第一話:獣の村Ⅰ
やっと書いた前編。書き方が迷走中。ファンタジーってなんなんだ?
ユースティティア一行は東の国へ向かっていた。東の国は、古くからの同盟国であり、もう一人、仲間になりそうな人の心当たりがあるとキャストライトが言ったからだ。
「うー……足痛いしつかれたー!!」
ユースティティアは道で拾った木の棒を杖がわりにしながら言った。これも彼女がもともと城育ちの箱入り娘だからだろう、今までの魔物との戦闘も彼女だけ参加できずにいた。
「鍛練が足りないからよ。これからアタシがビシバシ鍛えてあげようか?」
インカローズはニヤニヤしながらユースティティアを見る。はっきり言えば、インカローズは人に教えるのが物凄く下手だった。騎士団団長だった彼女は人の先頭に立って戦闘は出来るが教えるのは苦手な脳筋ババアだった。
「インカローズ、それくらいにしておけよ。俺ですらアンタに教わるの嫌いなんだからな?」
目を丸くしてペリドットを見つめる二人に対しペリドットは真顔で「マジだから」と返す。そんなほのぼのとした光景に、キャストライトは小さく声を漏らしながら笑いだした。
「なに笑ってるわけ?」
「いえ、こんなにも早くあなた方が打ち解けるとは思っていなくて……ふふっ」
「キモい」
ペリドットは横目で彼を見つめて、すぐに視線を前に戻した。
敵も見当たらず数時間歩くと目の前に古びた村が見えた。
「ラッキー!今日はあそこで休憩しましょうよ!」
やっと見つけたオアシスにユースティティアは目を輝かせた。これ以上進もうとすれば彼女の機嫌が悪くなるのは百も承知なため、誰も反対意見は言わずに彼女の言う通りにするしかない。「まあ、最初だけだよね」と全員一致の意見で目を瞑っているのだ。
村は想像していたよりずっと寂れていた。視線は感じるが、外に人は誰もいない。よく見ると、家の窓から村人がじっと見つめていた。
「何よこれ……!?」
この前の村はあんなに歓迎してくれたのにとユースティティアは思ったが幸い口にはでなかった。
「もしや、派遣された騎士様ではありませぬか!?」
そう言いながら四人に駆け寄ってきたのは初老の男だった。
「いや……」
「いやー、よかったよかった。よくぞいらっしゃいました!!私は村長のホリイと申します。」
「すまないが私達は――」
ホリイの会話を遮ろうとしたキャストライトの口を手で塞ぎユースティティアは一歩前に出た。
「もちろん、わたしたちがこの国の騎士団です。ね、団長」
ユースティティアはインカローズに向かってニコリと笑った。ホリイはインカローズの姿を見ると思い出したように手を叩く。
「もしや、伝説の女騎士『レッドパンサー』様でしょうか?わざわざ団長様が出向いてくれるなんてありがたやーありがたやー」
「テンションたけーな、このじいさん」
「ペリドット煩いよ。で、村長さん。この村でいったい何が?」
「それは……」
最初の犠牲者はこの村の青年だった。青年が夜中に外に出たとたん獣のようなモノに殺されたらしい。それから3ヶ月で男女合計で十数名が同じ被害に遭っており、そのうち五人はよそ者だったとホリイは言った。
「狼男と言うべきものですね」
「狼男?あの満月の夜だけ動くっていうやつよね?でも普通の日にも死んでるのよ?」
「最近は魔物の増殖で月の力が強まっていますからね、満月の夜だけでなくとも動けるんですよ」
キャストライトが猿でもわかる説明ですとばかりに自慢げに知識を披露する。
「つまり村の誰かが狼人間でそいつを殺せばいいんでしょ?」
ペリドットの率直な意見に村長を除く3人が、ペリドットを見た。
「俺、変なこと言ったか?」
「こんな危険なことやるの?」
ユースティティアが真剣な顔で言った。
「でも、やれって『ユースティティア』が言っているんだもん。こんなことするやつは悪だって彼女が認めたってことだ」
ペリドットは入り口に置いてある自分の大剣『ユースティティア』を指差した。インカローズがペリドットを見て「うーん」と少し唸ったあと、やろうと後押ししてくれた。
「インカローズまでぇ……ね?キャストライトは?反対?賛成?」
ユースティティアは決断をしていないキャストライトに笑顔で訊くこれで自分になびかない男はいないと彼女は思っている。少しでも自分の味方を増やそうとしているのだ。
「確かにこれは契約にはありませんし……」
「じゃあ……!」
やらないに決定ね、とユースティティアが言おうとした直前、キャストライトの手の甲に暖かい雫が垂れてきた。「こりゃ、プロの意地ね」とインカローズが呟く。雫の正体はペリドットの涙だった。目薬ではない、紛れもなく本物の涙。
「可哀想だよ……村の人達」
驚いた二人はやりましょうと思わず空返事をしてしまった。
「へっへーん!二人とも俺に騙されてやーんの!!」
さっきまでの可愛らしさ全開だった天使のような泣き顔から一変し、ペリドットが今、浮かべているのはウザさ全開の悪魔のような笑みだった。
「それで、アテはあるわけ?」
呆れた顔でユースティティアはペリドットに訊いた。
「あるわけねーじゃん」
ペリドットは真顔で返す。その場の全員の空気が固まった。
次回 第二話:獣の村Ⅱ