第21話 失敗と新たな策
パーティーの時間になり、海里を「ご飯だぞ。」と呼び寄せた。程なくして海里の部屋から不思議な表情の海里が出てきた。
戸惑いと疑問もそこにはあった。急に騒がしくなったことに対してだろう。
「なにごと?」
部屋に入ってきた海里は気持ち、語尾を強めて聞いた。父親と息子は視界の端で目を合わせると打ち合わせ通りに事を運び始めた。
「海里が落ち込んでたから元気出そうとパーティーやろうと思って。」
「ほら、ご馳走だよ。」
二人で食卓の上に並んだ鮮やかな料理を示す。母親は少し困ったような顔をしていた。本当にこのやり方でよかったのかと思っているのだろう。
「食べ物で釣るって言う訳?」
「ちがうちがう、そういう意味じゃないよ。俺が今日告白したことは忘れて、楽しもうと思って。」
「ふーん。」
海里が全て食べ終えたのを見届けてから切り出した。
「今日の朝のことだけど、俺が話したことは忘れてくれ。海里の前で二度と言わないから。俺がお前の気持ちなんか考えずに話してしまったのが悪かったんだ。」
一気に言ってから、海里の表情を確認した。海里は・・・少し顔を赤くして怒っていた。
「・・・海里の前では?」
「え、なんだって?」
「私がいなかったら3人で盛り上がっているの?私を仲間外れにして?それに自分が悪かったから謝る?もっと他にも言葉なかったの?それでもあんた・・・もういいや。お母さん、ごちそうさま。」
彼女は椅子を引いて立ち上がり、自分の部屋へと去っていった。数秒後、乱暴にドアを閉める音が聞こえた。
海里の去ったダイニングは静寂としていた。
「私、陸がそんな行動を取るとは思わなかったわ。」
母さんはそう言って、出て行った。
「散々な結果だったな、正弘。」
「・・・。次は俺が1人で解決してみる。お父さんは見守っておいてくれ。この事件は俺が原因だ。」
「わかった。」
俺は食器を片付けて自分の部屋に戻り、ベッドに寝転がった。
「自分と同じ境遇にあったからって少し甘く見てたな。こういうときは自分を蔑んだ言い方で落としてみようかな。この方法はあんまり使いたくなかったのに、俺の心を犠牲にするから。でももう、これを使う以外に方法がないし。」
正弘、いや陸は人の前に立つ勇者ならぬ行動を、取り返しのつかない行動をしようとしていた。