第74話 異世界部・継承式
大分遅くなりましてすいません。場面変わりました。
文化祭が終わり、学校にもとの喧騒が戻った10月下旬のある日。
放課後に異世界部の部室では部員全員が徴収されていた。
その場には長屋はもちろんだが、前部長である羽山も来ていた。高校ってそんなに暇なのか、それとも羽山が暇なだけなのか。前世では高校に行けていないのでそういうのはわからないが、羽山がここにいることに一ミリも違和感を感じない。
今から何を行うのか、と疑問に思っていたら長屋が用件を言った。
「文化祭の劇も終わったことだしそろそろ次の学年に譲る時期が来たわ。羽山はこういう継承式、みたいなことはやらなかったけど私はやっておきたいと思ってる。そのほうが引き継いだ、って感じがするじゃない?」
そう言うと長屋は一呼吸置いた。
「そういうことだから、今の時点で新しい部長を決めて、来年度新しい部長の元でスタートできるようにしてほしいの。」
「今から立候補でもするのか?」
長屋の発言に羽山が口を挟む。
彼を顔を動かさずに目線だけを合わせてなにかをそっと告げる。
「新部長に関しては例年通り1代前の部長の私が決めておいたわ。で、もし今の中2以下の生徒の中で反対する人がいたらもう一度みんなで考え直す形を取るわ。だからもし反対意見があるなら遠慮なく言ってちょうだい。」
そして再び長屋の口が開いたときが次の部長が決まる瞬間だ。
正弘の胸の鼓動はなぜか早まった。
「私の考えでは次の部長は正弘くんがいいと思ったわ。どうかしら。」
教室中の目線が自分に集まる。
半分予想し、そしてもう半分はないと思っていたため彼は驚いた。
(まさか本当に自分を指名してくるとは思わなかった。)
そもそもあの小部屋に大量にあった資料やら研究結果やらを自分に託された時点である程度嫌な予感はしていた、というのが彼の気持ちだった。
「反対意見がないようならこのまま彼で決定でいいかしら。」
「異議なーし!」
「いいんじゃねー?」
「わーー。」
部員も異議はないようだ。拍手が正弘に送られ、正弘が前に出て長屋の隣に立った。
「じゃあ、新部長就任として何か一言よろしく。」
「えー、まさか選ばれると思ってなかったので台詞を用意してませんでしたが、えーと、楽しく活動できるように俺が前に立って引っ張っていきますので共に頑張りましょう!」
言い切った正弘に盛大な拍手が送られる。ひとしきり拍手が止んだところで長屋が継承式の締めを行おうとする。
「新しい部長も決まったけどまだ文化祭終わったばかりで残念だけど私たちはまだまだいるからそのつもりでよろしくね。」
わざとらしく残念がる部員に長屋が「辞めさせるわよ?」と脅しをかけ、部室は和やかな雰囲気に包まれた。
「じゃあ、解散ね。このまま残ってもいいし別の場所に行ってもいいわ。」
その言葉を皮切りに部員たちは各々に行動を始めた。