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神聖の転生者  作者: 薄明
第3躍 ~中学生時代~
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第58話 体育祭②

時が経つのは早いもので気づけば、体育祭前日になっていた。



明日の注意事項、持ち物確認を終礼で確認し、さようならを担任に言ったあと、俺は武道部に顔を出してみた。



「お、石井。お前もよく来たな。」


新部長が声をかけてきた。少し声が弾んでいる風に聞こえた。


何か嬉しいことでもあったのだろうか、と疑問に思いながら一応聞く。



「何かあったんですか?」

「おう、めちゃくちゃある。武道部の中2,中3はな、体育祭の準備と後片付けをある程度担わされているんだ。今日はそのことを知ってか来た者が少なくてな。俺と石田を含めて8人しかいねぇんだわ。部員全員で20人近くいるのに対して。っていうことで今日は働いてもらうぞ。」



(ミスったぁぁぁ!来なければよかった。帰らせてもらおうかな、何か理由つけて。)



「やっぱり、病院あるので帰りま「だめだ、帰らせねぇぞ。手伝ってもらう、いや働いてもらおうか!」わ、わかりました。」

つい部長の勢いに圧されて頷いてしまった。



「そういえば、滝村たちはいるんですか?」

「あいつらめ・・・・」

どうやら帰ったらしい。



ポケットから取りだしたハンカチの端を歯で咥えて引っ張っている。歯がぎしぎし音を立てていた。ちょっと画が怖い。



「そ、そうですか。じゃあ、まず何からやればいいんですか?」

「おお!やってくれるのか!さすが次期部長候補の石田だ!そうだな、まずは・・・」



何でこう、武道部の部長は変な人が多いのだろう。去年は部室で何か祈ってたし。


来年は俺達が中3になるのか。俺が部長になったら後輩から変人と言われる・・・それはいやだなあ。候補から外してもらうことを願うばかりだ。



























武道部一行は入場門や退場門など、小道具が所々に置かれている運動場へやってきた。



「君たち、武道部だよね。じゃあ、ここのこれとあそこのそれをやって・・・」



地図を開きながら、どこに何を置けばいいか、などを武道部に説明していく見たことがない生徒。胸にはキラリと光るバッジが見え、名札には「体育祭実行委員長」と書かれている。また、腕には「生徒会」と書かれた腕章もある。この先輩たぶんは色々兼任しているのだろう。



武道部の面々は言われたとおりに事を進めていく。そしてすべてが終わる頃にはいつもクラブが終わっている時間とあまり大差はなかった。夜も暗いのですぐに解散となった。



明日の体育祭のことを考えながら、正弘は帰路につく。


かけっこがまたあることを思い出して河川敷を少しの距離だけ走った。自分の家に近い住宅街からイチャイチャしながら歩いてくる自分と同じぐらいの背のカップルを目の端に納めて、正弘は家まで走り続けた。



























体育祭当日。天気は快晴。場所は運動場。



そこには去年と同じような数の〜大半が生徒の家族である〜客が押し寄せていた。初夏の太陽は容赦なく運動場を照らし、並ばされる生徒らの目も大半が眩しさのために閉じかかっていた。



開会の挨拶のために朝礼台に上がった校長のピカピカだった頭に笑いが起きたこと以外は予行とは何も変わりのない本番だった。校長が下がるのと入れ替わりにマイクの前に立ったのは、昨日見た体育祭委員長で、彼はマイクの前で手早く注意事項を述べるとさっさと朝礼台を降りていった。


あとから聞いた話だと、どうやら彼は上から物を言うのが嫌いだという。ならばなぜ体育祭委員長なんかやってるんだろうと、正弘は首をかしげた。




「ではただいまから一つ目の競技、棒引きを行います。選手入場!」



司会の声で種目に出場する生徒が誘導係について出て来る。棒に対して直角に並びあった両チームは睨み合っていた。



ピストルの音と同時に激闘が始まる。たった一本の棒に人がたかり、互いに引き合う。怪我する可能性が高い競技でもある。



そんな激闘を高みの見物と言った風で眺める正弘の両横は、なぜか有紗と海里によって占められていた。



「あの、暑いんですけど。」

「そう?私はそれほどだよ?」



「なあ、神村。助けてくれ。」

「リア充の嘆きなんか知らねぇよ。」

「お前だって海里と仲良く話してただろ。」

「俺は1対1だよ。お前なんか1対2だろ。」



「逆に疲れるんだよ。というか一人はただの家族だよ。」

「元は別なんだろ?」

「まあそうなんだが。ってなんでお前その話、知ってんだ?」

「この前自分で言ってただろ。忘れたのか?」

「日々いろんなことがあるせいで忘れるのが早くて。」

「お前は老人か!」



神村のツッコミに呼応するようにピストルが鳴る。一気に応援の声が高まり、彼は思わず耳を塞いだ。



乾燥した砂が彼らの足によって巻き上げられる。砂埃を眺めながら、正弘は去年の体育祭をのんびりと回想していた。


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