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継母の話


誰も私の正体を知らない。





長い間魔女として恐れられてきた。


異様な魔力を辿ってこの国にたどり着くとその魔力の持ち主は白雪姫と呼ばれる少女であることがわかった。雪のように白い肌、血のように赤い唇、黒檀の窓枠のように黒い髪が艶やかになびいている。悪いものではおそらくないだろうけども、なにかの化身のようであった。



まだ年のいかない少女のもつ色気ではなかった。

そしてその子を見つめる男どものいやらしい視線。その子どもは気がついていないが、なんとひどい。みていられない。私は一番ひどい視線を向けていた男に近づき、精神の操作をさせようと思った。

まさか、その男がその子どもの父親でこの国の王だとは誰が思うだろうか。



国民は餓えに苦しんでおり、私がここにくるまでの間に何十人も何百人も病人を見た。

それだというのに、何もしらないかのような姫君、のうのうとしている王。腹がたってきた。

私以上の魔法使いにきっとなるであろう私の宝である娘は姫君と同じ年くらいであった。私は娘に母とは呼ばせてはいなかった。

「師匠様」

「何かしら」

「私ははやくここから立ち去りたいわ」

「珍しいわね」

「あの子は、だめよ。師匠様。師匠様なら大丈夫だと思うけれども。気をつけてください」

たんたんと言い放つ娘に私はそうね、とうなづいた。王との結婚の前日のことであった。



「きっと立派になっとくから。師匠様も心配るものがなくなったら私に会いにきて。そして立派になっていたらかあさまと呼ばせて」


そう書いていた手紙をみて、娘もまだ幼かったのだと再認識した。娘を手放して、私は何をしているというのだ。娘を手放してまで……。



白雪姫はどんどん美しく成長していった。そしてどんどん変態も増えていった。私はただ、白雪姫をみていた。娘の言葉を胸にしまい、そして娘の忠告を胸にしまって。

娘とあまりに違いすぎる姫君にどう接していいかわからなかったのは事実だ。娘に接するよりも優しくしていたつもりだったのに、女王は白雪姫が嫌いだと言われるようになってしまった。子育てはわからない。魔女の育て方をされた私には魔女の育て方しかわからない。

結婚した王はいきなり亡くなりました。

健康体だったはずなのに、なにかがおかしい。一体なぜなのか。心がざわついてならない。



娘がある魔道具を送ってくれた。1枚の鏡。しかしその鏡は、話しかけたら答えるようなものであった。

私や娘が魔法使いだと知られたらいけない。魔女狩りを恐れて魔法使いはみな隠れて過ごしているからだ。だから私は知り合いの行商人からもらったと嘘をついた。



娘もわかっているので、魔力が高いを美しい、攻撃魔法が強いことを恐ろしい、精神魔法が強いことを可憐、防御魔法が強いことを優しいと表現した、恐ろしいになっているのは語彙が思い浮かばなかったからだと手紙に書いていた。

そして製作者である娘はそれから外される、と。そして私はその鏡を使ってみた。



「鏡よ鏡よ鏡さん」


わたしはそういいながら娘の魔道具起動のキーはいつも変だと苦笑を漏らした。



「この世で1番美しいのはだれかしら?」

「白雪姫です」

「この世で1番可憐なのは誰かしら?」

「白雪姫です」

「この世で1番優しいのは誰かしら?」

「白雪姫です」


そして私は最後の問いをします。


「この世で1番恐ろしいのはだれかしら」

「白雪姫です」



そしてわたしは呆然とした。

なんと言えばいいのか。

才能に嫉妬はしていた。彼女の特技は魅了系の魔法だけだとおもっていたのだ。


「ちなみに、わたくしはどのくらいなのかしら?」

「女王様はすべて2番目です」



恐ろしいことに、彼女は力のコントロールができないのだ。


「困ったことになったわね」



コントロールできない魔女の力をコントロールさせるてっとりばやいものが1度死ぬというものがある。と、いっても仮死状態になるだけなのである。私も娘もそれをした。私は狩人に白雪姫を殺すように依頼をだした。



白雪姫はもう10になっていた。

狩人は私に殺した、と言ってきた。しかし私にはわかっていた。

彼は魅了にかかったのだと。魅了にかからないように最大限の考慮はしたのに……口惜しい。



そしてわたしは来るべき時のためにリンゴをつくった。毒リンゴなんかではない。

たしかに私たち魔女にとっては毒のようなリンゴだが、そのリンゴは魔封じの液体に漬けて熟成させたリンゴなのだ。



白雪姫に食べさせることに成功した。そして彼女は死んだ、はずだった。


彼女はもしかしたら魔そのものだっのかもしれない、と思っていたある日、白雪姫は王子とやってきて、結婚式に招待をしてきました。


その時の白雪姫の顔を忘れられない。あぁ、彼女は……わかっていたのだ。私だと。

泣きそうな表情をするまだ幼い少女。



そしてその幼い少女を娶るという隣の大国の王子は20代である。

話を聞けば仮死状態になっている白雪姫を買ったらしいではないか。

とんだ死体愛好趣味です。



白雪姫もわかってリンゴは彼女にとって悪いものでありながら食べたのだと私は悟った。

彼女はあの力をなくしたかったのだと。封じることなく、王子が彼女を引き取ったのだ。


結婚に反対をした私は真っ赤になった鉄の上靴をはかされた。そして踊り続けるようにいわれる。その靴は魔道具らしく、私は足が勝手に動いた。皮膚がただれていくのがわかった。



きっと娘のもとに行けばこの魔道具をとってくれる。娘は天才だから。

しかしもう迷惑をかけられない。




あぁ、愛おしい娘よ、我が子よ。

どうかどうか恨まないでおくれ。


ずっとずっと……愛しているよ。

遅くなりましてごめんなさい。

次はだれの話を書こうか悩み中。

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