第10話 訓練の始まり
全員が飯を完食し外へ出ると、石碑の前に紫のローブを着たクロ―カーと護衛が立っていることに気付いた。
クロ―カーは出てきた勇者らを手招きし、彼の元へやってきた勇者らに話しかける。
「昨日は”狂神”の話をして勇者様方にステータスを見せました。勇者様方は魔法のない世界から来たと伝えられています。なので、今日は魔法の出し方とスキルの使い方、この世界の歴史を教えたいと思います。では、皆さん。自身のステータスをお開きください。」
「開いた!すごい!え、なんかハイテクー!」
朝食のときのハイテンションが未だに冷めてないと見えて、一人だけステータスに興奮していた。
「でも私はあんまり出したくないんだけど。」
一方の有沙はなぜか消極的だった。
「ご安心ください。他の方には見えませんが、『鑑定』のスキルを持っている私には見えるんですよ。」
「そうなのね!」
正弘はもちろんステータスを隠蔽している。神村のステータスをあらかじめ鑑定してから似た様な数値に変えているのだ。
「カミムラ様のステータスには固有スキル以外にも能力がありますね?固有スキルは魔法や技術の素質、能力は努力することでできるようになったこと、といった感じです。
例えば、カミムラ様は『聖剣術』を持っていますが、このスキルを持っていない方はどれだけ努力してもできるようにはなれません。おそらく、能力にあるのは勇者様方が住んでいた世界でやっていたことだと思います。以上の説明でわかりましたか?」
神村が挙手する。クロ―カーは学校の授業のように神村を当てた。
「ということは俺は魔法が使えないってか?」
「そうなりますねぇ。でも『聖剣術』もすごいですよ。質問は以上ですか?」
海里と有沙の方を向くと、ステータスを見ながら頷き二人で話していた。
「注意点ですが、あまり自分のスキルを言いふらさないでください。今日は、午前はグループを分けて説明して午後からこの世界の歴史を話す、という予定で進めていきます。では、カミムラ様はこの赤毛の騎士についていってください。他の皆さまはここにいてくださいね。」
クロ―カーの言う赤毛の騎士が前に出た。護衛だと思っていた騎士はそれなりに偉い人だったのだろう。
「俺はこの国の近衛騎士団副団長のロイルだ。カミムラだったか?俺についてこい。」
「え、俺だけ?正弘は?海里は?ぼっちは嫌なんだけど!」
「カミムラ様の固有スキルは技術系です。他のお三方は魔法系なのですみませんが分かれていただきます。あっ、大丈夫ですよ!教え方はたいそう上手いので。」
神村は最後までブーブー文句を言って残っていたが、結局手を引かれて連れていかれた。
「さて、結構時間を費やしてしまいましたね。ここからは魔法の説明と使い方、見本をやっていきたいと思います。その前に勇者様方のことを何と呼べばいいでしょうか?イシイ様が二人いらっしゃるようで・・・。」
正弘たち三人は顔を見合わせた。
「俺は・・・マサヒロで。海里はミサトでいいか?有沙はアリサでいいよな?」
「「う、うん」」
「わかりました。では、マサヒロ様、ミサト様、アリサ様。あなた方は魔法系の固有スキルを持っているのです。魔法には色々な種類があります。その種類を属性と言って、属性は火・水・風・土・治癒・闇・無の7つあります。」
あれ?俺がこの世界に来たときは風はなかったし、治癒は光だったと思うんだが。
「若干世界の歴史に関わるのですが、風魔法はこの石碑が出来た頃にはまだありませんでした。それが、召喚された勇者様方に風魔法が頻発するようになり、とうとうこの世界の人々にも固有スキルとして現れたために新属性の仲間入りしました。また、治癒魔法は古代では光魔法だったんですが、国が数回滅びたので光魔法を使いこなす人も伝承もなくなりました。そんな中、聖女と呼ばれる女性が滅びた光魔法から治癒魔法を確立し、新属性の仲間入りを果たしたのです。」
一旦話を区切り、クロ―カーは懐から本を三冊取り出した。
「これがあなた方に渡す魔導書です。魔導書とは魔法の技の名前と効果が載っていて、初級・中級・上級に分かれています。また、魔導書を読んだからと言ってすぐに上級が使えるわけではありません。緻密な魔力操作と魔法捜査が必要になってきますから。」
クロ―カーは魔導書を三人に渡した。正弘は風、海里は火、有沙は治癒である。正弘が本を開ける前にクロ―カーは次の説明を始めていく。
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