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神聖の転生者  作者: 薄明
第3躍 ~中学生時代~
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第42話 ある日の異世界部

続けていきます。



「いってきまーす。」



誰もいない部屋に虚しく響く自分の声を聞きながら彼は家を出た。いつもの持ち物に加え、今日は別のものを入れているため重いカバンを背負って夏の暑い日差しの中を学校に向けて、ただひたすらに足を動かしていく。




学校に近づいた頃、ふと後ろから足音が聞こえ、振り向いた彼はこちらに走ってくる一人の少女を認めた。彼女は正弘に追いつくと隣に並んであるき出した。




「有沙って何のクラブだっけ?」

「私は陸上部なの。石井くんは?」

「武道部。あ、あともう一つ兼部してるけど・・・。」



そう言うと彼女は少し目をキラキラさせて正弘を見つめた。



「え、えと、どうされたんですか?」

「え、だって武道部っていうからかっこいいなあ〜って思って・・。」

「あ、それはありがとうございます。」




(有沙って陸上部だったんだ・・。)




薄い茶色の髪の毛の隣の少女を見つめる。彼女は正弘の視線など気にしないように話し続ける。この少女が陸上部という実感がわかず、首をひねると有沙の話に集中した。

校門の隣の木々からセミの合唱が聞こえる。夏を実感しながら、更衣室に向かう有沙と別れ、武道場へと向かった。





武道部の練習を終え、食堂で架澄や隼人と昼食を取る。いつもの流れだった。

「あ、正弘。」

「ん?」

「今日俺ちょっと用事があるから異世界部行かずに帰るな。」

「おーそうか。わかった。羽山先輩に言っとくな。」

「あ、私も。」

「お前もか!」

「うん。ごめんね。」

「いや、別にいいんだが。」

そう言うと彼は少し寂しさを感じた。




食器を返し、カバンを背負って帰る二人と別れると正弘は校舎に入っていった。階段を登り、異世界部へと続く廊下を歩く。右側の窓から日光が差し込み、正弘を容赦なく照らす。歩いたまま左へと移動し、屋根の影に身をおいた。足はいまだに照らされたままだが、頭は影になり、少し涼しくなった気がした。




「おはようございます。」



異世界部の扉を開けるとそこには誰もいなかった。



少し立て付けの悪い扉を閉めると音が教室に響いた。手頃な椅子を見つけてそこに座るとつい机に突っ伏し、寝てしまった。














「石井くん?」

耳元でそっと囁かれた言葉にくすぐったくなり、彼は目を開けた。目の前が真っ暗なのに驚いて彼は顔をあげた、すると目の前でこちらを見つめる濃茶色の瞳と目があった。


彼女は少し笑うと顔の前に紅茶のカップを置いた。


「疲れてるのね。これ、疲れを癒やす効能のある紅茶。どうぞ。」

「あ、ありがとうございます。長屋先輩っていつ来たんですか?」

「うーん、15分くらい前かしら。来てから起こそうか迷ったんだけど寝顔がかわいかったからずっと寝かせてあげたのよ。」



「そんなに俺寝顔人気ですか?」

「人気?誰に?」

「いえ、家族の話です。」

「そう。ならいいわ。そろそろ部長が来る時間だから起こしてあげたのよ。」

「ありがとうございます。」

そう言うと彼は置かれていた紅茶のカップを手に取り、少し口に含んだ。ほんの少し甘い味が口の中に広がる。なぜか出た長いため息のあと、もう一口、もう一口と飲んでいくうち、いつの間にか飲み干してしまった。



カップを机の上に置き、椅子を立った。カバンの中からわざわざ持ってきたパソコンとUSBを取り出す。起動すると家にある大きなパソコンと同じ画面がで、手早くパスワードを打ち込む。




「何してるの?」

長屋が顔を近づけて覗き込んできたため、少し動悸が早くなるもそれを無視してUSBを差し込みながら軽く説明をした。




「俺が家で時々やっていることをここでやろうと思いまして。」

「ふーん。」

それだけ言い残すと彼女はそのまま去っていった。それと同時に扉が開けられ、羽山が入ってきた。彼は入ると同時に教室を見渡し、少し首をかしげた。




「この部活って1年生一人だったっけ?」

「あ、羽山先輩、おはようございます。隼人と架澄、今日用事あるから来れないそうです。」

「ああ、そうか。二人は武道部には行ってたのか?」

「はい。武道部に行ってから帰りました。」

「だったら俺に言ってから帰るべきじゃないのか?」

「部長、来るの遅いでしょう?言う時間なかったんじゃないの?」

「た、確かに。二人が帰ったのはいつだ?」



羽山の問に時計を見て逆算する。



「えーっと50分ぐらい前ですね。」

「じゃあ無理だな。まず会わなかったし。」

「石井くんそんなに前から寝てたの?」

「はい・・。来てすぐ寝ちゃったので・・。」




「大丈夫か?」

「はい。ありがとうございます。」

その後、続々と先輩たちが来て珍しく賑やかになった。いや、珍しくと言うと怒られるか・・。



























夏休みの毎日はただひたすらこれを繰り返していくだけだった。いつの間にか正弘は有沙と朝待ち合わせるようにもなっていた。もちろん海里のクラブがない日だが。


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