第19話 神青竜アエリス
「『転移・リリーノの目の前』」
声を発した瞬間、正弘の姿は部屋から掻き消えて少し先の神竜の洞窟の前に現れた。
現れた瞬間、正弘は迫りくる何かを感じてそれを白刃取りした。感触はゴツゴツしている、まるで製品化された木のようだった。
「ああっ!リク様でしたか!すいません、脅威をもつ何かが近づいてくる気配を感じたもので思わず」
「いや、こちらこそすまん。先に言っておけばよかったか。リリーノ、アエリスはいるか?」
「はい、中で昼食を取っています。」
「ありがとう。ちょっと会ってきても・・・?」
「もちろん、大丈夫ですよ。」
正弘はリリーノに会釈してだだっ広い洞窟の中を歩き始める。
『念話』でアエリスに目の前に現れると伝えてから、正弘は『転移・アエリスの前』と唱えてまた飛んだ。
「おお!リク、ちょっとぶりだな。今日はどうしたんだ?」
アエリスは人の姿で炒飯を食べながら訊いてきた。
「昔作った訓練場に行こうかと思って、その前にここに立ち寄ったんだ。訓練場の場所は変わってないよな?また、転移したら落ちていくみたいなハプニング起きたら面倒だから先に聞いておこうと思ってな。」
「あのどデカイ建物は全く変わっておらんぞ。リクが残した結界も俺がそのまま継いでるからな。」
「おう、それは助かった。これからは俺が時間があるときに来て魔力を送っておくことにする。」
「それがいい。」
「おっと、今日はちょっと時間がないからもう行くぞ。」
「また来て今度はリリーノを交えて3人で語ろう。」
「おう、またな。『転移・訓練場』」
昔息子たちのために森の最奥に建てた訓練場の中を思い出して正弘は転移した。
目を開けると、そこには昔と何も変わっていない景色があった。
幼いころのカイトとカタラタスが走り回っている光景が浮かび上がってきた。