第68話 海里&神村ペア ①
一方、正弘が劇をしている頃、海里と神村はどこを回るかを決めあぐねていた。
正弘と有沙がいない今二人の間には気まずい沈黙が続いていた。
その沈黙を破ろうと声を上げるが、タイミングが重なり、ふたりとも口をつぐんでしまう。しびれを切らしたかのように海里が口を開く。反対に、神村は口を閉じたままにする。
「とりあえず、どこに行くの?」
「どこにしようか。」
神村はパンフレットを取り出すと、ペラペラとめくった。すると、めくられていたページの間に海里が手を挟んだ。
「ここ・・・。」
ページを戻すと、校舎3階のマップだった。海里の指すところを見ると、そこはどこかのクラスがやっている小さな喫茶店のようなものだった。
「ここでいいのか?」
「別にいい」
ぶっきらぼうに答える海里。神村は頷くと歩き出した。
海里も正弘や有沙がいるときのようなテンションはなく、神村もそんな海里に声をかけようとしなかった。
二人の間には再び沈黙が訪れていた。
通り過ぎるカップルや夫婦が和気藹々と話す中、二人は口をつぐみ静かな様だったが、そうこうするうちに目的の場所へ到着した。
入り口でやたらと営業スマイルを振りまく生徒に中に案内され、適当な席につかされる。
「なににしますかー?」
「んー、紅茶?」
「そだね。」
「あとクッキー。」
「わかりましたー!」
再び静寂が訪れる。
「正弘たちがいるときって結構盛り上がってたけど俺ら二人って実はあまり話したことないよな。」
「そうね。」
(全然盛り上がらねー・・・)
「お待たせしましたー!」
静寂を破るように別の生徒がクッキーと紅茶を置く。
「よし!自己紹介から始めるか!」
突然神村が出した声に周りは驚いて振り向き・・・はせず、雑音にかき消された。
「え、何、今さら?」
その疑問をスルーして神村は自分のプロフィールを言っていく。
「俺は神村大志だ。かみちゃん♡と気易く呼んでくれ!」
「だから気持ち悪いって前言わなかった?」
「これを言わないと、気がすまないんだよ。」
「その考え方も、ほんっと気持ち悪い。」
「俺のこと全否定するのやめてくれる?!」
「いいじゃん。楽しいもん。」
そう言った海里の顔には笑顔が戻り、神村もつられて笑ったことで、重苦しい雰囲気は一気に霧散した。
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