表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神聖の転生者  作者: 薄明
第3躍 ~中学生時代~
140/231

第55話 始業式

すいません、遅くなりました。1話だけ投稿します。

(そういえば、前世のときの中2ってなにもなかったな。)




始業式の日、彼は制服に身を包みながら、ふと思った。




「はあああ、今日から”先輩”かよ。異世界部、誰か入ってくれるかな〜。」

「まさくん!起きてるー?」

「起きてるよー!」

階下からの海里の声に大声で返事を返すと、彼はカバンを持ち、部屋を出る。


明るい窓から入ってきた日光に目を細めながら、階段を降りるといい匂いのするリビングに入っていった。




















「またまさくんと同じクラスだよー!あ、でも去年は2組だったけど今年は1組だ。」

「あ、本当だ。というか荒山と神山も同じクラスかよ。」



「やったー!また同じだね!」

「あれ?そういえばなんで海里のほうが後ろなの・・?」



「わかってると思うけど私の名前は『かいり』0じゃなくて『みさと』ね?」

「あ、間違えた。ほんと、海里って一瞬見ただけだと「かいり」って呼んじゃうんだもん。」

「うん、みんなそれ言ってる。で、みんな間違える。」

そう言うと、海里は少し落ち込んだような顔をした。



登校してきた同じ学年の生徒たちが何事か、とこちらを盗み見しながら通り過ぎてゆく。



「とりあえず教室行こうぜ。ここじゃ目立つ。」

そうなだめると、彼らは海里を教室に連れて行った。神山が間違えて中1のフロアに行こうとしてたのには笑ったが。






「またここか〜。景色変わらねえな〜。」

「私もまた2番だよ。今年は一番になるかなって身構えていたのに。」

「私なんかまたまさくんの後ろだよ?多分絶対授業中に話して怒られるやつだよ。」

「確かに去年なんども怒られてたよな〜。」

「何よ、他人事みたいに!」



「おいおい、俺のことを忘れないでくれよ。」

「ああ、神村。忘れてた。」

「俺そんなに気配薄いか?」



「なんか最近おとなしいから。前と変わったよな。前なんか自分のことをか・・・」

「やめてくれーー!その話は掘り返さないでくれ!思い出したくない!」

「あ、戻った。やっぱりこの話の効果は絶大だな。」

「まさくんの目、怖いよ〜?なにか企んでるでしょ?」

「いや、こんなもの目の前にして企まないやついるか?」

「怖い〜!」



「ねえ、石井くん、春休みの間に何が起きたの?」

「特になにもなかったよ。多分。」

正弘の、ほんの一ヶ月前と違う振る舞いに、海里と有沙はつい耳元でそっと会話した。












「みなさん、こんにちは、去年持ってた人もいるから知ってる人もいるかな。数学担当の綾瀬です。よろしくな。」

今年担任の彼は、物腰の柔らかい、平和そうな人だった。残念ながら去年は彼の担当ではなかったため、関わることはなかったが学年団の行事などで度々出てくるうちに、いつしか中年の背の高い男の名前を正弘は覚えていた。つまり、正弘は彼を知っていた。



「とりあえず10時から始業式を始めます。それまではHRということで、いろいろと渡さなきゃいけないのがあるので・・・あ、自己紹介・・・さすがにいらない?」



そう言うと彼は教壇の近くにいた女子生徒に尋ねた。彼女は少し首をひねると、隣の友人らしき人に助言を求めていた。



「いらないんじゃないですか?去年と同じ人もいますし。」

「そうですね・・・まあ各個人で自己紹介はしあってください。あー。えっと、これが一番最初かな。」

彼は机の中からプリントの束を出すと配り始めた。





























30分後、彼らは体育館で始業式に臨んでいた。


クラスごとに席の塊がつくられ、それが横に6列並ぶ構図。隣のブロックには新しい制服に身を包んだ1年生が緊張の、しかし少し期待の混じった視線で壇上の校長を見ていた。壇上の校長は去年に比べてさらに髪の毛が後退したように見えた。ついでにうっすら後光が見えたような気がした。




「23分。」

「そうか、普通だな。」



「それにしても長いよ。ほんと。中1がかわいそう。」

「どうせ入学式でも同じくらい喋ったんだろ。」

「じゃあ昨日と今日で約50分もあの話聞かされてるってことか。」



「まさくん、海里ちゃん、そろそろだまりなよ。」

「ああ、ありがとう、有沙。」

去年の2学期の始業式。


あまりに話が長いために海里が行ったのは、校長が話している時間を計る、というものだった。



それ以来、彼女は毎回時間を計測し、正弘にそっと伝えていた。やっていることに特に意味はない。だが、それくらいしかやることがなかった。歴史観がどうとか喋る彼の話にはとんと興味がないのだから。










「明日は宿題考査です。わかってると思いますが。今日はこれで終了ですのでまた明日。さようなら!」



去年の担任と違い、彼は全員が帰るまで教室に居続けた。正弘は、有沙と海里、神村とともに、帰路についた。

その日は異世界部や武道部どころか、陸上部の練習もなかったからだ。





「なぁ、今年の担任、えっと、綾瀬、だっけ?あの人すごい丁寧語じゃなかった?」

「たしかにな。去年の担任とは全然違うな。」



「去年の先生、なんか一人で空回りしてたもんね。」

「若いからだろうな。綾瀬先生は結構年いってるしあんなに元気出ないのかも。」

「それにしても丁寧すぎない?」

「それほどでもないでしょ。中学の教頭だって結構丁寧じゃん?」

「まあ、あの年の人は大体そんな感じなのかもね〜。」



「あ、俺今日こっちから帰るから!じゃあな!」

「おー。じゃあまた明日な!勉強してこいよー!」

「わかってるよ!今度こそお前に勝つからな!」

「俺だって負けねえよ!頑張れよーー!」



「あいつ、塾だっけ?」

「うん。確か今日からこの曜日に塾だったような?あいつ。」

塾に行くという神村と別れると、3人はまた歩き出した。桜で敷き詰められた道を。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