第8話 帰宅後
結構時間が経ったのに、話が短くてすんません。
正弘の目の前の景色は一瞬にして変わった。
さっきまで言葉を交わしていた龍はおらず、狭い個室の中で正弘は便器に座っていた。部屋の外からは有沙たちの声が聞こえる。
「おーい、まさくんっ!どうしたの!?入るよ!」
問答無用で鍵が開けられ、勇者とクローカーの護衛の騎士が何人か入り込んでくる。
「あれ?いない・・・。なんで?もしかして、誘拐!?」
余程心配していたんだろうか。話がヤバい方向に向かってる。
慌てて俺はズボンのチャックがしまっていることを確認してから、トイレのかぎを開けた。
「みんな集まってどうしたんだ?緊急事態か?」
突如トイレから出てきた俺に、その場にいた全員が目を丸くして一瞬硬直した。
「トイレだったの?いくら呼んでも返事しないから死んだのかと」
海里が笑いながらそう言った。
「心配したの。ここは、知らない場所だし、何が起こるか予想もつかないから。」
有沙は海里と真反対で、本当に心配そうな顔をしながら言っていた。
心配そうな有沙に笑いかけると、俺は全員に向き直った。
「そろそろお腹減ったしご飯、食べないか?」
空気が読めないとはこういうことを指すのだろう。俺はそのあと海里や有沙に散々に叱られた。クローカーとその護衛の騎士らしき男たちはそんな彼女たちを見て、そうそうに部屋を出ていってしまった。
「私これ食べる!」
「じゃあ私も!」
「正弘、どうする?」
「俺はこれにしようかな…」
宿舎備え付けの食堂のような部屋の入り口。
メニューを見て盛り上がる女子二人組の後ろで正弘と神村は静かに相談していた。メニューは基本は昔のタグリアとそう変わらないものの、この宿舎は外から来た人がよく使うからなのか、現世の料理に似たものが多かった。
4人それぞれ食べたい物を選ぶと、端の席に4人向かい合わせで座った。
誰からともなく言った「いただきます」で始まった食事の場は、学校の食堂のように和やかだった。
「じゃあまた明日ね!」
部屋の前でバラバラに別れると自分の部屋に入る。明かりに浮かび上がった部屋は出る前となんら変わりはなかった。
部屋を横断し、ベッドに寝転ぶ。天井を作る木目を眺めているうちに彼は眠りの世界に入り込んでいった。
「”神になる”」の方ですが、もうしばらくのつもりです。
不定期投稿にしたのは自分ですが、まさか2ヶ月もかかるとは・・・。めっちゃ遅筆なことに気付かされました。