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異世界でも鍵屋さん  作者: 黒六
第2章 盗賊ギルドに就職しました
9/150

紹介されました その1

いつの間にこんなにブックマークが!

こんなマニアックな内容なのに!

 クランコから戻った俺達はギルドで休憩していた。というのも、フランの乗り物酔いが酷く、車を降りてもなかなか体調が戻らなかったからだ。アイラもジーナも降りた途端に元気になったっていうのに…。ディノ爺さんは全然平気だし、ロニーはずっとキャリアに座ってたってのにピンピンしてる。どうも話を聞くとキャリアで寝てたらしい。お前、何者だよ。


「えっと、フランがあんな状態だから…私が皆を紹介するね」


 アイラが申し訳なさそうに言ってくる。いや、別にお前が悪い訳じゃないんだから…。ちなみにそのフランは自分の部屋で寝ているそうだ。今、俺達がいるのは建物に入ってすぐ、ちょっと広い部屋だ。カウンターらしいのがあって、その中で事務員っぽい人が仕事してる。

反対側にはソファとテーブルに長椅子もある。ちょっとした事務所だな。


「ロック、この人はギルド受付のリルさん。お客さんからの依頼を捌いたり、私達に仕事を振り分けたりしてる。この人がいないとうちはやっていけないわ」

「リル=カルヒネンよ、宜しくね、ロック。大体はここにいるから、判らないことがあったら遠慮なく聞いてね」

「ああ、宜しく頼む」


 リルは長い金髪を一本の三つ編みにしてる。人懐こい笑顔が魅力的だ。モデルみたいな女性よりも、こういう人間味あふれる女性が受付してたほうが客の受けはいいんじゃないかと思う。


 続いてカウンターの中に進む。奥の机で書類と格闘してる眼鏡の男がいる。


「この人は経理担当のデリック、メルディアの財布担当ね。装備品を壊したりするとお説教が待ってるわ。そっちはロニーが常連みたいだけどね」

「デリック=マッキンレイだ。話は聞いてるよ、おかげで違約金は回避できたし、得意先も失わずに済んだ。ありがとう、何かあったら相談してくれ」


 ちょっと目つきが鋭い男だが、話してみると物腰は柔らかい。年齢は40くらいだろう。グレーの髪を短髪に切り揃えてる、事務方一筋って感じかな?


「デリックは騎士団の元副団長よ、剣の腕じゃロニーに並ぶわ」

「やめてくれよ、昔の話だ」


 おおう、実は凄い人でしたか…それに何気に否定しないあたりは、腕に偽りなしなんだろうな。するとジーナがいきなりアイラの隣に来た。


「ジーナは普段は受付の手伝いをしてるわ。今日は特別に現場に出たけど、基本はここで内勤。一応、ゲンの弟子だけど、基本を教わってる途中で…」

「ジーナです。私にも色々教えてください!」


 ぺこりと頭を下げてくる。年は13~4か? 栗色のショートカットだが、そこには猫耳があった。よく見ると尻尾がある。ちょっと待て、アイラの尻尾はどうした?


「この子はまだ尻尾を隠せないの。尻尾が出てると仕事の邪魔になるから、皆尻尾を隠す訓練をするんだけど、この子はその訓練が苦手なの」


 そうか、アイラにも尻尾があるのか。きっと柔らかい狐の尻尾なんだろうな。いつか見てみたい。っていうか、ジーナが涙目だぞ、あまりそのへんを追求するな。


「これで受付の紹介は終わったわね、それじゃ中に入るわ、付いてきて」


 俺はアイラの後を付いて行った。尻尾のことを考えてたら無意識にアイラの尻を凝視してたらしく、アイラに後ろ手で尻を隠された。お前は階段でミニスカート隠す女子高生か!


 

 受付の奥の扉から中に入ると、階段があってその奥に2つの扉があった。一つは外に出る扉かな?


