第15話 森の探索〜ゴブリン戦〜
朝だというのに森の中はひどく暗く、昨日雨が降ったわけでもないのにじめじめとしていた。
「なんか、気味悪いね」
「ちょっと怖いかも」
いつ魔物が出てきてもいいように、戦闘の体形をとっている。神村が先頭に立ち、次いで海里と有沙、最後尾に正弘という陣形だ。
正弘は風魔法を森全体に広げて敵がやってくるのを察知できる、という体で『探知』を行っていた。
女子二人は恐怖と若干の緊張を紛らわすためか、会話が弾んでいるようだった。
ある程度進んだところで、正弘の『探知』に魔物が引っ掛かった。ゴブリンが1体、前から歩いてきているようだ。
「前からゴブリンが1体、来るぞ!神村、警戒しながら前に進めよ!」
「おう!わかっている!」
そう言いながらも歩みは止めず、ついにその時が来た。
目に見えたゴブリンは前世で倒したコバヤシよりもはるかに小さく弱そうだが、それでもこの4人では脅威に見えるだろう。
「ギギッ!!」
あちらの方もこっちに気づいたようだ。手に持つ槍を構えて小走りでやってくる。
神村はあまり速さのない突きを辛うじて剣で受け止め、力一杯押す。
「緊張するなよ、落ち着け!」
正弘は海里と有沙にはあまり動かない様に言い、『風・風刃』を技名を叫んで放つ。
初級魔法の鋭い刃はゴブリンの片腕を失くすだけに留まった。それでも、十分な隙はできただろう。
「神村、今だ!」
「はぁぁっ!」
神村は震える手を抑えつけて剣を握り、ゴブリンの首を刈り取った。瞬間、神村もドッと崩れ落ちた。剣を鞘に納めても手はやはり震えている。
海里と有沙は神村に駆け寄っていく。『探知』で誰も近づいてきていないことを確認した正弘は、少しその場にしゃがんで人型を殺したことに対する震えを押さえつけているふりをしてから、立ち上がって懐のナイフを取り出しゴブリンに近づいた。
「正弘、何を・・・?」
「クローカーに言われただろ?コイツを倒した証として胸にある魔石を取ってこいって」
魔物にはそれぞれのある場所に魔石と呼ばれる核があり、それを持ち帰ることで魔物を倒した証明になる。今回の実習でもその魔石を持ち帰るように、と言いつけられていたのだ。
「ああ、そうだったな。ふぅ」
神村は立ち上がり、正弘が剥ぎ取るのを見守る。
「もう震えは大丈夫か?」
「ああ、さっきまではヤバかったけどな。今もちょっと怖ぇし」
海里も有沙も実際には手を下していないものの、生物が殺されていくのを見て少し震えていた。
「ここで少し休憩しようか」
「ああ、そうだな。魔物は来ていないか?」
「来ていない。まだここは森の入り口に近いからな」
「そうか」
持ってきた水筒の水を少しずつ飲みながら座り込んで休憩する。中身は魔物でも見た目は子供ぐらいの身長の人型だ。3人はショッキングな映像に早くも疲弊していた。
少し後、正弘の『探知』にアンデッドが引っ掛かった。アンデッドに打撃はあまり効かず、魔石を直接壊すか治癒魔法をかけ続けるかしか倒す方法はない。
次は有沙の出番だということだ。正弘たちはさっきと同じ体形で1体のアンデッドがいる場所へ進んで行った。