第53話 雨の球技大会、という名のドッチボール大会
題名が長くなりました。小説の中の時間が現在の時間にもうすぐ追いつきそうで、もうすぐ追い越しそうです。今の季節は卒業と入学、いわば別れと出会いが同時に起きる時期です。私も正弘を見習って新年度を頑張りたいと思います。
「それでは、これより中1の球技大会を開始します!」
雨音が響く体育館に、球技大会委員の声が響いた。
結局雨は上がるどころか、当日になってさらに激しさを増し、ひどい場所は大雨警報が発令されるほどだった。だが、学年団はそのまま球技大会を実施することを決めた。
「この学年で最後の学年行事です。あいにくの雨ですが、最後の物語を作るために、頑張っていきましょう!」
「はい!」
前半分しか埋まっていない体育館に、200人の声が響く。やる気に満ち溢れている声で埋め尽くされる。
「では、前半の人たちはまず映画鑑賞、後半の人たちはドッジボールからスタートです。各自、会場に移動してください。9:10からプログラムスタートです。」
「はーい・・。」
「はぁぁぁーーー!」
「はい、アウトー!あと半分だぞー!」
「1組、2組は第一コート、4組、6組の人は第二コートに移動してください!」
「あれ?1組ってもしかして全勝じゃね?」
「お〜!さすが1組!こういうところでしか勝てない!」
「他のところでも勝てるだろー!」
「ねーねー!球技大会終わったら遊びに行かない?」
「いいよ〜カラオケとか行く?」
「試合終了です!」
「さて、行くか!」
「お〜!」
彼らは立ち上がると、そのままコートに入っていった。
ボールが彼らのそばをすり抜けて、壁に激突した。
爆音を立てて壁から跳ね返ったそれは床を転がり、体育館を区切る防球ネットにぶつかり、名の知らない生徒に回収されていった。
ドッジボールを終え、映画も見終わり、(というか寝ていた人が多数だった。)彼らは再び体育館に戻ってきた。
だが後半組の二クラスがまだ熱い戦いを防球ネットの裏で繰り広げていたため、彼らは防球ネットの後ろで試合が終わるのを待っている。
試合終了直前に一人があたり、彼が外野に出ると同時に試合終了の笛がなった。それを合図に、体育館を仕切っていた防球ネットが片付けられ、正弘たちは前に出てきて、並ぶ。
全員が並び終わると、閉会式の司会担当の球技大会委員らしき女子が前に出てきてマイクを握った。
「では、これから閉会式を行います。まずは結果発表から。」
そう言うと、彼女は手元の紙に目を落とした。
「じゃあ6位から行きます。」
「5位から行こうぜ!」
「6位最後で!」
「え、えと、じゃあ5位から行きます。5位は、3組でした!」
彼女の言葉のあとに起こったまばらな拍手。すぐにそれが鳴り止んだのを見て、彼女は先を続けた。
「えっと、2位が同立3クラスで2組、4組、6組でした!で、1位が1組でした!」
2位から続けて1位まで一気に発表すると、学年は5組の方を向いた。
5組の中には発表される前からすでに喜んでいる人もいた。
「なんであいつら喜んでいるんだ?」
「さあ?最下位だったからあえてノリかなにかで喜んでいるんじゃない?」
「不思議な連中だな。」
「6位は、5組でした!」
「よっしゃーーー!」
体育館を、雄叫びと苦笑が占めていく。
屋根を打ち付ける雨音も朝より少し小さくなったように感じられた。
この行事がこのクラスでする最後の協力試合となった。