第4話 地下室
3日ほど遅れてしまってすいません・・・。最近忙しいもので・・・。(←言い訳)
暖かい桜の季節ももうすぐ暑い梅雨の季節に変わっていきますね。これからもよろしくお願いします。
ふと思い出したあの日々の一幕がまるで昨日のことのように脳裏に蘇った。
人知れず、俺は幸せそうに佇む二人の墓に語りかけた。
「カナティア、リク。」
二人の墓の前で膝をつく。自分の墓参りを自分がするというのはなんとも不思議な事だが、英雄として生きた時の身体はここに眠っている。
俺は二人の墓の横に置いてあったろうそくに火をつける。
「『黒炎・極小』」
火と言っても魔法的にこれしか使えないし、流石に数珠はないが、手を合わせて心の中で言葉を紡ぐ。
(カナティア、またこの世界に帰ってきたよ。理由はわからないけど多分また大変なことが起きてるんだと思う。でも、俺とお前が暮らしたこの森とこの世界は絶対守ってみせる。もし・・・また会えたら、たくさん思い出話ができたらいいな)
正弘は念じ終わってもまだ手を合わせて目をつむっていた。
数分の後、意を決したように立ち上がり、墓に背を向け花畑をかき分けるようにして小屋の入り口にたどり着いた。
立て付けが悪そうで悪くなかった扉を開けて中に入る。誰も手を加えていない、住んでいたときのままの光景が、目に飛び込んでくる。
「確か地下室にアイテムが置いてあったはず・・・。どこだろう・・・?」
若干きしむ床板の音すら懐かしみながら部屋の中を探し回る。
やがて部屋の端に作られた地下室への扉を開けると、ひんやりとした地下室へ降りていった。消えていた灯りを魔法でつけると、殺風景ながらもどこか温かみのある部屋が浮かび上がり、棚に大量に置かれたアイテムは何も変わらずに並んでいた。
「懐かしいなぁ。よくここに引きこもってはカナティアに怒られてた…。」
また過去が脳裏に蘇り、長々と思い出に浸りそうになるも、あまり時間がないことを思い出した彼は片っ端からアイテムを自らのアイテムボックスに入れていった。
棚の上が空になったところで、手を止め部屋をぐるっと見回した。この部屋を作ったときのような、今までアイテムで隠されていた丸裸の地面が姿を現している。
感慨深い気持ちにまた少し浸ってしまった俺は、ランプのように点いていた明かりを息で強く吹き消し、部屋から出て階段を上がった。
家族で囲んだ食卓をチラと見えて妻や息子の面影がぼんやりと見えてくる。温かい気持ちになりながら、正弘は小屋の奥へ進んでいく。
外から見るよりも明らかに広い小屋の中を歩き、最奥に着いた。扉を開けると、そこには目当てのものが祀られていた。
俺が昔作った座布団の上に鎮座してあるのは質素だが頑丈な造りをした箱だった。俺はその箱を開けて中に入っていたアイテムを空間魔法で収納庫、つまり、アイテムボックスに入れた。
これで小屋での役目は終わった。
俺は小屋を出ると、もう一度墓の前へ行き、少し手を合わせてから、この地の結界を強めにかけ直していく。
作業が終わった俺は、昔龍を従えた場所を思い浮かべた。若干うろ覚えだが、多少転移する場所がずれるだけで問題はないだろう。俺はそう思って転移を発動した。
「『転移・神竜部屋』」
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