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オペレーションA

ミッドナイト

作者: j

自動車知識はないです

 襲撃から一晩経過。荷物をまとめてさっさとハコネからでて、川崎の愛車のランエボXに乗り東京に進路を向けて大臣の救出を狙う。

 ただ日本の公務関係は賄賂を渡さない限り見逃してくれないと言うほど腐っているので、恐らく警察隊が出動してもあまり意味はないだろう。せいぜいシークレットポリスの連中らが頑張ってやるほかはない。

 横浜の大黒PAで車を止めて昼食をとっていた私は、ノートパソコンを使いディスプレイを眺めていた。


 上空から撮られた航空偵察機の3枚の写真を頼りに大臣の行方を追うが、どれも高速道路上の写真でどこに位置するかわからず、メモ欄には高速道路と表記されているだけで手がかりがつかめない。

 するとIphoneから電話がかかる。

 運転席、後部座席で仮眠を取る彼女らを視線に入れながら電話に出るとフランカの声がした。

『ラッキーな情報よ。"湾岸線に向かう"と言う赤軍派の無線をキャッチしたわ。車種は日産GT-R34、黒いウィングにシルバーの塗装が施されている。もしかしたら大臣も乗車してるかも』

『ナンバーは横浜32-64。私は忙しいからこれで』

「ありがとう!」

  

 湾岸線に向かうと言うことはわかったけど、横浜ベイブリッジを超えていくのか・・?それとも・・・。

『ああ、あと横浜ベイブリッジを23:00ごろ通過するらしい。ついでに自動車2台をそっちに送ったよ』

「それまたどうして?」

『セキュリティーポリスのセダンじゃ追いつかないからね。三菱のランサーエボリューション8とスバルのインプレッサ。もうじきつく頃だけど』 

 

 その言葉に2台のレッカー車が例の車を引きながら到着。

 作業員が車を落すのを見て「ありがとう。引き続き偵察と諜報を頼む」と言い伝えて電源を切った。

 車から出て作業員に公務関係者の手帳を見せて「誰の雇い?」と言うと「"ミト社?"と言う会社からです」と答えた。

 あいつ・・・いい加減な社名を・・・。

 あきれる余裕も無いので「車はそこに置いといて」と言いつつさっさと行くように日本円で3万円を4人に手渡しした。チップと言うやつかな。

 またエボXの助手席に戻り、夜まで仮眠を取る・・・。

 睡魔には勝てずゆっくり瞼を下ろした。

 

 

 22:50...。

 PA内のオレンジの外灯光が車内を照らし、エボ8に乗車した私はサンドイッチを頬張りながらフランカのgps偵察情報から送られた"例のGTR"のリアルタイム情報を眺めていた。 

 夜の航空偵察映像にGTRが横浜ベイブリッジに進入した。

「川崎、先導して」と無線で言う。

 しかし、MTなんていつごろ乗るんだろう。1年半ぐらい?

そんなことを考えながらエボxに随伴しながら湾岸線の左側車線に進入すると、例のgtrが弾丸のように走り去った!

「行ったぞ!」

川崎が乗るエボはパンパンとマフラーのファイアリングシステムの音とともに奴の後を追い、バックミラーから凛の乗るインプレッサも私の前からでて発進した。

私も置いていかないでほしいな!

踏んだクラッチを浅しアクセルを右足で押すとエボ8は緩やかに動いた。


三人称視点

夜の湾岸線。東京上り、一般車のフロントライトが上空の偵察機映像では光の粒に見えて、高速で走る4台の標的と友軍車は流れ星のように流れていく。

 夜間の空に陸上自衛隊のUH-60が待ち伏せて、P.D.Mの若手社員ザック・パーカーと元海軍パイロットであり退役後のホームレスであったリック・A・ニューマンが陸上自衛隊のM24を構えてスコープに標的が入るのをじっと待った。

