第22話 郷愁
気づいたら約一ヶ月も経ってましたっ!すいません、遅くなりました。2話続けて更新します。
「よし、できたっ!」
端にある魔法陣によって作られた竜巻が面倒そうに唸り声を上げる頃、俺はようやくきれいな竜巻を作ることに成功した。10秒ほど竜巻を維持した俺はその竜巻を崩し、もう一つのそれも崩した。
次の魔法に取り掛かるか、それとも帰るか判断しようと時計を見た俺は、晩御飯の時間が近づいてるのに気
が付き、焦った。
慌てて訓練場の結界をもう一度貼り直し、自分の部屋に飛んだ。
「うわぁ…、ドロドロだ…」
なんども風に吹かれた俺の服は乱れ、巻き上げられた塵によって、ドロドロになっていた。
このままでは誰かがこの部屋に来たらすぐに見つかってしまう。だが、井戸は外にあるので水浴びもできない。かといってリリーノの所へ行くのも時間が足りない。今、この場所で気づかれずにこの身体を綺麗にする方法。
そう考えてふと気づく。神聖魔法というちょうどいいものを持っていたと。あまりこの魔法は使う機会がないため眼中になかったのだ。
「『神聖・浄化』」
万が一隣の部屋に聞こえないように、と小声で言葉を唱える。その瞬間絡みついていた汚れが消えてなくなり、すっきりした感じになった。
「まさくん、今いい?」
この声は有沙だ。間一髪だった。
「いいけど・・・。どうしたんだ?」
返事はなく、代わりにドアノブが回りかけて止まった。
「あ、ごめん、鍵かけっぱなしだった。」
「鍵?うん。」
鍵が開いた音が響き、再びドアノブが回りドアが開いた。少し痩せたようなあまり元気がなさそうな有沙の顔が見えた。異世界に来ており、家族にも他の友達にも会えないので仕方がないといえば仕方がないが。
「で、どうしたんだ?」
有沙はちょっとためらうように口を開く。
「いや、こっちに来て二人であんまり喋ってないなと思って。」
「そうだな。」
「私達ってカラオケにいたじゃない?お金払ってないけど大丈夫なのかな?それにお母さんもお父さんも私の事心配してるよ絶対。はあ。ふとした時によく考えるんだよねぇ。ねえ、私達っていつ帰れるのかな?」
必死に言葉を紡ぐ有沙の声を聞きながら、正弘も母であり姉である火織のことを思い浮かべる。前世では死んでしまったからこっちへ来たが、今回は無理矢理こっちに呼ばれたのだ。突然行方不明になったのを聞いてどうなってしまうだろうか。
「ごめん。わからない。でも早く終わらせて早く帰ろう。そのためにも今頑張るしかないよ。」
「そうだよね・・・。ああ、ところで、さっきクローカーさんにもらった魔導書読んでたんだけど。ここの文の意味わかる?」
「ああ、これはこう・・・」
正弘と有沙の会話は魔法へと移っていった。