第18話 告白(決戦)の前
その夜、正弘は考えていた。早くも一家分裂したこの家庭を元に戻す方法を。
(前世がキモイことはわかっていたが、実際に言われると腹が立った。人と違う点があるからなのか、少し誇りを持っていたと思う。多分お父さんも同じ気持ちなのだろう。
俺は前世のことだ、と割り切ることができるからもう怒っていないが、お父さんとしては若かりし頃の活躍?が否定されたも同然だし、実の子に言われたんだから、相当にきついのだろうな。
いっそのこと、俺の前世、海里にもお父さんにも言っちゃおうかな?いやでもそれはな・・・。)
そこまで考えたところで、俺の部屋のノブがノックされ、「入っていいか?」という声も聞こえた。これはお父さんだろう。布団に転がりながら空返事を返す。
「どうぞ。」
「なあ、正弘。お前、なんで異世界部に入ったんだ?それが不思議でたまらないんだ。お前は海里の情報もあわせて一回もライトノベルなるものを読んでいるのを見たことがない。なのに、なんで?」
一番きつい質問が来た。
「読んだことはあるよ。ただ海里に見られてないだけで。ほら。」
そういういうと彼はベッドを跳ね上げた。中には大量のラノベが入っていた。
父親が息を呑む。想定外のことだったらしい。中の一つを手に取り、戻しを軽く5分は繰り返したあと、口を開いた。
「なんで俺世代のやつばっかりなんだ?」
そりゃそうじゃねぇか、前世の俺が読んでたシリーズの続きなんだから、とは言えるわけもなく。
「たまたま友達がそこが好きだったから。」
「そうか。なあ、本当のことを俺や海里に話してはくれんか?母さんは何かを知ってる風だったし。そんなに俺らを信用できねぇのか?」
「そういうわけじゃない。・・・わかった。母さんに話してから考えるから今日は寝させてくれ。」
「頼むぞ、その秘密を言ってくれるなら早めにな。じゃ、おやすみ。」
「・・・おやすみ。」
明日は土曜日だから、学校は休みだ。
とりあえず、明日母さんに相談しよう、と思いながら正弘は眠りについた。
翌日、海里は昨日いつの間にか戻っており、今日は友達と遊びに行くと言って家を出ていった。お父さんは会社だ。
朝食を食べた後、母さんの部屋に行った。
『コンコン。』
「はい、まさくん?」
「なんでわかったの?」
「まあね。それよりどうしたの?」
「お父さんが俺に、俺の秘密を話してくれないかと言ってきたんだ。
前世の件、言ったほうが良いかな、姉ちゃん?」
「陸、私は別に良いと思うわ。でも陸が前世の嫌なことを思い出したくないなら、言わなくても良い。陸はどっちが良いの?
お父さんが異世界部を作ってあなたが入ったと聞いたとき、陸がクラブに入ったことが嬉しかったの。
陸はお父さんや海里に話したいの?」
「俺は・・・」
「話したいんだったら、今日の夕食のときにがんばってね。責任は私が取るから。」
「・・・わかった。話してみるよ。」
「うん、それでこそ私の弟!!おっと、今は息子だったね。」
勇気はもらった。決戦は今日の夜だ。
これでうまくいけば元通り。上手くいかなければもっと酷いことになる。
そう思いながら、俺は母さんの部屋を出た。