 観測をするザック・パーカーは双眼鏡でじっと空中の気圧や温度に耐たえていた。


 陸上自衛隊の第五特別戦闘隊軍曹の川崎秋水の愛車、ランサーエボリューションXと人民解放軍海軍陸戦隊の爆破工作班長の鈴玉が乗車する、青のインプレッサにP.D.M社オペレーターの日系アメリカ人のミトの乗る、ランサーエボリューション8が標的バックミラー横一列となって接近してくるのを見て、

「畜生舐めるなよ、こっちは元レーサーなんだ!」

 

 赤軍兵士はレーサー時代のことを頭に浮かばせ、燃える闘志を自動車に注ぎ込んだ男。過去のレース事故と信頼の低下が重なりサポーターの役目さえ出来ず職を求めていたとき、赤軍のスカウトチームに雇われて運送部隊に編入された。

 何トンのトラックを乗りながら各国の地を走った男。味気なく何も整備ていない山岳地の道路をラリーみたいな間隔で長年兵士や物資を運んでいたが、大臣を誘拐し目的のヘリポートまで予め購入したGTR-34で輸送する仕事に彼は引き受けて今に至る。

 元レーサーのプライドが揺らぐ。アクセルフルに川崎秋水が乗車するエボxをバックミラーから消そうとする。

「へへ、湾岸ミッドナイトだ・・・!俺が夢見ていたこの道路で思いっきり走る夢が今・・・・!」

 

 GTR-34のフロントライトがニューマン覗くスコープに照らされると、あまりの眩しさに彼は目を離してしまい4台の車両はヘリの真下を通過する。

「しまった・・・!」

『いや、撃たなくていい』

 ニューマンはミトの無線に疑問を感じ首をかしげた。

『燃料が尽きるまで走らせろ』

 と言うだけで無線は途絶えた。

 4台は人口島の直線を走行し誰が先に1番に立てるか競い合っている。

 エボ8に乗るミトは今までにない速度にアクセルを緩めてしまう。200寸前まできていたスピードメーターの針は衰えると共に、エボ8は力が抜けたかのように緩やかになった。

 制限速度の100km/hを維持しながら残り3台のテールランプを眺めながら見守った。


「私は脱落するよ・・。こんな速度で事故なんてたまったもんじゃない」

 彼女は一息ついてタバコを口にする。今日だけ、人間の恐怖的心理が働いたのだ。

  

 鈴はやけにムキな顔になって3台の自動車を追っていく。

 エボXはマフラーから赤い炎を吹き出しながらエンジンパワーを上げて、GTR-34と並ぶぐらいに距離を縮ませていた。 

 何度も炸裂するミスファイアリングシステムの音は秋水自身をレースの渦に巻き込んでいく。

 追い越し車線のガードレールすれすれに鈴のインプレッサがわずかな隙間から抜きとおし、そのまま並んだ両車の前に車線を変えた。

 バックの光に背中を照らされると鈴は一安心する。意味自分が残されて嫌だと言う気持ちだろう。

 が、それもわずかな時だけで、2台はインプレッサの両脇から抜いていった。

「あっ!」

 4速から5速にシフトチェンジした鈴はアクセルいっぱい踏み込んだ。

 エンジンの回転計の針が左右に反復し、速度計針は210km/hを超えてインプレッサはGT-R34の後方へ張り付いていく。まるで、戦闘機のドッグファイトように3台一列が前に出さんとブロックする。


 GTR-34の前に立ちはだかったエボX。その後部にインプレッサと前方後方敵だらけ、男は汚い技に舌打ちをしながらエボXから出る隙を見計らった。

 この先トンネル。

 スポーツカーの爆音に反響する湾岸トンネル内には一般車両がちんたら走っていて、川崎は追い越し車線に進入しこれを追い越すと、隙が生まれたのでGTR-34は壁際ギリギリで猛スピードでエボを抜いた。

