第75話 武道部・新部長誕生!
隼人と架純は人混みをかき分けると正弘の元に近づいた。
「これからも改めてよろしく!頼んだよ、部長さん!」
「えー、重そうだなー。なんてな、俺からもよろしく。」
「正弘君、頑張ってね。さ、隼人私達も帰ろっ。」
「ああ。じゃあな、正弘。」
「いや、ちょっと待てお前ら。武道部にも呼ばれてなかったか?」
「あ・・・。忘れてた・・・。行かないと!」
「俺が言わなかったら全く気づかなかったよな。」
「なんか言った?」
「・・・なんもねぇよ」
三人で連れ立って武道部室までの道のりを急ぐ。
武道部も今日、新部長を決めるらしく、早く来るように言われていたのだ。
「これ絶対先生に怒られるやつじゃんー、やだなぁ・・・。」
「異世界部が長引いたって言っておけば大丈夫だ。多分・・・。」
「まぁ三人共いるしね。」
「そうだな。あ、着いた。失礼しまーす」
「「失礼します」」
武道場の入り口で一礼をしてから入る。
目を向けたそこには武道部の部員がほぼ全員集まっており、顧問もいた。部長がここでもやはり前に立っており、それ以外の者は正座で座っている。
部長が全員そろったことを確認し、喋りだした。
「よし、全員そろったな。今日の要件は前の稽古でも知らせた通り、新しい部長を決めようと思っている。だから今日の稽古はなしだ。」
一旦言葉を区切り顧問の方を向いてから口を開く。
「では、発表する。俺と中3が決めた新部長は・・・八島隼人だ!拍手!」
部長の声とともに拍手が鳴りだす。同時に隼人が少し喜びが入ったような顔で返事をした。
「俺が引退した後の1年間、新部長としてこの部活の先頭に立ち、みんなを引っ張って稽古に励んでくれ。俺からは以上だ。先生、他に何かありますか?」
部員の全てが顧問の方に身体を向ける。
「ああ。まず、剣道の稽古を今までよりちょっと増やして1週間に2回にする。その代わり火曜の柔道がなくなった。コーチが入院したと聞いている。」
言葉を区切って一旦息を吸う。
「次に、12月23日に中2、3の代表戦選手でチームを組んで大会に出てもらう。今までとこれからの稽古に時々試合稽古を入れてチームのメンバーを決めるつもりだ。女子は個人戦だけで出てもらう。該当する中2,3は新中2、3とは別だから中1以外から選手を選ぶということだ。他に質問があるやつはあとで俺に聞きに来い。以上だ。解散。」
そう言って顧問は立ち上がり、武道場から出て職員室に帰っていく。
入口の方で武道場全体にもう一度礼をしたとき、部員全員から「「「オッス!」」」という武道ならではの声が聞こえた。
隼人は正弘と架純に囲まれるようにして立ち上がった。
「これで二人とも部長だね。なんか私だけ何のポストにもついてないから若干居心地が悪いような気もするんだけど・・・。でも、二人とも頑張ってねっ!」
武道部に練習場所から出て、3人は自分の行くべき場所に散った。
暇を感じている正弘には「行くべき場所」はないのだが、ふと何かを思いついたのか彼は再び異世界部の部室のドアを叩いた。