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異世界でも鍵屋さん  作者: 黒六
第5章 本格的にダンジョンです
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装備を買います

ロックはチート持ちではないので、武器と防具は大事です。

 俺は弟子2人の視線に射殺されそうになりながらも、ミューリィと一緒に街を歩いていた。っていうか、この馬鹿エルフがどうやっても離れない。こいつ、寄生生物なんじゃないか?


 俺達が向かった場所は、キールの店だ。


「キール、居るんでしょ? 装備品を新調しにきたわ」


 ミューリィの声に、奥からキールが出てきた。こいつ、寝起きじゃねーか、いい身分だな、おい。


「ロックの装備とセラの装備、あとはアイラのショートソードをお願い。請求はギルド宛てにね」

「おう、わかった。ロック、何か要望はあるか?」

「そうだな、鍵開けするのに腕が自由に使える形のものがいい。あまり重くないやつを頼む」

「頭はどうする?」

「手持ちのがあるから大丈夫だ。あとは膝当てがあるといいな、ブーツも自前のがあるから大丈夫」


 キールは俺の体を目測で採寸すると、奥からいくつか持ってきた。


「この革鎧はどうだ? 軽いし、そこそこ丈夫で腕の動きの邪魔もしない」


 俺は一つ一つ試着してみる。確かに軽いし、腕の邪魔をしない。その中で、3つ目に試着した鎧がとても気になった。色も黒っぽいこげ茶色で、華美な装飾もないが、なんだろう…心に訴えかけてくるものがある。今ここで手に入れなければ、2度と会えないような気がする。


「キール、これはどういった品なんだ?」

「おい…それは…どうしてそれを選んだ?」


 キールが険しい顔をして聞いてくる。それに気付いたミューリィも、その鎧を見て驚いた表情を見せている。アイラとセラは何が起こったのか分からないといった様子だ。


「どうしてって言われても…何となく気になったとしか言えないが…それがどうかしたか?」

「ロック、その鎧はね、何かが封じ込められているの。何かは解らないけど」

「ミューリィでも解らないのか? 精霊魔法で判別できないのか?」

「悪いものではなさそうってのは解るんだけど、何がいるかってところまではね…実際に装備してみないとわからないと思うわ」

「なあ、ロック、嫌な感じはあるか? 無性に腹が立つとか、すごく悲しいとか」

「そういうのは無い。なんだか子供に裾を引っ張られてるような感じだな。それも、親からはぐれて迷子になった子供みたいな感じだ」


 キールとミューリィが何やら小声で話している。何なんだろう? そんないわくつきの品には思えないけど…


「ロック、悪いがそれを貰ってやってくれないか? 金はいらん。それはうちの爺さんの頃からずっと売れ残ってるものなんだが、誰も気味悪がって貰ってくれないんだよ。どうやらそいつはお前が気に入ったみたいだから…頼む」


 そこまで言われちゃ断れないな…、しかし、何で気味悪いなんて思ってたんだ、そいつらは。


「わかった、引き受ける。ただし、後で返せなんていうなよ」

「そんなこと言わねえよ! なんだかお前に着けてもらってそいつも嬉しそうだよ」

「それじゃ、次は武器ね、ロックは武器なんて持ってないから、ショートソードがいいと思うわ。試しに振ってみたら?」


 俺はキールが用意してくれた小剣を振ってみる。…が、剣なんて使ったことないからよく分からない。そもそも、俺は戦闘職じゃないんだが…


「どうもしっくり来ないな…トンファーみたいなのは無いか?」

「トンファー? 何だそれ?」


 流石にトンファーは無いのか…使ったことがある武器といったらそれくらいしかないんだけど…


「それなら、作ってもらえば? どの道、最初から戦闘に参加してもらう訳じゃないし」

「そうだな、それじゃ頼んでみるか」

「おう、どんな武器なんだ?」

「こういう形の武器なんだが…」


 俺とキールはトンファーの詳細を詰め始めた。トンファーは昔ヤンチャしてた頃によく使ってた。防犯グッズの通販ショップでも買えるから、喧嘩でよく使ってた。


「なるほど、防具の役割も果たして、打撃棍としても使えるってわけか、面白え、作ってやるよ!」


 これで武器の目途もついたな。ふと見ると、セラは杖と、ローブってやつか?魔法使いがよく着てるような服を買ったようだ。アイラは新品の小剣にほお擦りしてる。そんなことしてたら肌が切れるぞ。


「これで皆必要なものは買ったわね? それじゃキール、請求はギルドにお願い」

「ああ、いつも通りにしておくよ。ロック、トンファーは任せておいてくれ」

「悪いな、感謝する」


 俺達はキールの店を後にする。すると、ミューリィが話しかけてきた。


「ロック、その革鎧はかなりの掘り出しものだと思うわ。何か封じられているみたいだけど、元々の拵えもいいし、何か悪いものが入っているならルークに浄化してもらえばいいのよ。キールの話だとタダでいいみたいだし、ラッキーだったわ」


