いつも通りの日
完全な自己満足作品です。
愉しんでもらえたら嬉しいです。
都心の喧騒も少々収まる下町の片隅に、俺の住居兼倉庫兼作業場兼ガレージがある。今日の仕事も終わり、相棒と別れて帰宅したところだ。ガレージのシャッターを下ろして車のキーを抜く。道具満載の四駆が俺の商売道具だ。 腹が減ったが深夜なので、コンビニで買ったカップラーメンでも作って食うか。
ヤカンでお湯を沸かす間に、明日の仕事の準備にとりかかる。電動工具のバッテリーの確認をして、充電器にバッテリーを差し込んでから、予備バッテリーをいくつか車に放り込む。発電機のメンテに車の確認、小物の補充等、準備を怠らない。こういう準備を忘れる奴は腕前も大したことない。
相棒からの仕事の依頼書に目を通す。明日の仕事の詳細だ。組んだ当初は大した情報を寄越さなかったんで、いつも現場で怒鳴りあってた。でも最近は漸く解ってきたみたいで、事前情報もかなり詳しく書かれている。
「えーと、明日は…開錠ばっかりだな。それと…何だよ、潜るのか、となると泊り仕事だな。あいつ追加料金とってんだろうな」
ぼやきながらラーメンを啜る。明日はメシの準備もしなきゃならないんだろうな。後でコンビニにでも行っておくか。依頼主へのお土産も忘れないようにしないとな。
てなことを考えてたら、携帯が鳴った。非通知だ。拒否設定してても掛かってくるのは当然、俺の相棒だ。
『はいはーい、ねえ、明日の仕事は泊りなんだけど、…いつものやつ買ってきてくれない? もちろんお金は払うから!』
「そうやっていつも踏み倒すだろ? いい加減に自分で用意しろよ」
『だって、あんないい匂いさせてる横で干し肉なんて食べられないよ。そのへん解ってる?』
「依頼主の分は用意するけどな」
『私の分は?』
「あるわけないだろう?」
『酷い!』
「お前なあ、俺は色々と必要経費が多いんだよ。少しくらいは自分で負担しろよ」
『あんただって結構もらってんじゃん。少しくらいは面倒みてよ』
「俺のは技術料だ。それだけの仕事はしてるつもりだぞ」
『う…まあそれは否定しないよ…おかげでうちのギルドも評判よくて、予約を捌くの大変よ。受付のリルも泣きそうだったから』
「それは悪いことしたな、リルには何か買っていってやろう」
『だから私には?』
「必要ない」
『ううううう…酒場のツケが溜まってるのに…また貧乏生活か…』
「だからあれほど計画的に使えって…」
『はいはい、お説教はいいですよー。明日もいつも通りの時間に換ぶからね。じゃあね』
ひとしきり喋り倒すと一方的に切られる。まあいつものことなんだけどな。…あいつ、またツケまみれかよ。仕方ない、カップラーメンくらいは用意してやるか…
何だかんだでもう3ヶ月、この生活にもだいぶ慣れたみたいだ。こんなことになるとは思ってもみなかったけど、結構充実してるって実感はある。
さて、明日も早いからもう寝るとするか・・・。
読んでいただいた方、誠にありがとうございます。