「こっちは備品庫ね、備品の持ち出しは基本的にデリックの許可が要るから。あとは…一応フランにも許可出せるから、まあそっちは非常時よね。デリックは自宅から通ってきてるから、夜とかに緊急の仕事があるときはフランが許可を出してるわ」


 ふーん、まあそれも当然だな。備品なんて勝手に持ち出されたら、経費計上が面倒臭い。


「こっちは修練場よ、魔法の訓練も出来るわ。ここまでの施設を持ってる盗賊ギルドはうちだけだと思う、冒険者ギルドや戦士ギルドならこのくらい持ってるかもしれないけどね」


 それは凄いな。どういう内容の修練をしているのかは分からないが、自分達の技術の向上の為の施設があるってことは、このギルドの創始者は先を見据えた人だったんだろうな。


「今の時間は誰も修練してないから、このまま2階に行くわ。…お尻ばっかり見ないでね?」

「それは冤罪だ! 俺は尻尾が気になっただけだ! 」

「それはそれでどうかと思うけど…まあゲンも最初はこんな感じだったから…」

「…何だと…」


 まさか考えてることが師匠と同じとは…もう尻尾のことを気にするのはやめよう。


「すまん、気を悪くしたなら謝る」

「え? ええ、気をつけてくれればいいわ。それじゃ2階だけど、メンバーの待機部屋や寮がほとんどよ。仮眠部屋もあるから、ロックもこっちに泊まるときは使うといいわ」


 それはありがたい、いや、本当に。もしもの時はどこかに部屋借りようかなんて考えてたから、その心配が無くなるだけでも随分楽になる。


「仮眠とってる人もいるから2階はここまでね。最後に3階よ」


 俺達は3階に上がる。部屋数が少ないな、まあ普通はお偉いさんのフロアだろうな。


「ここは代表と顧問の部屋があるわ。ここがディノ様の部屋で、隣が代表のフランの部屋、その奥は…今は空室よ。ディノ様がお話があるそうだから、このまま行くわね。…ディノ様、アイラです、ロックも一緒です」


 ノックをして部屋に入ると、そこは本の海だった。書庫は勿論、机はおろか床にまで本が積まれて、足の踏み場も無いってこういうことだろう。爺さんは俺を見るなり、表情を崩して迎えてくれた。


「おお、ロック、さっきは助かったわい。あの馬鹿娘にはきつく言い聞かせるから、わしに免じて許してやってほしい」

「それは構わない、俺も何となくわかる気がするからな。彼女はどうしてもメルディアここを護りたかったんだろう、多少の無茶は覚悟の上で。爺さんもそれが分かるから態々別の世界まで行ってスカウトしてたんだろう?」

「そこまで理解してもらえるとは、本当にありがたい。今後も力を貸して欲しい」


 改めてディノ爺さんが深々と頭を下げてくる。アイラもそれに倣って頭を下げてくる。俺としては自分の可能性を試せるチャンスを貰ったようなものだから、礼を言いたいのはこっちなんだが……そうだ、一番大事なことを聞くのを忘れてた! これをしなけりゃ、こっちに来た目的の一つが果たせない。


「爺さん、あんたはここでは偉いんだから、そう簡単に頭を下げるなんてやめてくれ。むず痒くてたまらなくなる。…それはそうと、早速で悪いんだが案内して欲しいところがあるんだ、時間を貰っていいだろうか?」

「それは構わんが…どこに案内させるつもりじゃ?」


 2人の顔に若干の警戒が見て取れる。大丈夫、あんたらに関わることじゃない、これは俺のけじめみたいなものなんだから…


「師匠の…『ゲン=ミナヅキ』の眠る墓へ連れていって欲しい」


 

 

読んでいただいた方、誠にありがとうございます。

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新作始めました。現代日本を舞台にしたローファンタジーです。片田舎で細々と農業を営む三十路男の前に現れたのは異界からの女冒険者、でもその姿は……。 よろしければ以下のリンクからどうぞ。 巨人の館へようこそ 小さな小さな来訪者
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