第57話 体育祭①
その週から体育の時間で軽く体育祭の用意をし始めた。と言っても綱引きの予行や整列、行進をひたすら行うだけのものである。
ただ去年と同じことを繰り返していくのみ。
唯一の救いだったのは小学校のときみたいな見世物の運動会ではなかったということかもしれない。
「小学生のときは、ラジオ体操ひとつとっても見世物レベルだったよな。指先まで伸ばさないときれいじゃない、とか言い出しちゃって。」
「あー、楠木先生ね。でもあの先生はいい先生じゃなかった?」
「まあ確かにいい先生だったけどね。途中で入院してたけど。」
「怪我だっけ?脱臼?」
「うん。ソフトボールのやりすぎだって。」
「あーね。あの先生ソフトボールの監督やってるんだったっけ。」
「こら!石井!休憩時間終わってるぞ!早く戻れ!」
「はーい。そういえば今年はお父さんじゃないんだね。」
「うん。お父さん確かひとつ上を教えていた気がする・・。」
「飛ばされたのかな〜。」
「有沙ちゃんが言ってたけどお父さん、陸上部の顧問始めたんだって。」
「あの人が?ちょっと不安だな・・・・。」
正弘は心の中で、あとで有沙に父親の評判を聞いてみようと思った。
ちなみに有沙からの評判はそこそこいいものだった。
喋っている間にも刻一刻と時間は経過しており、気づいたら校庭にはチャイムの音がうっすら響いていた。
「はい、足踏み〜、やめ!「1,2!」・・・うん。じゃあ、これからのこの体育の時間は体育祭の練習とかをします、ということで、級長、号令。」
「休め、気をつけ、礼!「「「あざっしたーー」」」」
先程まで一箇所にかたまっていた俺達は級長の号令と同時に適当に返事をして散り散りになっていった。
俺は前を歩いていた神村の後ろまで来ると、彼の肩を叩きながら聞く。
「お前は体育祭、去年と同じ種目だったっけか?」
「いんや、かけっこ?はもうめんどいから障害物競走だけにした。正弘はかけっことったのか?」
「ああ、前と同じだ。」
「そうか、がんばれーー。っていうかお前去年障害物競走サボったよな?かけっこで足、グネんなよ。クラス中で応援しておいてやるから。」
「なんだよ、その恥ずいの。まあ、いいや。お互い障害物頑張ろうぜ。」
「お!?また何か賭けるか??」
「それはもう勘弁願いたい。」
「それな。」
その日によって話題は違うが体育のあとも他の授業後でもオチも笑いもない話をしているだけで特に他には何もない日が続いた。
「”神になる”を選んだらノルマを課されました」(長いから略して「神なる」)の方はもう少し待ってください、すいません