第18話 感想と報告
遅くなりました。もう一話投稿します。
「実践ってあんなにきついものだったんだな。柵も見れなかった。」
神村はボソっと、だが力強く言葉を発した。
「森に入った時はまだワクワク感が抜けてなかったけど、初めてゴブリンに会って戦った後は目の前で殺されているのを見て少し震えちゃった。でもコボルトとの戦闘から相手も生きるために私を殺しに来てるんだなってことがわかってから、そんなに怯えなくなったと思う。」
同意するように海里が心境を語った。
「でもほんっとうに疲れた。こんなにだとは思ってなかった。」
有沙も同感なのだろう。補足するように言う。
正弘がまとめて何かを言う前にクローカーが口を開いた。
「実践はある程度鍛錬の期間を置いたらもう一度行ってもらいます。次は柵を見て、それを少し超えられるように頑張りましょう。」
そういえば柵すら見えてこなかった。ということは俺らが戦っていたのも森の入り口近くだったのか。
「柵を見るまで進めたらここでの授業も残り少ないということになるでしょう。」
「それはどういう…?」
「時が来れば説明します。皆さんは柵の存在を確認することを目標としてください。」
「え、ここから出るってことかな?」
「どうなるんだろう、私たち」
海里と有沙は不安そうだ。
神村は次こそはと意気込み、正弘は魔法をどのレベルまで使おうかと密かに考えていた。
「まあ、今日は休みなので各自自由にお過ごしください。ただし、森へは入らないようにお願いします。明日からはいつも通り鍛錬して私が時期を見て実践を行います。では解散。」
既に昼食を取っていた正弘は、今から昼食を取ろうとする神村たちを置いて一人食堂を出た。
「あれ?まさくん、どこ行くの?」
気づいた有沙が追いかけてきて訊ねる。
「飯もう食ったし、部屋戻って寝ようかなと思って。有沙は飯食ったらどうするの?」
「ああ、そう。私はクローカーさんにもらった魔導書をじっくり読むことにするわ。」
「そうか。じゃあ、また後で」
「うん。」
正弘は部屋に戻り、部屋の鍵を閉めた。時間は約4時間しかない。その時間には夕食か水浴びかで誰かが俺を呼びに来るだろう。それまでにここに帰って今起きた感を出しておかないといけない。
正弘は急いで『千里眼』で神青竜アエリスの住む洞窟の入り口を見た。そこにはたまたま妻リリーノが木のほうきで掃除をしているのが見えた。
あの大きな洞窟の入口をほうきで掃く必要があるかはわからない。正直アエリスが竜の姿で降り立った時点で砂埃が巻き上がりまた汚れると思うのだが、彼女の習慣の類いなのだろう。
どちらにせよ、ちょうどいい。早速飛ぼう。
「『転移・リリーノの目の前』」