第50話 文化祭~最終日編~
現実では卒業式シーズンですが、この話は文化祭シーズンです。どうぞお楽しみください。
最終日、正弘は再び舞台の袖にいた。
二日間ある文化祭の出し物で昨日と同じことをするところは少ない。場所が2日連続で取れないというのが大きな要因だ。だが毎年会議室を使う団体はおらず、よって異世界部は昨日と同じ劇を行うというプログラムだった。
「今日は昨日よりもいい劇にするぞ!」
「おー!」
羽山の掛け声に乗って声をかけると、彼らは準備のためにあまり広くはない舞台袖に散らばった。
小道具を順番通りに並べていた正弘に長屋が近づくと、そっと手伝い始めた。
「昨日よりも人、来ると思うわ。」
「そうなんですか?」
「ええ、今日は日曜日だから昨日来れなかった方たちが来るの。多分立ち見の人も多いと思うわ。」
「そんなに異世界部の劇って人気なんですか?」
「時間帯的に他にあまり面白い出し物をやってないのよ。だからみんな来るの。わざとその時間帯にしてるんだけどね。」
そう言って笑った彼女は正弘に鍬を手渡した。
彼はそれを槍の隣に置くと、立ち上がった。
「そろそろ時間ですよね?」
「ええ、私はもう少しあとだけど。」
「ちょっと見てきます。」
「ええ、行ってらっしゃい。」
幕が上がり、その隙間から見えた観客席は長屋の言うとおり、完全に埋まって、立っている人も多くいた。
「じゃあ行ってくる。」
前に出た羽山を拍手が迎えた。正弘は気合を入れると次に出す機械の準備を始めた。
「終わったなぁ。」
「意外と早かった気がするわ。」
「だね〜。」
文化祭の全プログラムが終わった放課後、正弘たちはクラブ棟の上から片付けを眺めていた。
異世界部の劇の片付けを終えた正弘は校舎内を歩いているときに有沙と海里と出会った。
正弘らはあちこち回った結果何もやることがなく、結局有沙の案内でクラブ棟に上がっていたのだ。鉄骨で組まれたクラブ棟からは後片付けをする様々な団体を見下ろせた。
「打ち上げ、どうする?」
「やるんじゃなかった?」
「そうじゃなくてどこでやる?ってこと。」
「あー、駅前のドーナツ屋さんでよくない?まさくんは?」
「そうだな・・・・ドーナツ屋で良くないか?」
そう言って彼はまわりを見渡した。
グラウンドには廃材の山ができていて、なおもその山は成長し続けていた。
帰り道、久しぶりに彼らは3人で帰路についていた。両方を女子で挟まれた正弘をクラスの男子たちが冷やかしながら通り過ぎていく。
はじめは言い返していた正弘も次第に面倒くさくなり、いつの間にか無視をしていた。隼人と架澄は正弘に一言告げると先に仲睦まじく帰っていった。
「文化祭前って大体帰り道は俺ひとりだったからこのメンツって久しぶりだな。」
「聞いたよ、まさくん。夏休みの間私のクラブが休みの時、有沙と一緒に行ってたんだって?」
「ああ、なにか悪いか?」
「なんか私が知らないところで友好関係を深められるとなんか気持ちが複雑っていうか・・。」
「なんだそれ。」
「海里ちゃんもしかして嫉妬?」
「ち、違うよ!」
「そういえば海里、小学校のとき、俺のこと好きだったよな?」
「わぁぁー!掘り返さないで!」
「そうなの?」
「うん、だって告は「それ以上言わないで!」」
歩道で大騒ぎする海里を、道行く人々が何事かと眺めてくる。恥ずかしくなって彼らはドーナツ屋に逃げ込んだ。
「ったく、お前騒ぐなよ。」
「だって昔のこと掘り返されたら誰だって恥ずかしくなるじゃん!」
「そんなに知られたくない過去が?」
「まあ、ここでは言わないでおくよ。店の中だし。」
正弘の一言で一応落ち着いた彼らはドーナツを頬張りながら文化祭の話に花を咲かせた。
李苑隆之で書いている「”神になる”」の方ですが、自分でもいつ投稿するのかが分からない状態になっております。言い訳がひどすぎると自分でも思っています。すんません。