そういうつもりじゃ無かったんだが…まあいいか、いいものが手に入ったことには違いないんだし。でも武器が無いのはちょっと…。


「ロックさん、武器はいいんですか?」

「そう言えば、あのクルマっていう道具の中に、斧みたいな剣があったけど…」


 アイラが四駆に積んであった物を話題に出した。そうだ、アレがあった。アレなら急場しのぎの武器になるかもしれない。


「アイラ、よく覚えてたな、偉いぞ。アレは武器のかわりになるかもしれない」


 思わずアイラの頭をわしわしと撫で回す。それを見ていたセラが頭を擦り付けてきたので、ついでに撫で回してやる。2人とも顔を赤らめながら微笑んでる。


 ギルドに戻るなり、俺は四駆から、アイラが気付いたものを出した。それは、片刃で肉厚の、斧のような刀…つまり「なた」だ。何で四駆に鉈があるのかというと、防犯カメラとかを取り付ける時、植栽の枝が邪魔になることがある。そんな時は依頼者に了承を貰って枝を落とすこともある。その時に使うのがこの鉈だ。普通の鉈より肉厚な特注品で、刃毀れも滅多にしない逸品だ。結構高価だったが、後悔はしていない。


「こんなのは武器にならないか?」


 俺が鉈を鞘から出して見せると、皆が息を呑んだ。そりゃそうだろう、この鉈は日本刀の刀匠が打った名品だからな。意外なことに、物静かなデリックが食いついてきた。


「ロック、その剣を見せてくれないか」

「ああ、いいよ」


 鉈を手渡すと、その刃紋の美しさに魅入っている。俺だって数時間眺めていても飽きないんだ、剣の使い手のデリックが魅了されない訳がない。その目はまるで子供のようだ。


「これだけ肉厚でありながら、刃先の鋭利さはしっかりと保たれている…それに刃に浮き出ているこの紋様の美しさ…これは既に芸術品の域に達している…」


 そこまで言ってもらえるとこっちも嬉しいな、俺の見立ても間違ってないってことだ。すると、そこにフランが参加してきた。


「本当にいい剣ね、これなら当面の武器代わりになるわ。そうだ、ディノに頼んで付与魔法をかけて貰うといいわ。この剣なら耐えられるはずだから」

「付与魔法? 普通の剣じゃだめなのか?」


 俺の疑問に、セラが答えてくれた。


「ロックさん、この剣は魔法に対する抵抗値がありません。これでは魔力を持ったモンスターには通用しないのはおわかりだと思います。そこで、この剣に魔法でコーティングするんです。そうすれば、斬れ味はそのままでモンスターにも対抗できます」

「それにね、普通の剣ではあまり強い付与魔法を使えないの、剣が耐えられなくて、却って脆くなるのよ。でも、この剣は違うわ。この剣、恐らくものすごい手間をかけて作られているんでしょうね、剣自体が持ってる力が凄いもの。これだけの力を持つ剣なら、相当強い付与魔法にも耐えられるはずよ」


 ミューリィが補足してくれた。確かにこの鉈は丁寧に鍛造された逸品だからな、一打ち一打ち刀匠の想いが籠められた鉈だ。力があっても不思議じゃない。特に、この鉈は俺が頼み込んで作ってもらった。日本刀の打ち方で作ってもらった鉈だから、彼らも気合が入っていた。今の日本では、芸術品としての刀は打てるが、実用できるものは法律で作ってはいけないことになってる。だが、鉈という形ならば逃げ道にできる。彼らの技術を思い切りつぎ込めるんだ。彼らの想いが力となって宿っているんだろう。


「でも、俺が戦うようなことにならないのが一番いいんだけどな」

「そうね、ロックの戦いは『鍵』が相手だものね。その戦いには、私達は踏み込めないから、頼りにしてるわよ」


 そう言ってミューリィが俺の背中をばんばん叩いてくる。お前、意外と力あるな…。


「フラン、そのメンバーでウィクルに潜るから、スケジュール調整をお願いね」

「はあ…わかったわよ。そのかわり、一泊だけよ? あまり長期間潜るとなると、他の仕事との兼ね合いがあるから。リルが激怒しちゃうわよ?」

「う…それは勘弁して欲しい…リルが怒ると怖いから…」


 どうやらメルディアうちの最恐はリルらしい。…俺も怒らせないようにしよう。

トンファー…外国の警察官が警棒の代わりにつかったりしてますね。案外、日本でも手に入ります。

ちなみに、刀匠が実用目的の刀を打てないのは本当です。一応、武道の道具としての製作も許可されてます。


次回更新は21日の予定です。

読んでいただいてありがとうございます。

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新作始めました。現代日本を舞台にしたローファンタジーです。片田舎で細々と農業を営む三十路男の前に現れたのは異界からの女冒険者、でもその姿は……。 よろしければ以下のリンクからどうぞ。 巨人の館へようこそ 小さな小さな来訪者
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