第39話 異世界部へLet's go !
「疲れたー。」
練習のあと、正弘は武道場の下にある食堂の机に倒れ込んだ。側には隼人と、紅一点の架澄が笑っていた。
二人はコップを傾けて中のお茶を飲んでいた。
「二人は大丈夫なのか?」
「まあ、一応特訓しているからね。」
「だてに異世界部に入ったわけじゃないわ。」
二人して一文を言った二人に少し驚き、正弘は顔を伏せた。
「ね、異世界部どうする?」
「あー活動日聞くの忘れてたなぁ。」
「一応行ってみる?」
「そうだね〜。」
(むー。俺を差し置いて会話進めやがって・・・。)
心の中でつぶやき彼は顔を上げた。
「よし、行ってみよう!」
「え?」
「ふぎゃ!」
突然机を叩きながら立ち上がった彼に驚き、二人は声を上げた。ついでに食堂のおばちゃんもちょこっと驚いた。
一方こちらは異世界部の部室。
「ねえ、羽山。」
「なんだ?それと俺は一応先輩だぞ?」
「それは何回も聞いたわよ。で、正弘たちに活動日言ったのかしら?」
「言ってない。」
「なにをしてるの、部長。」
一杯口に紅茶を運ぶと彼女は部長の羽山に少し鋭い目線を送った。
「わ、悪い。」
「こんにちはー!」
羽山が全く感情のこもってない謝罪の言葉をはくと同時に教室の扉が大きく開けられた。
「い、石井?滝村と八島も!」
「あら、別に言わなくても来たじゃない。」
「いや、長屋、お前さっきそんなこと言ってなかっただろ。」
「そうかしら。」
「ああ。」
「あ、長屋先輩、お久しぶりです。」
「あら、お久しぶりね。」
相変わらず紅茶のカップを持ったままウィンクをよこした。三人は教室に入ると思い思いの席に座った。長屋の座っている机から椅子をひくと正弘は少し離れた場所に座った。
「で、夏休みの間、なにか進展あったんですか?」
「いや、まだ一日しか経ってないのに進展もなにもないだろ。」
「ええ。まず通常授業期間でさえもろくな活動していないのにね。」
「というかあまり何かをやった覚えがないわ・・。」
「あら、滝村さん覚えてないの?」
「ええ、すみません。」
「大丈夫よ。多分。」
そんなことより、活動期間がいつなのか聞くためにここに来たのだから、それを聞かなきゃ。全然忘れてた。
「それより、活動期間はいつなんですか?異世界部の。」
「私も部長が言い忘れてたことを聞いて非難していたところよ。」
「あ、はい。」
相変わらず少し怪しい微笑みを見せる長屋から目を逸らすと椅子に座って知らないふりをしている部長を見やった。彼は正弘の視線に気づくと目をそらした。ふと横を見ると架澄も部長の方を見ていた。一方の隼人は長屋の話し相手になっていた。
「わかったわかった!これは俺の不手際だ!日程をパソコンで打ってはいたんだがそれを印刷せずに夏休みを迎えてしまったんだ!印刷してくるから待っててくれ。」
そう言うと羽山はUSBを手にすると教室を飛び出していった。あとには夏らしい湿気の多い空気と4人が残された。
「さて、今日はどうするの?帰る?それとも残る?」
沈黙を最初に破ったのは長屋だった。彼女は自分の前に、背を向けて立っている3人の中学一年生に質問を投げかけた。自然と3人は目線を合わせ、お互いの答えを読もうとした。目は口程に物を言うとは言うが全く答えが読めず、3人の目線は長屋へと移動した。
「俺は残ります。(宿題をしたいから)」
「私も。」
「俺も残ろうかな。」
結局3人の答えは必然か偶然か重なり、その議題は長屋のため息で締めくくられた。
「じゃあとりあえず適当に座って。立ったままだと話が進めにくいわ。」
「あ、じゃあ失礼します。」
静かだった教室に椅子を引く音と座ったときの衣擦れの音が響き、また静かになった。
と、そこで先程印刷をしに行った部長が戻ってきて俺たちに紙を配った。正弘は紙を受け取ると上から下までひと通り目を通した。そこには縦二列の表が書かれていた。
「基本午後からなんですね。」
「ほんとね。」
「部長、朝起きるの苦手だから・・。」
長屋の口から発せられた部長の秘密に一年生三人は羽山を見やる。彼はその目線に気づくとまたもや目を反らした。だがその目線の先には長屋がおり彼は再び目線を反対側にそらすも、そこには三人がいたため、彼は目のやり場に困ったような状況になった。
少しだけ、気まずい空気になり、居にくくなったとき、扉が大きな音とともに開けられた。
あらすじにも書きましたが、短編、新連載作品(シリーズ名「現代版 古文」)を投稿しました。そちらもぜひ読んでみてください。