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神聖の転生者  作者: 薄明
第4躍 異世界転移
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第40話 作戦開始②

しばらく進むと、平原の中にぽっかりと空いた洞窟が現れた。ちょうど狂神の陣地に背を向ける形で空いていて、一晩休めそうなところだった。

「ここで一旦休憩をする。4人はここで仮眠を取ってくれ。洞窟の中は安全だから安心してくれていい。見張りは俺たち王立軍でやる。」

レイウスはリクトにアイコンタクトを取ると、こちらに背を向け、大きな機械を背負った人のもとへ向かった。


「じゃあこっち行こっか。」

「はい!」

リクトは俺たちを連れて洞窟の中へと入る。


外の世界と隔絶されたようなひんやりとした空気が流れる洞窟の中は、少し気味が悪かった。

少し奥に入った、開けた場所にはすでに明かりがともされ、物々しい雰囲気を醸し出している。


「一応偵察って感じで先にここに来た部隊がいてね。それで洞窟内の魔物の討伐とかやっておいてもらったんだ。」

リクトの説明に相槌を打ちながら俺たちは敷物をしき、その上に座った。


「さて、一晩こうして歩いてきたわけだけど、どう?少しは自信もついた?」

「まだ怖いかな。さっきの魔物も倒せるかわからないし...。」

相変わらず心配そうに話す海里の手を神村がそっと握る。

「君たちは僕たち勇者部隊の護衛と、獣人部隊、それから王立軍の精鋭部隊が守るから大丈夫だよ。君たちは出来上がった道を走ればいい。」


幾度となく繰り返されてきた「大丈夫」の言葉。不思議なもので何度も真剣な目で言われ続けると、本当に大丈夫だと思えてくる。「後のことを心配してもしょうがない」と、心のどこかで言う声がする。「やればできる」とも。


(何があっても俺がみんなを守ろう)

一人、心の中でそう誓った。


「ずっと気になってたんですけど、王立軍の魔術師や騎士と、宮廷の魔術師と騎士の違いってなんですか?」

俺の横で有沙がリクトに問いかける。


「ああ。それはね、王立軍が基本なんだ。で、その中でもエリートだけが選ばれて宮廷魔法師団だったり宮廷騎士団だったりに入るんだ。こういう戦いのときは宮廷の人たちが王立軍の部隊を率いるんだよ。」

「そうなんですね。」


「この部隊もレイウスやミリシアさんたちは宮廷、ほかの人たちは王立の人たちなんだ。と言ってもみんな優秀だけどね。」

「そういえばレイウスさんが話しかけていた人が背負っていた機械はなんなんだ?」

有沙と入れ替わりに今度は神村が問いかける。機械系の話が好きな彼らしく、その目は輝いていた。


「ああ、あれは念話機と言ってね。離れた場所でも話せる便利な機械なんだ。習わなかったかい?」

「あれが念話機か!習ったことはあったけど実物は見たことなくて。」

「まぁ主にヤマト国で広く使われているから魔法の多いカルーセルではあまり見ないかもね。」

「ヤマト国?」

そばで話を聞いていた有沙が小さくつぶやく。それが聞こえたかのようにリクトは説明を始めた。


「ヤマト国っていうのは僕の親戚のレイヴォル家が代々国王になっている国なんだ。今の当主のアルヘルドさんは僕のお父さんとすごく仲が良くてね。向こうの方が魔法以外の技術が発達してるから今回の戦いもたくさん物資やらを送ってくれたんだ。」


納得したように神村や有沙がうなずく。海里はちょうど神村の陰になっていて反応はわからなかった。

「その話は一度授業でしたはずなんですがね...。」

聞き覚えのある声がして振り向くと、軽食を持ったクローカーが立っていた。


「やはり一気に伝えるのはダメでしたね。」

「ちょっとド忘れしてただけで、ほんとは覚えていました!」

有沙の慌てた言葉に、クローカーが少し笑いながら続ける。


「まぁヤマトは位置的には海の向こう側ですし、一般市民レベルで深くかかわるのは商人くらいですからね。覚えてなくても当然です。」

クローカーの言葉にリクトが少しむっとした表情で言い返す。彼らのやり取りを横目に軽く食事を取っていると、今更ながら疲れが押し寄せてきて、俺たちはそのまま眠ってしまった。





「寝ましたね。」

「うん、そうだね。」

リクトとクローカーは洞窟の地面で寝る4人を見ていた。


お互いに離すまいと手を握りあっている様子は、訓練の時とは別人のように幼かった。

「普段もそうだけど寝ているのを見るとやっぱり子供だなって思うよね。」

「ええ。まだ小さな子供ですよ。なんでこんな子たちが勇者として召喚されたのでしょうね。」

「ほんとだよ。」

クローカーの言葉にうなずくように、リクトがため息をつく。


しばらくの静寂ののち、クローカーが口を開いた。

「では私は外の立ち番に行きますので。」

「お願いします。」

一礼して彼が立ち去ったあと、足音すらも聞こえない静寂の中で、リクトは一人洞窟の中に座ってぼんやりと天井を眺めていた。


その目はどこか悲しさを映しているようにも見えた。


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