第40話 長屋の「食事調査」
お久しぶりです。すいません遅くなりました。
「暑いーー!」
物音とその声に4人は驚き、架澄は肩をあげ、長屋は紅茶をこぼしかけて口で抑えた。だが正弘は彼がだれかわからず、先輩たちに目を向けた。
「おー名瑞。久しぶりだな。」
「あ、羽山先輩、お久しぶりです。」
名端と呼ばれた男はカバンを背負ったまま教室を横断した。彼は窓際の机にカバンを置くと、椅子を引き出し、座った。ふと横を見ると架澄と隼人も誰かわからないというような顔をしていた。
長屋がそれを見つけると名端を呼んだ。
「どうした。長屋。」
「中1の子たち、あなたのこと知らないみたいよ。」
「え?あ、そうか、俺全然来てないもんな。2年の名端海輝です。よろしく。」
「あ、石井正弘です。」
「滝村架澄です。」
「八島隼人です。」
「よろしくな。」
そう言うと彼は机に戻り、パソコンをすごい勢いで叩き始めた。
「おい、名端。」
「はい。」
羽山の呼びかけにパソコンから目を離さずに答えを返す。
羽山もそんな名端の反応に慣れているのか気にせずに彼は続ける。正弘は彼らの話に溶け込む事もできず、ひたすら立ち尽くしていた。すると長屋が飲み終えた紅茶のカップをそばに置くと、こちらに向かってきた。
「ちょっといいかしら。」
「は、はい。」
長屋がおもむろに開けた扉から3人は外に出ると、彼女のあとに続いて廊下を歩いた。廊下の渡り廊下を歩き、中学校舎のひとつの教室に入っていった。
「で、どうしたんですか?」
彼女が扉を閉めるのと同時に正弘は長屋に問いかけた。
「いえ、私の調査に手を貸してほしくて。」
「え?」
長屋から発せられた言葉に驚きの声をだした三人。すると長屋は近くにあったノートとパソコンを持ってきた。
「あ、あの、先輩、電気つけていいですか?」
「あら、ごめんなさい。いいわよ。」
「で、どうするんですか?」
「えっと、今私がやっている調査の手伝いをしてほしいの、ってさっきこれ言ったわね。」
「は、はい。で、どんな内容なんですか?」
「それは・・・・。」
「ふわぁぁーー。」
午後6時といえど明るい町を3人は歩いて行く。彼らには疲労の色が見える。
「まさかあんなに手伝わされるとは・・・。」
「それよりいつも紅茶ばかり飲んでいる長屋先輩があそこまで研究進めていたとは・・。」
「それは思ったーー。」
3人の間に少し重い空気が流れる。
結局3人は長屋がしている異世界の食料事情に関する調査に協力させられたのだった。
「でもさ、なんで異世界の食べ物なんかわかるのよー!長屋先輩ー。」
「でも正弘もなかなかリアルなこと言ってたよね。」
「う、そ、それは、ラノベをたくさん読んでるから!」
「でも・・、ま、いっか。」
(ふー、助かった。あやうくタグリアに飛ばされて戻ってきたことがバレかけた・・・。というかこいつらの想像力というか、以外に怖い・・。)
家に帰ると、海里はすでに帰っていた。だがリビングには居ず、大方自分の部屋にでも閉じこもってるのだろう。律儀に手洗いうがいをすると自分の部屋に入った。
俺は床に荷物を置くと、そのままベッドに倒れ込んでしまった。
(あー疲れたー。でもお腹すいたー!まあ寝てたら誰か起こすだろー。)
そういう勝手な信頼で彼は眠りについた。