第25話 王宮で➁
遅くなってすいません………
途端に視界が開け、豪華絢爛で広大なその部屋に幅の大きいレッドカーペットが金色の王座へと伸び、その側にきらびやかな衣装を着た人がずらりと並んでいるという圧倒される景色が目を瞬かせた。
同時にこの部屋にいる多くの人がこちらを見ているのを感じて心を縛る緊張が増していた。だが圧倒されたのは一瞬で、すぐに先に立っていたクローカーとロイルの元へゆっくりと歩き出した。
歩き終えた勇者を確認して王は問う。
「クローカー、そちらが勇者か。」
「はっ。勇者でございます。」
「力はどうだ?いや、ここへ連れてきたということは熟しているということか。」
「はっ。」
「勇者よ。この国を守り悪を倒してくれるか?」
「わかりました。」
正弘が答えた。他の3人もそれに頷く。
「うむ。では下がってよい。」
「はっ。」
クローカーはそう言って一礼し扉の方へ向かっていく。それに倣って勇者も一礼し扉の方へ向かった。
廊下に出た途端、心を縛っていた緊張の糸が解け少しの疲れを感じた。
「皆さん、このままついてきてください。」
クローカーが少し声を潜めて勇者に囁きまた歩き出した。
「おつかれさまでした。ここから本格的に忙しくなると思いますが、くれぐれも体調管理には気をつけてください。今日はこれで終わりです。また明日」
英雄の森で一方的に連絡事項だけ伝えると、クローカーたちは正弘たちの前から姿を消した。
気づけば日は沈んでいて、宿舎の明かりがぼんやりと地面を照らしていた。
食堂のいつもの指定席に座った彼らは、ご飯を食べ始めると同時に堰を切ったように話しだした。
「それにしても、あの騎士強かったな」
「ほんと。俺でもギリギリだった」
神村が憧れの表情を浮かべる。
「かっこよかったよね、なんかクールっていうかさー」
「それ!『騎士たるもの、これくらいできて当然です』とかね!やばかった!」
王城の感想から始まった彼らの会話は、気づけば専ら手合わせした騎士の話になっていた。
それが、リクの子孫であることを彼らが知るのはもう少し先のことだ。
部屋に戻ってぼんやりとしていた正弘の耳に、ドアを叩く控えめな音が届く。
「ねぇ、まさくん。今いい?」
「おう」
扉があいて、有沙の顔が覗いた。
ベッドに座った有沙に向き直る。
「これからさ、どんどん危険になるんだよね」
「そうだな。少しずつ敵の中心に近づくことになるからな」
彼女の膝の上の拳が、きゅっと握りしめられる。怖いのだろう。
「俺も神村もいるから大丈夫だ。みんなでもとの世界に帰ろう。な?」
ガラでもなく、正弘は有沙の頭に手を置いた。
彼女は照れたのか、少し俯いていた。