表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神聖の転生者  作者: 薄明
第4躍 異世界転移
210/231

第39話 作戦開始①

夜。街の住民は寝静まり、孤独な狼が遠吠えをする頃。

リカリスの門の前に黒いマントを着た人達が集まっていた。レイウス率いる勇者部隊の面々だ。


レイウスが口を開く。

「わかっていると思うが、王国の運命は俺たちの働きにかかっている。なにがあっても4人を向こうの本陣まで連れて行くぞ。いいな。」

それは小さいものの、闊達とした、人々を鼓舞する声だった。


「道中は一切話すな。よし、行くぞ。」

生きてここに戻ってくる、その想いを胸に抱いて彼らはリカリスの街に背を向けた。


彼らは漆黒の夜空の元、ひっそりと、しかし足早に狂神の陣地へと向かって歩みを進める。夜は魔物も休む。今がチャンスだった。





「今回の作戦は三部隊に分かれて行う。東側が我々の陣地、西が狂神の陣地だ。まず、王立軍が北方に展開、中級魔法をもって狂神軍を北方に誘引する。」

アストリアの言葉と共に地図の、部隊を表す旗が動かされてゆく。

「誘引に成功した後、煉獄魔法の『地獄絵図』および神竜部隊の『吐息』により敵軍を分断する。」

地図に一気に赤い線が入り、狂神軍を二つに切った。


そこへ戦場の真ん中を進んできた「突入」と書かれた旗が入り、最後に「勇者」が突入し、狂神を討ち取る──





俺は闇夜を歩きながら作戦会議の時のアストリアの説明を思い出していた。

「俺たちは南から攻め入るわけだけど、本当にこの作戦成功すんのかな。」

隣に並んだ神村が突然話しかけてくる。


「喋るなって言われただろ?」

「あっ...」

彼は思い出したように慌てて口をつぐむ。その様子が可笑しくて俺は少し笑った。


「戦術のプロが考えたんだからきっと大丈夫。アストリアさんたちを信じよう。」

「そうだな。」

「大丈夫だ」と言ってみたものの、俺はどこか不安を拭えずに夜空を見上げた。本来ならば見えるはずの月は隠れてしまい、漆黒の闇だけが重たげに俺たちを包んでいた。





もうどれ程歩いただろうか。

唐突に俺の【探知】に魔物が数体引っかかった。【鑑定】と合わせて見てみるとコボルトのようだ。俺たち別働隊を認識しているかしていないかはわからないが、徐々にこちらに向かってきている。俺は魔法をすぐにでも打てるように、こっそりとイメージトレーニングを行った。


数分後にはレイウスもコボルトらに気づいた。

「コボルトが8体ほど近づいてきている。各自戦闘態勢に移ってくれ。」


突然レイウスの言葉が部隊各人の耳元で流れた。風属性初級魔法である『風・風運』を利用して、部隊全員に指示を出していった。

隊列を組み直し戦闘準備が整ったそのとき、コボルトがバラバラに現れた。


コボルトが目に写った瞬間、俺は『風・風運』で「上から一発いきます」と全隊員に伝えながら、『風・浮遊』で空中にとどまった。

視界も良好になり、コボルトの位置がはっきりとわかる。2,3体を倒すほどの威力が出るくらいに、込める魔力を調整して、俺は両手から『風・風刃』を放った。音は一切ない。


俺の手から放たれた風の刃は先頭にいたコボルト3体の首をすっと切って消滅した。他5体のコボルトは予期しない仲間の突然の死に、驚愕し恐怖している。


その隙をついて、神村の前にいた4人が1体ずつコボルトを倒し、神村も慣れない手つきで1体のコボルトの身体を2つに割った。そして戦闘は無事終了した。


「みんな、よくやった。」「今戦った者は少し休憩を取ろう。」「アリサは俺の元へ来てくれ」

レイウスは『風・風運』で3文に分けてみんなを軽くねぎらった。


今回戦うことがなかったリクトは、同じく戦闘に参加していないメンバーとともにコボルトの死体を黙々と真ん中に集めていた。

「アリサ、こいつらがアンデッド化しないように、あの魔法を頼めるか。」

「わかりました。」

無造作に集められた死体から少し目を背けながらも、『治癒・弔いの火』をコボルトに向けて放つ。当たった瞬間、その死体は青色の炎に包まれ一瞬で灰となった。


「『風・ブリーズ』」

レイウスの魔法でその灰はそよ風に運ばれてどこかへ飛んでいった。


「よし、行くぞ。もう少しで野営だ。」

その言葉を聞いて休憩していた者もすっと立ち上がり、隊列を元に戻して再び勇者部隊は前に歩を進めていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