第30話 ギルド⑤
数分後、戦いはあっけなく終った。時間切れだった。
「まさくん、どうだった?怪我はない?」
「かなり手強かったな。俺はないけど、ラッセルさんは何箇所かある。」
側で会話を聞いていたヘレナは表情には出さず驚いていた。まさかラッセルと戦って無傷の新人がいるとは、と。
そこに、ミランが有沙をつれてやってきた。
「マサヒロさん、ミサトさん。あなた方の結果は後ほど受付でお知らせしますので、先に受付へ戻っておいてください。あ、ヘレナ。二人を受付に連れて行ってもらっていい?」
「はーい。じゃあ戻ろっかー」
そう言ったのを確認したミランは、有沙を連れてラッセルがまだいる部屋へ入っていった。
「あの〜、有沙は、あ、さっき入っていった女の子は、治癒魔法なんですけど、どういう試験をするんですか?」
有沙が入っていった部屋を見ながら、海里がヘレナに尋ねる。部屋の隅に小さく作られた窓から、三人がなにか話しているのが見えた。
「ラッセルさんの傷を治す試験だと思うよー。まぁ冒険者ギルドってけが人あんまりいないしさー」
ヘレナが軽く笑う。
確かに周りにいるのは大抵が新しい冒険に胸を膨らませているような、元気な人たちだ。
「治癒魔法の使い手って大体が冒険者ギルドには入らずに教会に行っちゃうからさ、試験もあんまり詳しく定められてないんだよねー。まぁ治癒魔法の試験自体は二人がやったものより遥かに楽だからすぐ終わると思うよー」
「そうなんですねー」
親しげに話すヘレナと海里。
正弘にとってはどうも入りづらく、結局一言も交わせずに受付についてしまった。
受付には既に神村がいて、リクトとなにか話していた。
「リクト!」
「あ、ヘレナさん!お久しぶりです。」
リクトが振り向き、小走りに近づいてくる。
「元気ー?」
「はい!おかげさまで!」
「リクトさんとヘレナさんって知り合いだったんですね」
「まぁねー、いろいろあったしー」
思い出話に花を咲かせる二人を尻目に、受付の近くのベンチに腰掛ける。
「なんかさー、いきなりこの世界に連れてこられて、いろいろ困惑してたのに今はなんか慣れちゃってるよね」
天井を見上げながら海里がつぶやく。
「そうだな。」
隣りに座った神村が彼女に返答する。