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parts part3

「ネウロパストゥム、ユイ! 全てのアライザを破壊するために日本へ渡った者だ」


「完璧な世界の創造を阻む害悪共め。何故歯向かう。お前たちの抵抗さえなければこの世界は既に平和になっているはずだった」


「平和な世界? とぼけないで。それは機械による支配でしょう。そんな世界を平和とは言わない、私達はお前達アライザを破壊するまで止まらない」


「どれだけ我々の仲間を壊してきたのかは知らないが、私はその辺のアライザとは違う。今まで三体のマーキナーと三人のネウロパストゥムを破壊してきた。もうすぐ四体、四人に変わるがな」



 その時、ユイの側にアライザとアライザの刃に貫かれた男が落下してきた。

 ユイは落下してきた様子から上でどんな戦いがあったかある程度想像できた。

 赤い血を流しているこの男は正真正銘の人間。

 全身が機械で出来たアライザとまともに戦って勝つことは不可能に近い。

 それにも関わらず相打ちという形まで持っていくことのできた男に対し敬意を評し、目の前の敵を片付けることに全力を注ぐ。



「改造しているとは言えその大半の部分は脆い人間。ネウロパストゥムを破壊すれば我らより固く鋭いマーキナーも敵ではない」



 アライザはルシィルの攻撃を躱し、ルシィルの操縦に集中するユイを狙い攻撃を仕掛けてくる。

 どうやらこのアライザは今回襲撃してきたアライザ達の指揮官のようで、性能もワンランク高いようにユイは感じた。

 ルシィルのシェイクスピアと均衡する手刀から、その身体の硬度を理解し、人間のユイは一撃すら食らうことが許されないことを悟る。

 このように近接戦闘、一対一において不利になるためマーキナーを使わないネウロパストゥムもいるが、ユイは徒手で戦う専門的な訓練は受けていない。



「やはり、操る者を狙うと動きが単調になる」



 アライザは、アライザとユイとの間に割り込むよう、流れるような体捌きでルシィルの行動を読んで無効化し、着実に攻撃を当てていく。

 このまま攻撃を受け続ければルシィルと言えどいつかは破壊されてしまう。 


 そこでユイはあえてアライザに隙を見せることに決め、両手を伸ばしてルシィルを全速力で突撃させる。



「油断したな。これで四人目だ」



 アライザの手刀がユイの首に触れる。

 だが、ユイは紙一重で身体を曲げ、地面から足を離し両足をアライザの腕に絡ませる。

 アライザが手刀を振り抜いたため、ユイも腕から吹き飛ばされそうになるが、なんとかしがみついて堪える。 



「甘い! 少々他のアライザより優れている程度で私達より強いと思い上がるのは間違いよ」



 ユイは、ルシィルを操る両手を抱きしめるように動かす。

 ルシィルは方向を転換し、今度は全速力でアライザの背中に槍を突き立てる。

 深々と刺さった槍はアライザの胸を貫き、コンクリートの地面に突き刺さった。



「ぐっ! ね、ネウロパストゥム、ユイ……! 忘れない……!」



 泡立つ音と共に透明な体液がアライザの口から溢れ出す。

 その場に崩れ落ちたアライザの活動停止を確認してルシィルは槍を引き抜く。

 ユイは倒れたアライザの腕から這うようにして抜け出し、立ち上がるとポケットから携帯電話を取り出してどこかへ連絡を始める。



「――――はい。お願いします」



 連絡を終えると、ルシィルに乗って五階へ飛び上がる。

 五階には一部始終を見ていた一流が腰を抜かして座り込んでいた。

 周りの住人は留守なのか誰も出てきてはいない。



「一流君、大丈夫でしたか? 怪我とかありませんか?」


「う、うん。大丈夫」



 ユイは安堵の表情に変わり、そして首を傾げて唸る。



「どうしたの?」


「うーん。実を言いますと、こういう事態を想定して誰も住んでいないアパートの一室を借りていたんですよ。それなのにまさか隣に人が住んでるとは思いませんでした」



 それを聞いた一流はハッと気づき、壊れたフェンスから下を覗く。

 地上では黒い大型車が駐車場に進入し停まると、黒ずくめの人達が現れ、アライザの残骸と隣に住んでいた男を手際よく車に詰め込んでいる。



「ユイさん! あれは!?」


「あれはネウロパストゥムの方たちです。ネウロパストゥムとアライザの戦闘の後は、処理を行う専門の機関に連絡するのです」


「でも、男の人が!」


「えぇ、あの方ももう亡くなっていますから」


 

 黒ずくめたちは地上の処理を終え五階にやってくると、男とアライザの戦闘で流れ染み付いた血を取り、フェンスを瞬く間に交換すると、ユイに一礼し、帰っていった。

 その淡々とした作業を何も言えずに見ていた一流は部屋に戻ると、声を上げた。



「おかしいよ! あの男の人にも家族がいるんだよ!? それなのに『処理』って!」


「一流君、アライザの存在は国家機密です。よってアライザに関わった者たちはその時点で普通の人生を送ることはできません。私も、一流君も、そしてあの方も。回収された後は日本政府によって家族や職場へ対応があるでしょう」


「絶対おかしいよ……」



 一流は納得いかず、ルシィルの入ったボストンバッグを抱えると、自分の方へと引き寄せる。

 ユイは一流の行動が理解できず、一流に手を伸ばすが、一流はそれを弾いた。



「一流君? どうかそんな怖い顔しないでください……」


「どうせ! どうせ僕が死んだってユイさんはそうやって僕が『処理』されるのを見てるだけなんだ! あの男の人は、ユイさんを助けようとしてくれたんだよ!? それなのに!」



「……それは」  



 ユイはどうしていいかわからず、テーブルを挟んで沈黙が続く。

 だが、一度アライザに場所を知られた以上、第二波、第三波がやってくる。すぐにでも移動しなければならなかった。



「すぐにまたアライザがやって来ます。移動しないと……」


「僕はここにいる……。僕は家を追い出された。行き場なんてないから」


「そんな……! お祖父さんの家を訪ねるのではなかったのですか?」


「もういいよ。おじいさんまで巻込みたくないから」



 拗ねたようにユイとの距離を離す一流に、ユイは立ち上がり、一流の元へと歩み寄る。



「一流君、お風呂です。お風呂に入りましょう」


「へ?」



 




  

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