第59話 体育祭③
色々、行事が重なったりして更新を長らく待たせてしまい、すいませんでした。
午前中ただぼんやりと競技を眺めていた彼らは昼食の時間になると、なぜかエアコンの効いている教室に戻ってきた。
担任は教室には来ず、どうやら職員室で昼食を取っているらしい。正弘はいつもの通り海里や有沙、神村と向かいあいながら弁当のおかずを口に運んでいく。誰も電気をつけないために薄暗い教室に生徒たちの会話の声が響いている。
一足先にご飯を食べ終えた正弘は教室の喧騒から抜け出して、廊下を歩いていた。廊下の窓からは青く晴れた空が覗いている。
「午後も暇だなぁ。1日中眺めて、出るのが最後の2種目っていうのはどうなんだろ・・・。」
「まさくん、独り言が大きいよ。」
「ん?あ、有沙か。もう食べ終わったのか。」
「うん。もともと私食べるの早い方だから。」
二人並んであてもなく廊下を歩いていると、同じ学年の他のクラスの男子生徒がすれ違いざまに嫉妬のこもった目でこちらをみてきた。正弘は特に気を止めずにそのまま歩き続ける。
「ねえ、まさくん、どこまでいくの?」
有沙の声にふと顔を上げればいつの間にか廊下の反対側にまで来ていた。廊下の端に作られた窓からグラウンドを見下ろす。ガランとしたグラウンドに体育祭委員らしき人影が動いているのが見えた。
「戻るか。」
「うん。」
一足先に回れ右した有沙の髪の毛からふわりといい匂いが漂った。
午後、彼らは再びテントの下で競技を眺めていた。
午後の一つ目の種目、ほぼネタと化しているクラブ対抗リレーだった。各部が自分のクラブを表すものをバトンにひたすら走るという唯一の遊び種目だ。
本気で走りに行く陸上部の横に大きなテントを抱えたワンゲル部、そして碁盤を抱えた囲碁部が並んでいる光景は観客である保護者の笑いを誘う。
「それでは行きます。クラブ対抗リレー、第一組、よーい、ドン!」
号砲とともに、一斉に走り出す。先頭を切って走る陸上部はあっという間にバトンパスのエリアに突入する。だがその後ろではワンゲル部の大きなテントが風に煽られ、部員が翻弄されていた。毎年似た様なものだった。
「さて、行きましょっか。」
すでに日も傾き始めているころ、正弘たちはようやく立ち上がった。最後の二種目、正弘の出る種目のコールが始まったのだった。
このグラウンドには2つの門が設置されている。区別するために片方を青、片方を緑に塗ってあるが、区別のため、「入場門」や「退場門」ではなく「青門」や「緑門」と呼んでいた。したがって招集場所もその呼び名で呼ばれるのだった。
「2年1組石井正弘!」
「あ、はーい!」
少し寄り道をしていたせいで、招集時間にわずか遅れ、彼は少し強めに注意を受けた。
「2分遅れたぐらいであんなに怒らなくてもいいじゃんかよ。」
「全体的に少し押してるから先生たちもピリピリしてんだろ。」
「なるほど、って神村?」
「どうした?」
「あ、いや、まさかお前がこの種目だとは思ってなかったから。」
「お前競技のエントリーのとき寝てたのか?一緒に手を上げただろうが。」
「え、あー、おー!忘れてたー!そうだったー!」
「わかってんのか分かってないのか。」
怪しげに首をかしげる神村を無理やり納得させると、彼は靴紐を結び直す。
「今度こそは勝つからな。」
「さすがに負けられねえか。そういえば去年お前『負けたがいい試合ができてよかった』とかイキったセリフ吐いてたの覚えてるか?」
「そんなことあったか?」
「ああ、ゴールした後に二人で倒れ込んで、お前の方が先に立ち上がって俺に握手求めながらイキリゼリフ吐いてたぞ。」
「記憶にねぇな。」
「ないほうがいいぞ、まじであのときはイタかったから。」
「そんなにか?」
「ああ・・・。」
そう言うと神村は思い出したのか吹き出した。
正弘はあまりよく覚えていないものの恥ずかしさから神村の頭をはたいた。神村は怒ったが正弘の顔を見てまた吹き出した。
結局走る直前まで神村は思い出し笑いを続けていた。恐らく他の要因での笑いも入ってるとは思うが。
次話をいつ投稿するか、私にもわかりません。なるべく早めにするつもりですが、大分遅くなると思います。ご了承ください。また、「”神になる”・・・」の方に関してはもう少しで出来上がるかな、と思っています。