第80話 放課後
結論から言おう。
分からない問題が4割ぐらいあった。
この事態は非常に危険だ。
それでも高校の知識で無理矢理にでも解いて穴は埋めたが、記述問題は間違いなくと言っていい程ミスが多いだろう。
テスト前にあんな見栄を張らずに少しでも見とけばよかった。そんな後悔が今さら頭の中を駆け巡る。
監督の先生が去った後、緊張から解放された生徒たちは再び騒がしくし出す。
「ねぇ、まさくん、数学どうだった?」
「俺?俺はまあ、いつも通りできたぞ。そんなことより、海里はどうだったんだ?」
「私はね、やっぱり直前に見たおかげかな。結構わかった!次は・・・英語だね。さぁてと!単語帳を持ってこようっと!」
余程よかったのか、鼻歌を奏でながら後ろのロッカーまで歩いて行った。俺は少し呆然とそれを見ていたが、すぐに我に返って、先程のような間違いは犯さぬよう海里の後を追った。
「起立!!礼!!「「「「さよなら~~!」」」」」
「はい、さよなら!」
鞄を背負ったクラスメートは礼をした瞬間に一目散にクラスから出ていく。
「ねぇねぇ大志、英語、どうだった?」
テスト終わりで帰っていく生徒たちが多い学校前の道路を4人で歩いていた。
「俺か?まあ、いつも通りだから。大体8割ってところかな。」
「大志は英語ができるんだよねぇ。いつも通りで8割って結構すごいことなのに!」
海里の発言で有沙と正弘は思わず顔を見合わせた。言った本人はなんで場が静かになったのかわからず、周りを見渡した。
「えっと、どうしたの?」
「あ、いや、海里って神村呼ぶとき下の名前だったっけって思って。」
「あれ、名字呼びだったっけ。」
「海里ちゃん、どうしたの?大丈夫?」
「う、うん、大丈夫、のはず。というか私が神村を下の名前で呼んだからって凍ります?」
慌てたように神村を名字呼びに戻した海里。正弘はイマイチ事情が読み込めない振りをして質問を重ねる。
「いや、海里さ、前は神村のことすごい気持ち悪がってたから急にどうしたのかなって思って。」
「そこまで気持ち悪がってたわけじゃないけど。」
「そうだっけ、有沙覚えてる?」
「ううん。私がみんなに合流したのは神村くんと海里の出会いの後だから。」
「で、出会いって!そんなんじゃないよ。」
「大げさだって!」
有沙の何気ない発言に過剰に反応する海里と神村。
「バレバレだな。」
「まぁ、多分あの二人は告白シーンに私達がいた事気付いてないね。」
「あいつらの反応見てると面白いし、しばらくはこのまま気付いてないフリを装うか。」
「だね。」
海里・神村ペアから離れて軽く会話をすると、有沙と正弘は再び、近づいた。
「ねぇ、このあとどうする?」
「その話、さっきもしなかったか?」
「気の所為、気の所為!どこ行くー?」
「カラオケとか?」
「まぁ、それが定番だな」
正弘の提案に、神村が乗り、海里は当然ながら賛同し、有沙は正弘が強引に抱き込んでカラオケ行きが決定した。有沙はしぶしぶといった形だったが、正弘が耳元に何かを囁いた瞬間、彼女は目を輝かせて行くと言い出した。
取り残された二人は、正弘が囁いた悪魔のような言葉に少し引いていた。