第八章 /開花
―お売りしたキャンドルですが、開花しましたか?―
青年に聞かれ、ふと何日か前のことを思い出した。
確かにあのキャンドルは蕾から花開いた。
そのことを伝えると、青年は安堵した笑みを浮かべた。
―良かった。ならばあなたに幸せは訪れたんですね―
この問いには笑顔で答えた。
結局、キャンドルは買えなかったが、青年との会話で心が満ちた。
彼はあのキャンドルで自分が幸せになることを心から望み、喜んでくれている。
そのことが分かっただけでも来たかいがあった。
イヤな気分はすっかり消え去り、家に帰った。
だがその夜、キャンドルをつけて夢見た内容は、担任が車にひかれて亡くなる夢だった。
恐ろしい夢、悪夢のはずなのに、顔は笑ってしまった。
次の日の朝。
キャンドルがいよいよ残り少なくなっていることに気付いた。
良い夢を見ているほど、長くキャンドルをつけてしまう。
特にここのところは、自分の思い描く通りの夢が見られるせいか、キャンドルは急速に量を減らしていった。
もはや花の形はなく、あと一回火を付ければ終わりだろう。
最後はどんな夢を見ようかと、楽しく考えながら学校へ行った。
…だが。