第38話 夏休み:武道部:剣道
どうもこんばんは。近々、現代古文の短編を投稿しようかなと思っている作者です。言いたかったことはそれだけです。
『夏休みの最初の週は宿題を終わらせることに努力し、その週が終わればヒャッハー状態に突入、が理想的な夏休みの過ごし方である。』
この言葉は前世の俺が5つ遺した名言のうちの一つである。(と勝手に決めている。)
こんな言葉を言っている割に実行はしたことがない、昔は。でも、今は違う!!
だから今回の俺は夏休みをこのように過ごすつもりだ。有言実行が基本だ。
さて、「夏」にはクラブが付きものだろう。武道部も月~金毎朝2時間半の稽古があった。稽古内容は月は剣道、火は柔道、水は槍術、木は空手、金はその他の武道となっていた。
夏休み初日はちょうど月曜日で武道場に行くと、剣道着と防具が置いてあった。ちなみに、先生は毎回変わるらしい。
一回以上経験している先輩の指示で着替えられると先生が来た。先輩らが「オス!」と言うので自分も言ってみる。
「初めての者もいると思うから自己紹介をする。私は井笠一三という。よろしく。」
軽く会釈した初老の男は軽く見渡すと、そのまま去っていった。彼の行動に驚いた正弘は周りを見渡してみた。
「あ、おまえらは初めてか。先生は五分後ぐらいに戻ってくる。それまでに軽く体をほぐしておくこと。」
「はいっ!」
優しい先輩の言葉で自分がすべきであることを大体察し、正弘は座ると足を伸ばした。
「う、ぐぐぐぐ・・。」
開脚で前に体を倒すも体が硬く、あまり前に倒れない。硬いなあと思っていると背中に軽い衝撃を感じた。重いなと思う間もなく、押された。
「うぎゃあーー。」
「へっへー。もっともっと!」
「や、や、やめてください!折れます!」
「はいはい。」
ほんの軽いノリなのか正弘の背中に座った先輩に中止を求める。
「お前ちゃんとストレッチしろよ。その硬さ、怪我するぞ?」
「は、はい。」
「よし、じゃあ、中2・3は号令かけて素振りやっとけ。中1はこっちの端に集まって。」
俺たちは端っこに集まった。異世界部の面々は基本的に武道部の入部届けも配られるが、二人はそれをもらった時嬉々として書き込んでいたらしい。
「じゃあ3人、縦に一列になって腰に手をあてろ。はい、あてた?あてたな。じゃあ、今からやること言うからその通りにして。」
「「「はい。」」」
井笠は右足を前に左足を後ろに置き、左足を左に少しずらした。
「まず、この足の形を作ってもらう。剣道はこの足が一番重要だからこれを崩さないようにしてくれ。」
俺たちは井笠を見本として足の形を真似る。
「そうそう、いい感じ。そのまま右足だけを地面にすったまま一歩前に進ませて左足を後から右足の後ろに置く。それを繰り返して順番に奥まで行ってこい。」
最初は八島だった。時折下を見て足を直しながら、バランスを崩したりしながら進んで行く。
奥まで着いたところで2番目に並んでいた俺がスタートする。前世で少し友人に習った(異世界流)剣術とは大分違い、苦戦する。
俺も時々足を止めて形を直す。そこで井笠からの注意が飛んだ。
「石井、足をもっと離せ。」
「はい。」
いつのまにか足が近づき、ほぼ普通に経っている状態と変わらない感じになっていたのだ。
俺が奥まで来ると、滝村は出発した。
俺は自分のことに集中しながら滝村を盗み見ると、滝村は何の問題もなく順調に自分の後をついてきた。
3人が全員最初にいたところへ戻った時に井笠は追加の説明をした。
「最初の二人は左足を引きつける時に左足が右足のかかとを越してしまってるから両足がそろってしまうんだ。そこを超えないようにして前に進んで行く、ということを十分にできていないとああなる。」
そう言って井笠は面をつけて練習している先輩らの内の中2のある先輩を指した。
「面をつけた時に竹刀が上手く面に当たらなくなるし、左足が本来の意味を成さなくなって相手への対応が難しくなるから、足の形は重要なんだ。」
井笠は一旦言葉を区切って俺たちに指示を出す。
「そろそろ中2・3の基本稽古が終わりそうだから僕はそっちに混ざってくる。途中で中3の誰かが教えてくれると思うからそれに従って練習して。今は休憩してていいよ。」
俺たちが返事をした後、井笠は言葉通り面をつけて先輩の言う自由稽古に参加した。
自由稽古が始まり、俺は休憩をしながら井笠の方を見る。
剣道には掛け声という気でまず相手と当たるらしい。気は剣術でもそれこそ”危神”と向かい合った時も例えゴブリンが相手でも出すものである、と俺は考えている。
俺たちから離れた方の端では井笠と部長が向かい合っている。
井笠は叫んだ。
「さあ来い!」
「やあああああああああああ!」
部長が小さく面を打とうとする。が、井笠はそれを許さず自分の竹刀で部長の竹刀を弾き、隙をついて面を打ち込んだ。
「お面なり、お面だ、面あり一本なりーー!」
技を打った時の声は何を言ってもいいのだろうか。
俺たちの隣で相向かう先輩の技を打った時の声はいい当たりだと「コテ、ファイヤーーーー!」とかになっていたはずだ。ちなみにその先輩の他の技、例えば面とかコテとかでもいい感じのやつだけ「ファイヤーーーー!」と言ってる。もしかしたらそう聞こえるだけかもしれないが、どちらにせよ何か魔法でも出しているような感じの声だ。
先生の稽古に見入っていたら横から肩を叩かれ、叩いた方を向いたら先輩がちょっと怒っていた。さっきから呼んでいるのに全然反応しなかったらしい。ごめんなさい。
「石井が目を覚ましたところで、始めようか。基本俺は個人個人にしか口を出さないから、さっき先生に習ったやつを休憩をちょくちょく挟んでずっとやってもらう。それでいいか?」
さっきやったやつはそこまで疲れなさそうだったから、別にいい。俺たちははい、と返事をする。
「その時に、左足のかかとを上げてつまさきで地面を押してひきつけることを重要視してくれ。それと足の形に注意してやってくれ。」
「「「はい。」」」
さっきの練習では時々かかとをついてしまっていたのか。とりあえず先輩の指示に従うようにして俺たちはスタートした。
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