第2話 補足説明からの・・・・・・
「今、この世界の大半が近々現れると言われている狂神の手勢によって脅威に晒されています。
神のお告げによると狂神は半年後に出現し、私達を滅ぼそうと侵攻してくるようです。この世界に危険が迫っているのです。今までにも主に魔物の暴走で村が4つも滅ぼされているのです。
狂神が現れると言われている半年後まで、勇者様方にはこの森に併設されている学校に入学してもらいます。ここまでで何か質問はございますか?」
説明の途中で海里が何か呟いていたが、この世界の説明は一通り終わったようだ。
案の定、海里が律儀に挙手する。が、当てられる前に口を開いた。
「半年もここにいなくちゃいけないの?早く家に帰りたいんだけど・・・!」
「お母さん・・・」
隣でボソッと泣きかけているような表情で有沙がつぶやいた。
「半年前に皆さんをお呼びしたのはみなさんを無事に元の世界に返すためです。」
「どういうことだ?」
クローカーの言葉を若干遮るように神村が声を発する。彼を横目でみたクローカーは話を続けた。
「確かに他の世界から召喚される勇者は強い方々がほとんどです。ですが、この世界と元の世界は必ずしも同じとは限りません。この世界に召喚されてすぐにこの世界の危機に対応する最前線に立つのでは十分な対策ができません。」
(俺が呼び出されたときは大体3年位修行の時間があったと思うけど、あれはなぜだったんだろうか・・・)
「今回、奇跡的にも神のお告げによって半年後にこの世が危機に陥ることが判明しました。ですので、勇者の方々にはその半年間、この世界に慣れていただき十分な力を持って危機に対応していただきたく存じます。」
丁寧な言葉で締められたものの、要するに半年間はこの世界に足止めであるという事実は変わらず彼らの心に突き刺さった。
「もしこのまま質問等がないのであれば半年間皆さんが過ごしていただく宿舎へとご案内させていただきますが、いかがですか?」
誰も一言も発さないのをみてクローカーは彼らに背を向けた。
「こちらになります。」
勝手に話を終わらせて歩き始めた。少し上から目線の宮廷魔法師のあとを彼らは仕方なく追った。
「こちらの4部屋に泊まっていただきます。必要なものは揃ってはおりますが、もし個人的に必要なものがございましたら私までお知らせください。私は下の入り口付近におります。具体的な学習の計画などはまた夜にご案内させていただきます。」
軽く一礼をして去った彼のあとには4人が取り残された。
「どうする?誰がどこの部屋行く?」
4人分の鍵を預けられた正弘が沈黙を破る。
「俺はどこでもいいぞ」
「私も」
「じゃあ適当に割り振る。文句は言わないでくれよ。」
部屋の番号を見ずに他の3人に適当に鍵を渡していく。鍵の番号を見た彼らはその部屋の前まで行くとさっさと部屋に入ってしまった。
正弘も手に残った鍵を持って扉を開けると部屋に入った。
俺は部屋にあったベッドの上に腰掛けながら、前世の記憶を思い出していた。
この森に住んでいた時、奥の方に家を建てていた。結界で隠していたから、誰にもバレていなさそうだし、今のうちに行っておこうと思う。
正弘は部屋の中で自分の記憶の中にあるであろう小屋の位置を思い出そうと努めていた。
数秒も経たないうちに、情景が頭の中に浮かんでくる。その景色を浮かべたまま、正弘は数十年振りにもなる詠唱をボソッと呟いた。
「『転移・小屋』」
目を開けると、周りの壁がベッドがなくなり、代わりに懐かしいような草原が目に入ってくる。目の前にある小屋は若干ボロくなっているものの、作るときに何らかの魔法をかけていたように原型を留めていた。
小屋に近づいていくと、裏にチラッと黒い影が見えた。
気になって少し警戒しながら近づいていくと、俺の記憶にはなかった色とりどりの花畑が広がっていた。
真ん中にあるのは二つの大きい石碑のようなものだ。先程の黒い影はこの石だったのか、と納得した。
正弘は花畑をかきわけながら、石の方へ近づいていく。