた。
「行ったようだな。」
そう呟いたレイウスは、『風・風運』で部隊を鼓舞した。
『皆、戦闘態勢を取れ!厄介な敵が登場だ。』
敵はローブで顔が隠れていて種族がまだわからない。そのため、使える魔法を判断することもできない。
突如、目線の先にいたローブの女がすごい速度で向かってきた。レイウスは腰から抜いた剣に素早く魔力を纏わせて、彼女の攻撃を迎え撃つ。彼女のフードがはらりと落ちた。斧を彼の剣に叩きつける彼女の口には物々しい牙、顔には硬い鱗があった。衝撃を和らげるために後ろへ飛ぶ。
「お前その龍の顔・・・竜人か。」
「待ちくたびれたぜ。」
その直後、彼女は咆哮を上げた。彼女に向かって打った魔法は見事に消え去り、レイウスらは5秒間身動きが取れなかった。たった5秒、されど5秒。一瞬のすきを突いて斧を横振りしてきた彼女の攻撃を、レイウスはすんでのところで剣で受け止めた。だが、その衝撃は抑えきれず、身体は後方へ吹っ飛ばされた。
(これは、なかなか手強い相手だぞ。)
『風・飛面』によって、空中で体勢を整えたレイウスは心の中でそうつぶやいた。