第23話 一月後
「『風・風刃』」
鋭い3つの風が海里に向かう。
「『火・火壁』その魔法はわかっているわ!『火・火柱』これでどうよっ」
すると正弘の足元の地面が突然熱くなり、火花が散る柱が空に向かって燃え上がる。初めて披露した魔法で決めようとするもやはり正弘はそれを回避する。
「うおっ。でもまだまだだ!『風・飛面』」
一瞬で燃えて一瞬でなくなる火柱の間を、魔法で作った地面を使って駆け抜けていく。その道はだんだん下がっていき、海里の目の前で着地する。
正弘は懐からナイフを取り出し、海里の首に突き出す。
「とど「まだよっ!『火・火球』」
至近距離で魔力を燃料にして球状に燃え上がる。正弘の目の前で着火したそれを持っていたナイフで切って、改めて海里の首にナイフを突きつけた。
「勝負あり。マサヒロの勝利」
審判をしていたクローカーがそれを告げると、一瞬にして緊迫感のあった空気が消え正弘は膝をついていた海里を立たせて握手した。
「最後のは驚いた。危なかった。」
「そんなこと言って。ナイフで火の玉を切るなんて普通思わないでしょ。そのナイフ魔道具?」
「違うぞ。最後は風壁を縦に入れたんだ。」
「相変わらず変な使い方するよね。無詠唱も最近習ったっていうのにもうこんなに使いこなしてるし。」
「海里も火柱習得してただろ。」
「そうだけど・・・。次は勝つからね。」
互いに感想を言い合っているとクローカーが近寄ってきた。
「どちらもとても成長しましたねぇ!上級魔法も使いこなしてしかも実践で使えるようになるとは・・・。じゃあ予定通りこの後昼食を取ったら王宮へ招待します。」
「二人は?」
「もう食堂に行っています。」
「なら私達も向かおう?」
「ああ。」
予定とは今日謁見の間へ行ってこの国の王様や貴族と会うことだ。
俺達が異世界へ来て1ヶ月と少し経った。今では有沙も海里も上級魔法を一部だが使えるようになり、神村の剣の腕は更に鋭さを増している。
また、魔法が使える俺達3人は近接戦で苦労しないようナイフの手さばきもある程度受けた。
謁見が終わればここから出て、段々と出没してきている敵の配下に襲われている街を勇者として巡回するのだと昨日説明を受けた。
もうすぐ今年も終わりますねぇ。。。