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神聖の転生者  作者: 薄明
第3躍 ~中学生時代~
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第54話 辛くはない別れと振り返り

やっと中1が終わりました。このペースでたぶん中2,3といくのだと思っています。次話からは中2です。この章だけ長くなると思いますが、楽しく読んでみてくださったら幸いに思います。

中3は高校受験が終わって卒業旅行へ行っている頃、俺たちは短縮授業を受けたり宅習だったりであっという間に中3が卒業する前日を迎えた。


中3が卒業する、ということは異世界部の部長である羽山と徳井、山谷、他には武道部の部長が卒業するということだ。そのためこの日は学校が休みだったにもかかわらず、部員全員が異世界部の部室に集まることとなった。




俺が部室に着くとそこには俺以外の部員がそろっており、武道部の部長も来ていた。



「さて、正弘君がやってきたところで、俺が異世界部の次期部長を今ここで発表したいと思います!!」

テンションがほぼMAX状態の羽山は俺たちがそこまで盛り上がっていないのを見て1人で拍手をしていた。


まばらに拍手が返ってくる。



それを聞いて側にあった机を両手でドラムの様にたたきながら、ダカダカダカダカ、ダン!!と口で言う。






「長屋沙也加に決定しましたーー!」



部長だけ、いや元部長だけ大盛り上がりの中、だいたい誰が部長になるかを分かっていた俺たちはそんな盛り上がりを見せることもなく、羽山の第2ボタンを早くも誰かがもらうということもなく、送別会はお茶会へと変化を遂げていく。



「それにしても元部長。一人だけテンション高すぎよ。確かに羽山にはお世話になった点もなくはないわ。でもここで騒ぐほどのものでもないわよ。おとなしくしていなさい。でも、お疲れ様でした。」



長屋の強烈な言葉が羽山を刺したとき、羽山は先程よりは静かになっていた。



「まずは俺から一言。この部活にメッセージを残したいと思う。あ、なんなら寄せ集めの色紙とか書いて俺にくれてもいいぞ。」



「あ、すいません、忘れてました。」

冗談じゃなくて、マジで誰も彼も忘れていた。



そして来年からはそれを送ろうと決意を固める異世界部だった。



羽山が気にしていない風に続きを話す。



「俺は明日卒業する。」

「知ってます。」



「いや、頼むから最後まで言わせてくれ。俺は明日卒業する。が、その前にこの異世界部は元は異世界を研究する部活としてやってきた。しかし、今はそんな研究もごく一部でしかも個人個人でしかやっていない。やっているとすれば文化祭前だけだ。そこで来年からはもっと発展していってほしいと思う。ここで培った研究が将来どこかで役に立つときがあるかもしれない。そんな未来を意識して研究していってほしいと思っている。長くなったが、まあ、なんだ・・・、とりあえず、頑張れ。以上だ。」



真ん中の内容は何か凄かったのに最後ので台無しである。


(そもそもこの部活の元の意義って何だったんだ?今度お父さんに聞いてみるか。)



大して感動もしないまま話す権利は徳井先輩に移った。



「俺は全然研究せず、個人で異世界を追いかけていた中2病の典型だったから羽山みたいに長ったらしい文章は言えないけど、俺が成人したときにまだこの異世界部があることを願う、な。以上。」



羽山とは対照的に短く締めくくった徳井は正直そんなに喋ったこともないし、羽山のキャラが濃いのもあってあまり引っ掛かってくるような内容じゃなかった。



そのまま山谷先輩に移り、武道部の部長が喋り終わったところで長屋に主導権が移った。ちなみに割愛した二人は徳井と似通ってるか、当たり障りのない挨拶をしていた。



「なんだかんだで台無しな羽山元部長、徳井先輩、山谷先輩、そして武道部の栗谷元部長、今までありがとうございました。機会があれば、またこの部活を見に来てくださると部員一同幸いに思います。本当にありがとうございました。卒業おめでとうございます。」



羽山の頬をきらりと光った粒が落ちていく。彼はその光の粒を別段隠そうともせずに、けれどもそっと涙を流していた。



そんな羽山の隣で、正弘は少し驚いていた。



(武道部の先輩って栗谷って言ったのか・・・時々部室で瞑想している少し不思議な先輩だとは思っていたが、名前は知らなかったな・・・)



形式上の送別会はすぐに幕を閉じ、本当のお茶会が始まった。




後輩に囲まれながらお茶を飲み、お菓子を摘んで談笑する先輩たちの顔は、最高に輝いていた。



「最後の一枚撮ろうぜ!」



武道部の誰かが、言い出して、両部全員で最後に集合写真を撮ることになった。せまい異世

界部の部室にある机を移動させ、なんとかスペースを作ると、そこに全員で並ぶ。



「狭いぞー!」



「押すなよ!」



「私の肩を叩いたの誰ー?」



「じゃあ行くぞーー!」



窓もカーテンも開け放たれた明るい教室に、そんな声が響き渡った。



「はい、チーズ!」



そんな光景を撮った写真がその日、誰もいなくなった教室に立てられたホワイトボードの真ん中に、貼られていた。ありがとうございました!の文字と、みんなのメッセージとともに。



ちなみにその写真の中で羽山はさらっと滝村の横で満面の笑みを浮かべていた。

































































春は別れの季節。


先輩方、年上の方、友人、いろんな人との別れがある。しかし、出会いの季節でもある。見知った過去の1年より初めて見る未来の1年を大切にしていきたいと思う。



別れと出会いは対照的な言葉である、と同時につながっている言葉でもある。



この1年、色々なことがあったが、いい出会いがたくさんあったような気がする。こうやって温かく振り返ることができるのもそのおかげかな、とも思う。



来年もそれなりに良い1年になるように努力しないとなあ。



それが今日、始業式の前日の夜のベッドの上での俺の想いだった。



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