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神聖の転生者  作者: 薄明
第3躍 ~中学生時代~
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第30話 体育祭終了


「早速怪我かしら?」



聞き覚えのある声におどろいて振り返ると長屋が養護教諭と脳天気に話していた。



「あれ?長屋先輩?なにしてるんですか?」

「見ての通り話しているのよ。」

「体育祭は?」

「もちろん出ないわよ?」



さらっと答えた長屋に驚きを隠せない正弘。養護教諭は二人が話しているのをみて何処かに行ってしまった。二人きりの保健室に静かな空気が流れる。正弘は次に長屋が言いそうなことを考えた。



するとやはり、

「紅茶、いる?」

「ありがとうございます。」

「まだ2種目しか終わってないのよね。暇だわ。」

「そうですね。」



長屋のペースにいつの間にか引き込まれていた。だが、それもいいと思った。賑やかなグラウンドから離された保健室でぼんやりと過ごす二人。



ぼうっとしてると彼女が立ち上がり、カップに紅茶を注いだ。


「あ、ありがとうございます。」

「まだまだあるからいいのよ。」




この謎の空気感がリラックスできるのだからそれも謎だ。そのまま話もしないで時間だけが過ぎていき、気がつくと海里が出る一つ前の競技が終わったところだった。




「そろそろ妹が次の競技に出るので応援に行きます。また来ます。」

「そう。次の訪問者は誰かしらね。」



その言葉を尻目に俺は保健室を飛び出して応援席に向かった。グラウンドでは丁度大縄が用意されたところだった。緊張で顔がこわばるクラスの面々。体育の練習のときはうまく言っていたはずだが本番で果たしてそれが出せるかどうか。




「用意はいいですか?では行きます。よーい」『パン!』

始まりの合図が鳴った。



それと同時に回す係は声を合わせ大きな縄で空を切り裂く。地面につくのと同時に息を合わせたようにクラスが飛ぶ。一回目は飛べた。



(一回目が行ければいけるか。)



そう甘く考えた正弘の目に失敗するクラスメートが映る。

(海里!ダサいなあ。)

気を取り直してもう一度、縄が宙に舞う。












「あら、おかえりなさい。」

「はい。ただいまです。」



保健室の扉を開けるとさっきと変わらず長屋が椅子に腰掛けてぼうっとしていた。さっきより元気がなくなってる気がする。



「先輩どうしたんですか?元気なさそうですけど。」

「暇なのよ。一日保健室にいるだけでこんなに体力消費するのかしら。知らなかったわ。」



どうやら暇をもてあましていただけのようだ。彼女のそばのケトルのお湯はだいぶ減っていた。



「先輩、紅茶飲み過ぎです。体に悪いですよ。」

「この生活を2年も続けてたらなれるわよ。」



(ということは中1からずっとこんなってことか。)



保健室に流れる静かな空気を破るものはいない。いや、いなかったと言うべきか。なぜなら・・・。



「あ、まさくん、こんなところで何してるの?」



静寂が包む保健室を明るい声が横断する。保健室の扉には体操服姿の海里が立っていた。右足をくじいたのだろうか。体重が左に偏っていた。



「あれ?保健室の先生は?」



室内に二人しかいないことにおどろき、彼女は質問を重ねる。



「今席を外してるわ。グラウンドの養護席にいるんじゃないかしら。」

「そうですか。ありがとうございます。ところで失礼ですけどどなたですか?」

「長屋咲也加。2年よ。あなたは?」

「石井海里です。」



長屋は海里の返答に少し、首をかしげる。彼女の長い髪が肩をよけて流れ落ちる。



「ああ、そういうことね。正弘くん、あなた、同じ年の家族を妹呼ばわりなんて趣味が悪いわね。」



さらっと家族崩壊につながりそうな言葉を放つ長屋。



「うげぇ!わ、ちょ!」

「まさくんやっぱ最低!」



そう言うと彼女は保健室の扉を乱暴に閉めると去っていった。



「先輩何するんですか!というかよくわかりましたね!」

「事実を言っただけよ。まあ顔が全く似てなかったから確証は持てなかったのだけれど。」



あれだけのことをしていながら悪びれもせずにまたお茶を飲んでいる彼女。一年上とは思えないほどの落ち着きぶりだった。




(はあ。やれやれ。)




「ところで正弘くん。」

「なんですか。」



ため息混じりに答える。



「なんで異世界部に入ったの?」

「異世界に興味があったので。」

「そう、意外に単純なのね。」

「単純でだめですか?」

「別にいいわよ。私も単純だから。ちょっと聞いてくれるかしら?」

「はい。」




























 話し終わると彼女は大きく息を吐いた。


「以上が私が異世界に抱いてる妄想よ。」

「結構リアルですね。」

「そうかしら。」



いつの間にか日が傾いていた。橙の日が保健室を照らす。



「あ、競技・・・。」

「まあ、いいんじゃない。碌な競技もないんだし。」

「そうですね。」





















一方その頃の運動場では、一人の男が怒っていた。

「くそっ。なんでマサはいねぇんだよ!おかげで俺が一番楽しみにしてた競技に出れなかったじゃねぇか!どうしてくれるんだ!!ううっ。」



否、泣き喚いていた。









正弘は保健室を出てたまたま会った海里とともに赤に染まった道を二人で歩いていた。



「保健室でなに話してたの?」



(やっぱりそうきたか。)



「ううん。特に。世間話ってとこかな。」

「彼女って異世界部の先輩?」



そういうと彼女は少し暗い顔をした。



「うん。」

「・・いだった・・。」

「なんだって?」



そういうと彼女の顔から暗い色が消えた。



「なんであんな美女が異世界部にいるの?っていうかまさくんたぶらかされてないよね?!」

「た、多分大丈夫・・。というか苦しいからやめて!」



首筋にぶら下がってきた海里を下ろすと彼らは再び歩き出した。












「なんであんなに仲が良いのに保健室なんかで時間を潰してたのかしら。」



正弘が帰り、日も傾いて暗くなってきた保健室で一人、彼女は呟いた。



今年から始まったこの作品「神聖の転生者」も今、今年最後まで続きました。ありがとうございました!来年もまだ続きますのでよろしくお願いします。


それでは、よいお年を!!

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