 浮島JCTを通過し羽田ターミナルまで突っ走る。 

 速度300km/hは誰もが予想していない速度だ。

 先頭を争う二人は次第にいつ事故を起こすか分からない。銃撃を潜りぬいた兵士でも極度の速さに心理的恐怖が胸のそこからわき上げた。 

 

 緩やかなカーブにタイヤを滑らせ、アスファルトに線を残して再びトンネルへと進入する。

 エボの燃料計は半分をきっていた。箱根から黒田PAまでわずかなガソリンしか入れておらず、この勝負が続けば先に脱落する恐れもあり、川崎秋水は焦っていた。

 しかしその勝負の行方はもう決定的であった。なぜならGTR-34の燃料は目標地点に行くほどのガソリンがないのである。

 鈴は何を思ったのかGTR-34からインプレッサを遠ざけて相手を見守る。

「クソ、このエボめ・・!舐めるんじゃねえぞ・・・!」

 彼の目には隙が見えていた。だがもう少しのところでGTRはガス欠でエンジンが停止し、あれだけ強く、硬いアクセルは軽く踏みやすくなっていた。

 

 バックミラーから遠ざかるGTR-34に川崎は即座にアクセルを緩めて上空のUH-60の狙撃部隊が到着するのを確認するとフロントライトを点滅させて合図を送る。

 インプレッサも到着し鈴はQBZ-92拳銃を片手にGTR-34に近づき、川崎も9mm拳銃を持ちながら車外へ。

 そしてニューマンが構えるM24の引き金に人差し指が添えられた。

 

 男はあっさり両手を上げて道路上に立った途端。ニューマンがM24の引き金を倒してしまい、ライフル弾は一直線に男の胸を貫いてアスファルトに弾痕を残した。

 ミトの射撃命令でニューマンは迷い無く発射したのだ。

 

 鈴と川崎は相手が倒れたのを確認し、助手席で眠らされていた大臣を引っ張るとUH-60は着陸をし救出部隊がこれを回収。

 後からやってきたエボ8からミトがでてGTR-34のそばで倒れる男に近づいた。

「何か言いたいこととかある?」

 ミトはタバコを吸いながら言うと「GTRと共に死にたい」といってきた。

「ま、捕らえてやっても口堅くしてどうせ言わないだろうし・・・・。もとからあなたを殺すつもりでいたけど、それでいいなら私はやるよ」

「俺の役目はもう終わった。こいつと湾岸線を突っ走っただけで満足なんだ」と息を切らした声でミトに言いかけた。

 

 川崎と鈴は銃を腰に下げたホルスターに収める。

 ミトはエボ8のトランクを開けると驚いた顔をした後ニヤっと笑うと、金属製のガソリン入れの容器がでてきた。それを片手に再び息だけしている男の傍に寄ってガソリンをぶちまけた。

 周辺がガソリン臭で漂い、川崎は非人道的な行為に「やめろ」と真剣な眼差しでミトの腕を掴んだ。

「燃やし殺すのか?」

「本人はGTRと共に死にたいって言ってる。火葬ぐらいさせたっていいと思うよ」

「それに、非人道もクソもないと思うんだよね」

 とお構い無しにガソリンを一面にかけまわしてた。

 そして、口にしたタバコを手で取り口から白煙を吐いて「さようなら」の一言で火のついたタバコをガソリンの海に投げ込んだ。

 

 GTRは炎に包まれる。

 男の表情は幸せそうながらも鈴と川崎はこれほどまでにやってもよいのだろうかと、複雑な気持ちでいて、ミトは燃える炎をじっと眺めて車両が焼きつくのを目にした。

その日の出来事は事故という件で片付けられ、赤軍側に送るはずの大臣は失敗に終って、到達と同時に射殺する予定でいた。

どのみち男の運命は死に直面する絶望的な状況だったのかもしれない。

 

 新聞のでは高速道路の火災事故として端っこに掲載されていただけで、ミトは銃撃を受けたハコネニューホテルの東館のテラスで静かに積もる雪景色を眺めていた。

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